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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

[注] 米国のがん撲滅計画で目指すべき研究目標について、計画達成への10項目を発表した [natureダイジェスト Vol. 13 No. 12  (翻訳 船田晶子);Cancer experts unveil wishlists for US government  ‘moonshot’ Ledford H. Nature 2016-09-15]
[出典] 
 米国 NIH (National Institutes of Health) は、10種類の癌種にわたる1,000件を超える腫瘍の個別研究から得られたゲノム、プロテオーム、画像、臨床デスクリーンショット 2023-08-15 14.43.03ータを標準化した包括的なデータセット [Figure 1引用右図参照] を広く一般に公開した。各国の研究者がこの情報資源を利用することで、癌の発生と進行に関する新たな分子学的洞察を得ることができる。このデータセットは、NIHを構成する研究所群の一つであるNational Cancer Institute (NCI) のClinical Proteomic Tumor Analysis Consortium (CPTAC) によって作成された。
 
 この汎癌 (pan-cancer) プロテオゲノムデータセットは、プロテオミクス科学における数十年にわたる技術的進歩の上に構築されたものであるが、CPTACはCell 論文において、このマルチオミックスデータセット構築の取り組みについて概説するとともに、マルチオミックスデータベースである汎癌プロテオゲノムデータセットの統合と解析における課題、特に、塩基配列データと質量分析に由来するプロテオミクスデータの双方を扱う際に独特な課題、について議論している。

 汎癌プロテオゲノムデータセットは、スクリーンショット 2023-08-15 14.43.14PythonまたはRからAPIを介して、および、Webポータルサイトをアクセスすることで、利用可能であるが [Figure 3とFigure4を引用した右図参照]、CPTACはそれを活用した研究成果を、Cell論文と平行して、2編のCell 論文 [*2, 3]で報告した。
 
 汎癌プロテオゲノムデータセットの公開は、データ共有の向上を介して癌研究を加速するというバイデン-ハリス政権のCancer Moonshot 計画 に資するものである。

[汎癌プロテオゲノムデータセット利用論文]

1.  "Pan-cancer proteogenomics connects oncogenic drivers to functional states" 2023-08-15 14.42.44Li Y, Porta-Pardo E, Tokheim C, Bailey MH, Yaron T [..] Cantley LC, Getz G, Ding L・Clinical Proteomic Tumor Analysis Consortium. Cell 2023-08-14. https://doi.org/10.1016/j.cell.2023.07.014;グラフィカルアブストラクト引用右図参照
  • マルチオミス・クラスターにより、10種類の癌種に共通する発癌を促進する経路が存在する。
  • 遺伝的変化は、腫瘍特異的なタンパク質間相互作用の変化と相関する。
  • 癌ドライバーのシス効果と塩基トランス効果を同定することで、癌ドライバーの影響を知ることができる。
  • プロテオミクスとゲノムドライバーの統合により、癌の兆候を知ることができる。
2.  "Pan-cancer analysis of post-translational modifications reveals shared patterns of protein regulation"  2023-08-15 14.42.52Geffen Y, Anand S, Akiyama Y, Yaron TM, Song Y [..] Aguet F, Cantley LC, Ding L, Getz G・Clinical Proteomic Tumor Analysis Consortium. Cell 2023-08-14. https://doi.org/10.1016/j.cell.2023.07.013;グラフィカルアブストラクト引用右図参照
  • NCIのCPTACから10種を含む11の癌種にわたる翻訳後修飾 (PTM) プロファイルを持つ患者1,110人のプロテオゲノミクスデータの最大コレクションを解析した。
  • 教師なしクラスタリングから癌の特徴的なプロセスに関与するタンパク質のアセチル化とリン酸化の変化の汎癌パターンが見えてきた。
  • その結果、リン酸化によってDNA修復が制御されなくなった腫瘍、アセチル化によって免疫応答に関連した代謝制御が変化した腫瘍、アセチル化とリン酸化のクロストークによってキナーゼ特異性が変化した腫瘍、ヒストン制御が変化した腫瘍など、さまざまながん種の腫瘍のサブセットが明らかになった。
 [汎癌プロテオゲノムデータセット公開Webサイト]
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