crisp_bio

科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

[注] 網膜色素変性症 (retinitis pigmentosa: RP)
[出典] "AAV-mediated base-editing therapy ameliorates the disease phenotypes in a mouse model of retinitis pigmentosa" Wu Y, Wan X, Zhao D, Chen X, Wang Y [..] Sun X, Bi C, Zhang X. Nat Commun. 2023-08-15. https://doi.org/10.1038/s41467-023-40655-6 [著者所属] Shanghai Jiao Tong U, National Clinical Research Center for Eye Diseases, Shanghai Key Laboratory of Ocular Fundus Diseases, Tianjin Institute of Industrial Biotechnology, National Technology Innovation Center of Synthetic Biology, Tianjin Normal U.

 RNPマウスモデル"rd10"は、Pde6b 遺伝子のエクソン13にc.1678C>TのSNVを持ち、アミノ酸レベルでアルギニンからシスチンへの変化 (R560C)を起こしている。中国の研究チームは今回、このSNVに基づいて、ほぼPAMレスとされるSpRYをベースとするアデニン塩基エディター (ABE) [*]であるSpRY-ABE8eをによる病原性SNVの修正を試みた。

 AAVの容量は4.7kb以下であることから、インテインを利用して、SpRY-ABE8eをアミノ末端側とカルボキシ末端側に二分し、デュアルAAVシステムによりrd10マウスに送達した。これによって、細胞内においてSpRY-ABE8e複合体全体が再構成され、塩基編集活性が発揮される。

 ディアルAAVシステムを網膜下に注入することで、神経網膜における病原性SNVが最大49%の効率で修正された。光学顕微鏡により、処理した領域では、処理されなかった領域の外顆粒層が薄く変性したままであったのに対して、厚く強固な外顆粒層が観察された。網膜電図では、処理した眼ではかなりの信号が検出されたが、コントロールでは最小限の信号しか検出されなかった。水迷路実験では、遺伝子治療により視覚誘導行動が大幅に改善されることが観察された。

 我々は、ヒトにおけるRP治療のためのトランスレーショナルな治療法を構築し、検証した。我々の発見は、塩基編集に基づく遺伝子治療の開発を加速させるかもしれない。

このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット