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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[注] RH (Refractory Hypercholesterolemia)
[出典] REVIEW "New Opportunities in the Management and Treatment of Refractory Hypercholesterolemia Using in vivo CRISPR-mediated Genome/base Editing" Srivastava RAK. Nutr Metab Cardiovasc Dis 2023-08-21. https://doi.org/10.1016/j.numecd.2023.08.010 [著者所属] Integrated Pharma Solutions, Northeastern U. 

[背景]
 
 RHは、家族性高コレステロール血症 (Familial Hypercholesterolemia: FH)のホモ型 (HoFH)とヘテロ型 (HeFH) のLDL受容体 (LDLR) 遺伝子の機能喪失変異によって引き起こされ、依然として動脈硬化性心血管病 (atherosclerotic cardiovascular disease: ASCVD) の主要なリスク因子であり、その治療薬が開発されてきている:
  • スタチンとエゼチミブの併用療法は、HoFH患者の循環LDLを30%低下させる。
  • PCSK9 mABはLDLR依存性の治療法であるため、HoFHには無効であるが、HeFH患者ではLDLを25%低下させる。
  • ANGPTL3 mABは、HoFH患者ではLDLの最大50%の低下が認められたが、これはLDLの治療目標を達成するには不十分であった。
 したがって、高用量のスタチンを受容できずまた推奨LDL値を達成できない患者に希望を与える新しいアプローチが必要である。

[新たな可能性]
 
 遺伝子治療と遺伝子編集が、LDLを低下させる新たなアプローチである。
  • AAVを用いた遺伝子治療が動物モデルにおいて有望な結果を示している。
  • CRISPR/Cas9を介したゲノム・塩基編集では、機能獲得と機能喪失のアプローチが動物モデルで成功している。
  • 最近のゲノム・塩基編集技術の進歩により、PCSK9を標的とした場合はオフターゲット変異誘発が約1%までに抑制され、ANGPTL3を標的とした場合はオフターゲット変異誘発はほとんど見られなくなった。
  • 現在、LDLR依存性およびLDLR非依存性の経路を標的としたCRISPR-Cas9ゲノム・塩基編集を用いたアプローチが進行中である。
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