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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

[出典] "A confinable female-lethal population suppression system in the malaria vector, Anopheles gambiae " Smidler AL, Pai JJ, Ape RA [..] Akbari OS. Sci Adv. 2023-07-05. https://doi.org/10.1126/sciadv.ade8903 [著者所属] UCSD, UC Berkeley, Oxitec Ltd, California Institute of Technology, Innovative Genomics Institute (UC Berkeley)

 最近、ハマダラカの性決定経路においてこれまで知られていなかった遺伝子、femaleless (fle) が発見された。X染色体量の補正や、性決定遺伝子の要であるdoublesex (dsx) のスプライシングに関与していることが報告されており、ノックダウンのタイミングによっては雌性致死的な性質を示すことが示唆された実験もあった。

 著者らは、新たなハマダラカガンビエの個体群抑制アプローチを開発するにあたり、fle を標的とするバイナリーCRISPRベースのベクター制御技術を開発した 。このアプローチの徹底した’娘殺し (daughter-killing)’ 表現型から、ギリシャ神話で父アガメムノーンによって女神アルテミスの生贄に捧げられたIphigenia に敬意を表して、Ifegenia (inherited female elimination by genetically encoded nucleases to interrupt alleles/遺伝的にコードされたヌクレアーゼによる対立遺伝子遮断による遺伝的な雌性排除)と名付けた。

 Ifegeniaは、Gene DriveCas9とガイドRNA(gRNA)をコードする系統を用いた二成分アプローチとして作動し、ハイブリダイゼーション時に雌性致死をもたらすが (Fig. 1引用右図 AとB参照)、これは精密誘導不妊昆虫法(precision-guided sterile insect technique: pgSIT)と同様である [*]

 子孫はモザイク体細胞変異と遺伝性生殖細胞変異を起こし、幼虫の雌は早期に死滅するが、兄弟姉妹の雄は生殖可能である。これらのオスは、メス必須遺伝子fle  の変異やCRISPRシステムを持つ個体群に反復的に放たれ、長期にわたり個体群抑制を引き起こし、不妊虫放飼法として利用することもできる。
著者らはモデル化を介して、このアプローチがスケーラブルで、遺伝子ドライブと異なり自己伝播せずに自己限定的な個体群抑制ツールとして野外にリリースに適している可能性を示した。

 [*]

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