crisp_bio

論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

2024-05-23 STAR Protocols 誌刊行論文の書誌情報を追記
[出典] “Protocol to efficiently induce CRISPR-Kill-mediated cell ablation in Arabidopsis thalianaGehrke F, Wolf S, Puchta H. STAR Protocols. 2024-05-19. https://doi.org/10.1016/j.xpro.2024.103072

 CRISPR-Killシステムは、進化的に保存された反復ゲノム領域に複数の二本鎖切断を誘導することで、標的細胞を切除する。ここでは、シロイヌナズナにおける標的細胞死の全組織および細胞への影響を解析するためのCRISPR-Killシステムの応用プロトコルを紹介する。構成的および誘導的CRISPR-Kill株の作製、CRISPR-Cas9を介したゲノム除去の化学的誘導、およびシュートと根の頂端分裂組織における細胞死のモニタリングの手順について述べる。これにより、発生植物生物学における様々な疑問の解明が可能となる。

2023-07-15 New Phytologist 誌刊行論文に準拠した初稿
[出典] "An inducible CRISPR-Kill system for temporally controlled cell type-specific cell ablation in Arabidopsis thaliana " Gehrke F, Ruiz-Duarte P, Schindele A, Wolf S, Puchta H. New Phytol 2023-06-28. https://doi.org/10.1111/nph.19102 [著者所属] Karlsruhe Institute of Technology (KIT), Ruprecht-Karls-U Heidelberg, Eberhard-Karls-U Tübingen.

 KITのHolger Puchtaらが先行研究 [*1] から報告したCRISPR-Killシステムは、SaCas9と細胞型特異的プロモーターを利用して、rDNAのようにゲノム上に保存されている反復配列領域に多重なDSB (二本鎖切断) を誘導することで、標的細胞特異的に細胞死を誘導するシステムであり、シロイヌナズナにおいて苞や側根の特異的除去を実現している。Puchtaらは今回、こうした「空間的制御」に「時間的制御」の機能を付加した。 
  • 蛍光マーカーによる標的細胞の同時検出を可能にした低分子で誘導可能 [*2]な組織特異的CRISPR-Killシステムを開発した。
  • 概念実証実験で、側根の除去と根の幹細胞の除去に成功し、さらに、多重組織で有効なプロモーターを利用することで、異なる複数の器官を目的とする発生段階の特定の時点で標的細胞を細胞死に誘導することに成功した。
  • 時空間制御が可能なCRISPR-Killシステムは、植物の組織工学に有用なツールである。
[*] 引用論文 
  1. CRISPR-Killシステム "Using CRISPR-Kill for organ specific cell elimination by cleavage of tandem repeats" Schindele A [..] Puchta H. Nat Commun 2022-03-21. ;2022-03-28 DNA反復配列の切断を介した器官特異的細胞除去を実現するCRISPR-Kill [論文Fig. 2 a引用左下図参照]CRISPR-Kill     Inducible
  2. 誘導型エフェクターシステム:"A Comprehensive Toolkit for Inducible, Cell Type-Specific Gene Expression in Arabidopsis" Schürholz A-K [..] Greb T, Wolf S. Plant Physiol. 2018-07-19.  [Figure 1引用右上図参照]
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