[出典] "Multi-level functional genomics reveals molecular and cellular oncogenicity of patient-based 3′ untranslated region mutations" Schuster SL [..] Hsieh AC. Cell Rep. 2023-07-28. https://doi.org/10.1016/j.celrep.2023.112840 [著者所属] U Washington, Fred Hutchinson Cancer Center;Press Release "RNA stability may play a role in prostate cancer" Richards S. Fred Hutch News Service. 2023-07-28. https://www.fredhutch.org/en/news/center-news/2023/07/hsieh-schuster-3-utr-prostate-cancer.html
Fred Hutchinson Cancer Centerとワシントン大学の研究チームが、
RNAの安定性に関与する3′非翻訳領域 (3′UTR) における変異の癌の発生や進行における役割を決定するために、185人の転移性去勢抵抗性前立腺癌患者の組織サンプルから14,000件を超える3′UTR体細胞変異を同定し、発癌経路と3′UTR制御要素に14,497の一塩基変異が濃縮されていることを発見した [グラフィカルアブストラクト引用右図参照]。
RNAの安定性に関与する3′非翻訳領域 (3′UTR) における変異の癌の発生や進行における役割を決定するために、185人の転移性去勢抵抗性前立腺癌患者の組織サンプルから14,000件を超える3′UTR体細胞変異を同定し、発癌経路と3′UTR制御要素に14,497の一塩基変異が濃縮されていることを発見した [グラフィカルアブストラクト引用右図参照]。 研究チームは、一つには、翻訳効率ひいてはタンパク質レベルに影響する変異のアッセイ、もう一つは、RNAの分解と安定性を対象とする2種類のアッセイする2つの相補的な超並列レポーターアッセイ (massively parallel reporter assay: MPRA)を開発した。
MPRAのアプローチを14,000の3'UTR変異に適用したところ、その多くが翻訳効率を変化させることが明らかになった。癌を促進する遺伝子の機能的変異は通常、タンパク質の産生を最大16倍まで促進した。一方、抗癌遺伝子に変異があると、翻訳効率が3分の一にまで低下し、癌を抑制する可能性のあるタンパク質のレベルが低下することが示唆された。
RNAの安定性については、150人の患者由来の3'UTR変異 (その多くは癌を促進することが知られている遺伝子) がRNAの安定性を変化させていることが明らかになった。その多くは、前立腺癌がアンドロゲン遮断療法を免れて進化する際に生じる神経内分泌型への移行を助ける可能性のある遺伝子に生じていた。
MPRAを利用した実験に続いて、塩基エディターNG-ABE8eを利用して、MPRAでのアッセイの結果タンパク質産生に最も大きな影響を与えた3'UTR変異のうち2つをDNAに導入し、細胞機能におよぼす影響を分析した。その結果、少なくともひとつは、細胞分裂に重要な役割を果たすタンパク質ZWILCHをコードし、腫瘍細胞がシスプラチン抵抗性を獲得するのを助ける可能性がある遺伝子であった。シスプラチンは、DNAに損傷を与え、ZWILCHが最も重要な役割を果たす細胞分裂を阻害する化学療法剤である。もう一つは、癌細胞のストレス耐性に寄与し、低栄養の条件での癌細胞の増殖を助ける変異であった。
癌患者の細胞において、3’UTRが薬剤耐性に関与することが示されたのは、初めてのことであるが、翻訳効率に影響する3’UTRの変異の75%以上が、RNAと相互作用する他の分子の配列を改変、ひいては、RNAの形態を、改変することも明らかになった。
この研究は、疾患に関連する3′UTR変異がmRNAの安定性、翻訳、および癌の進行にどの程度影響を及ぼすかについての広範な視野を示すものであり、これまで未解明であった調節領域における調節機能の原理と潜在的な治療標的を明らかにするものである。
[Hsiehチームからの先行関連論文]
- "Multiplexed functional genomic analysis of 5' untranslated region mutations across the spectrum of prostate cancer" Lim Y [..] Hsieh AC. Nat Commun 2021-07-09.
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