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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[注] CXCL9:免疫チェックポイント阻害 (Immune checkpoint blockade: ICB) 療法を受けた1,000人以上の患者を対象としたメタ解析から、CXCL9の発現が、7種類の癌全てに共通して、臨床効果を予測するに最も有力なマーカであることが報告された [Cell 2021]。
[出典] "CRISPR-Cas9 screening identifies an IRF1-SOCS1- mediated negative feedback loop that limits CXCL9 expression and antitumor immunity" House IG, Derrick EB [..] Darcy PK, Beavis PA. Cell Rep 2023-08-20. https://doi.org/10.1016/j.celrep.2023.113014 [著者所属] U Melbourne, U Bonn (兼任), Australian National U, Royal Melbourne Hospital, Monash U.

 抗PD-1/PD-L1や抗CTLA-4を利用するICBは、癌の免疫療法を革新したが、多くの患者において臨床的有用性が限られている。例えば、メラノーマの場合、ICB療法を受けた患者の50%が癌の進行を経験している。

 ICBの有効性が限定される一因が、腫瘍への免疫細胞浸潤の欠如である。腫瘍へのT細胞の動員、ひいては、ICB、化学療法、養子細胞療法に対する腫瘍の反応において、 CXCL9、CXCL10、およびCXCL11が重要な役割を果たしていることが知られている。オーストラリアの研究チームは今回、CXCL9の発現増強を介して抗腫瘍免疫を強化する戦略を試みた。
 
 はじめに、CRISPR-Cas9 HDRによりGFPをCXCL9にノックインしたレポーター株を作製し、これを利用して、全ゲノムCRISPR-Cas9スクリーニングを介したCXCL9の正負の転写調節因子を同定した。

 このアプローチにより、IRF1が、SOCS1の誘導を介して腫瘍細胞と初代骨髄系細胞の両方においてCXCL9の発現を制限する負の制御因子であり、ひいては、STAT1シグナル伝達を制限することが明らかになった [グラフィカルアブストラクト参照]。また、CXCL9遺伝子を含む、転写にIRF1を必要としないSTAT1依存性遺伝子のサブセットを同定した。

 IRF1またはSOCS1のいずれかを標的とすることで、腫瘍内マクロファージによるCXCL9の発現が強力に増強され、ICB療法のコンテクストにおいてさらに増強される。

 今回、SOCS1の誘導を介してSTAT1依存性遺伝子のサブセットの発現を制限するというIRF1の非正規的役割が明らかになった。
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