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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

[出典] "Integration of alligator cathelicidin gene via two CRISPR/Cas9-assisted systems enhances bacterial resistance in blue catfish, Ictalurus furcatus" Wang J, Su B, Al-Armanazi J et al. (bioRixv 2023-01-05) Aquaculture 2023-07-94. https://doi.org/10.1016/j.aquaculture.2023.739860 [著者所属] Auburn U.

 水産養殖業にとって魚の感染症は大きなリスクであり、その予防にはこれまで抗生物質が利用されてきた。しかし、長年にわたる抗生物質の濫用は、水環境を汚染し、薬剤耐性を獲得する病原体が拡大し、ヒトの健康にも悪影響を及ぼすに至った。このため、WHOとFAOは抗生物質を代替するアプローチの研究開発を訴え、また、米国FAOは2022年に水産養殖における抗生物質の利用を厳しく制限する方針を示した。Aubrun大学の研究チームは、そのアプローチとして抗菌ペプチド (antimicrobial peptides: AMPs)を採用した。
 
 AMPは、ワクチンと異なって病原体や宿主の魚介類ごとに作成する必要がなく広域に作用し、また、病原体に耐性をもたらさないとされており、近年、ヒトの抗癌剤、家畜や水産動物の疾患防止に、利用され始めている。このAMPを投与するにあたって、Aubrun大学の研究チームは食餌経由ではなく、宿主の魚のゲノムにAMP遺伝子をノックインする手法を選択し、耐病性が世代を超えて継承されていく系統を作出することを目指した。
  • 遺伝子ノックイン法とし2H2OP法[*]を選択し、CRISPR/Cas9-sgRNAと直鎖状の二本鎖DNAを送達することで、北米のナマズ (ブルー・キャットフィッシュ/Ictalurus furcatus )の生殖に関与する黄体形成ホルモン (uteinizing Hormone: LH)の遺伝子座に、ワニ (Alligator sinensis )の抗菌性ペプチド (生体防御ペプチド)であるカテリシジンをコードする遺伝子 (以下、 As-Cath )を、ノックインした。
  • P1世代のトランスジェニックナマズにおいてAs-Cath トランス遺伝子は、9種類の組織 (主として、肝臓、皮膚および筋肉) 見られた。
  • As-Cath のノックインが実現したトランスジェニック系統のFlavobacterium covae の感染に対する累積生存率は80%と、野生型の30%から大きく改善された。養殖中の生存率も、野生型の87.0%に対して97.1%と、改善された。一方で、トランスジェニック系統と野生型の間で、成長速度と外観には差異が無かった。
  • なお、LH遺伝子座にトランス遺伝子をノックインすることで、作出した系統は不妊になり、遺伝子組み換えナマズが自然の環境に中で増殖するリスクは抑制されることになる。
[*] 2H2OP法 
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