- 薬理学的HbF誘導とCRISPR-Cas9ゲノム編集の併用
[注] HbF (胎児型ヘモグロビン);HbA (成人ヘモグロビン)
[出典] REVIEW "Combined approaches for increasing fetal hemoglobin (HbF) and de novo    production of adult hemoglobin (HbA) in erythroid cells from β-thalassemia patients: treatment with HbF inducers and CRISPR-Cas9 based genome editing" Finotti A, Gambari R. Front Genome Ed. 2023-07-17. https://doi.org/10.3389/fgeed.2023.1204536; [著者所属] U Ferrara; 参考文献リストを含む13頁
 
 CRISPR-Cas9遺伝子編集技術は登場して早くから単一遺伝子疾患への適用が試みられてきた。β-サラセミアに対しては、原因である一次遺伝子変異の補正を介した十分なレベルのHbAデノボ産生のアプローチと共に、HbA HbFCRISPR-Cas9を介したHbFの発現の復活・亢進のアプローチも可能性を示したきた [Figure 1とFigure 2引用右図3章]。
 
 HbFの発現は、HBGプロモーターにおけるγグロビン遺伝子発現の転写抑制因子 (BCL11A、SOX6、KLF-1など)  またはその結合部位をコードする遺伝子をCRISPR-Cas9で破壊し、非欠失型および欠失型遺伝性高胎児色素症 (HPFH) 変異を模倣することで達成できる。
 
 これら2つのアプローチ (βグロビン遺伝子の修正とγグロビン遺伝子の転写抑制因子をコードする遺伝子のゲノム編集)は、少なくとも理論的には組み合わせることができる。UC Irvineの研究チームは、しかしながら、多重CRISPR-Cas9による多重遺伝子編集は遺伝子毒性のリスクを伴うことから、本総説では、薬理学的なHbF誘導プロトコル [Table 3参照] と、CRISPR-Cas9遺伝子編集を用いたHbAのデノボ産生を組み合わせる可能性に焦点を当てている。