[出典] "Simultaneous multifunctional transcriptome engineering by CRISPR RNA scaffold" Liu Z, Jillette N, Robson P, Cheng AW. Nucleic Acids Res 2023-07-03. https://doi.org/10.1093/nar/gkad547 [著者所属] Jackson Laboratory for Genomic Medicine, Jackson Laboratory Cancer Center, U Connecticut Health Center, Arizona State U

 RNAのプロセッシングと代謝が細胞内で精密に制御されることで、RNAの完全性と機能が保証される。RNを標的とするCRISPR-Cas13システムの登場によって、基礎研究から応用研究に必要なRNAの人為的操作が容易になったが、RNAのプロセッシングの異なるステップを同時に操作することは課題として残っている。Graphical Abstract加えて、dCas13に融合するRNA操作用のエフェクターに由来するオフターゲット作用も課題である。米国の研究チームが今回、異なる標的RNAsに対する多重なRNA操作を可能にするプラットフォームを開発して、Combinatorial RNA Engineering via Scaffold Tagged gRNA (CREST)として発表した [グラフィカルアブストラクト引用右図参照]。
 
 CRESTでは、一定のRNA結合タンパク質 (RNA binding domain: RBD) が認識可能な特定の配列または構造のRNAモチーフであるRNAスキャフォールドを、dCas13 gRNAの3’末端に付加し、RBDを介して、dCas9-sgRNAとRNAの操作を担う触媒活性ドメインとを、連結する。RANスキャフォールドとRBDの組み合わせについては、例えば、MS2とMCP (MS2 codatign protein)、PBS (PUF binding site) とPumilioタンパク質由来PUFドメイン、PP7とPCP (PP7 coating protein)といったペアが知られている。

 研究チームはdCas13-gRNA - RNAスキャフォールド -  RBD - エフェクターによるRNA操作の概念実証を行った:
  • 互いに直交するMCP-, PCP- および PUF-をベースとするCRESTモジュールによるスプライシング過程の操作
  • CRESTをベースにA-to-GおよびC-to-U塩基編集モジュールを作出
  • CRESTの基本構造からエフェクターをスプリットしたRNA編集モジュールにより、全長エフェクターに依存する構成からオフターゲット作用を大きく (99%) 低減
  • 直交するCRESTモジュールを組み合わせることで、選択的スプライシングと塩基編集を同時にといった複雑なトランスクリプトームを操作を可能とする多機能性を実証