[出典] "Ligand-Displaying E. coli Cells and Minicells for Programmable Delivery of Toxic Payloads via Type IV Secretion Systems" Li YG, Kishida K, Ogawa-Kishida N, Christie PJ. bioRxiv. 2023-08-12 (preprint) https://doi.org/10.1101/2023.08.11.553016[著者所属] U Texas Health Science Center

  バクテリアのIV型分泌系 (T4SS) は非常に汎用性の高い高分子トランスロケーターであり、治療的介入のためのデリバリーシステムとして展開できる大きな可能性を秘めている。

 T4SSの主要なサブファミリーの1つであるコンジュゲーションマシン (conjugation machine) [*]は、他の細菌や真核細胞に目的のDNAカーゴを送達するのに適しているが、一般に、転移頻度が低く、標的細胞に対する特異性に欠ける。
[*] "Mechanism and structure of the bacterial type IV secretion systems" Christie PJ, Whitaker N, González-Rivera C.  Biochim Biophys Acta. 2014-01-02. 

 米国の研究チームは今回、T4SSのドラッグデリバリーへの活用を目指して、ナノボディと抗原 (Nb/Ag) のペアの細胞表面ディスプレイにより、特定の大腸菌および緑膿菌のレシピエント細胞にプラスミドを接合的に導入する大腸菌を作製した。

 さらに、CRISPR/Cas9の標的配列を保有するレシピエント細胞を選択的に殺傷するために、CRISPR/Cas9システムを搭載する可動性 (mobilizable) [**]プラスミド (pCrispr) を設計した。
[**] 自己伝達性プラスミドに対して、可動性プラスミドは、自己伝達性プラスミドの接合伝達に伴って移動可能になる。

 こうして組み立てたプログラムされたデリバリーシステム (Programmed Delivery System: PDS) によって、異なる接合システムと可動性pCrisprプラスミドを持つNb表示大腸菌ドナーは、対になっていないレシピエントよりもAg表示レシピエント細胞の増殖を、有意に強く抑制した。

 また、コンジュゲーションマシンやpCrisprプラスミドで武装した無核ミニ細胞は、大腸菌レシピエントの殺傷により安全で非常に効果的であることも示した。

 新興薬剤耐性菌の出現に対して抗菌剤の発見が追いついていけなくなった現状で、PDSで武装した大腸菌細胞あるいはミニ細胞は、抗生物質の補助的あるいは代替手段として非常に有効であることが示唆された。