[出典] "Precision Genome Engineering in Streptococcus suis Based on a Broad-Host-Range Vector and CRISPR-Cas9 Technology" Gussak A [..] Wells JM. ACS Synth Biol. 2023-08-21. https://doi.org/10.1021/acssynbio.3c00110 [著者所属] Wageningen U
ブタやヒトに重篤な疾患を引き起こす人獣共通感染症病原体であるS. suis のゲノム編集にはこれまで、選択のために抗生物質耐性マーカーを挿入する必要があり、時間と労力を要し、また、小さな変異を正確に導入することが不可能であった。
ブタやヒトに重篤な侵襲性疾患を引き起こす人獣共通感染症病原体の一種であるS. suis のゲノム工学は、これまで、抗生物質耐性マーカーの挿入に依存し、時間と労力を要し、また、小さな変異の正確な導入が不可能であった。
ワーゲニンゲン大学の研究チームは今回、相同組換え (HR) 修復用テンプレート (repair template: RT) に直鎖DNA断片を利用し、編集が進行しなかった菌についてはプラスミドベースのネガティブセレクションシステムを利用することで、CRISPR-Cas9を介したS. suis の効率的なゲノム編集システムを開発した。同時に、このシステムをS. suis 以外のバクテリアにも適用可能にするために、広宿主域シャトルベクターを組み込んだpSStargetと称するSpCas9発現ベクターを設計した。
- pSStargetベクターは、プラスミド内のネガティブセレクションマーカーの置換により、高効率のsgRNAクローニングを容易にし、また、抗生物質の圧力がない状態で培養することで、S. suis 細胞から容易に消失する [Figure 1とFigure 2を以下に引用]
- pSStargetベクターを利用することで、抗生物質耐性選択マーカーをゲノムに組み込む必要が無くなり、SpCas9によるゲノム編集を連続して繰り返すことが可能になった。
- pSStargetを利用して、S. suis の必須遺伝子eno の単一アミノ酸を置換した変異体の形成を実現した。
さらに、RTが存在せずHRが進行しない条件下で、極めてゆっくりと成長する変異体の小さなコロニー (small colony variants: SCV) が発生することを見出したが、編集が実現したコロニーと容易に識別可能なことから、pSStargetを利用したゲノム編集の有用性を妨げることはなかった。
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