2024-01-14 Nuceic Acids Research 論文の書誌情報および挿入図を追加
"CasPEDIA Database: A Functional Classification System for Class 2 CRISPR-Cas Enzymes" Adler BA, Trinidad MI [..] Doudna JA (53名). Nucleic Acids Research
2023-10-27/2024-01-05 https://doi.org/10.1093/nar/gkad890
2023-08-28 EcoEvoRxiv 投稿に準拠した初稿
[注] CasPEDIA: Cas Protein Effector Database of Information and Assessment
[出典] "CasPEDIA Database: A Functional Classification System for Class 2 CRISPR-Cas Enzymes" CasPEDIA GAAdler BA, Trinidad MI [..] Doudna JA. EcoEvoRxiv. 2023-08-17 (preprint). https://doi.org/10.32942/X2C31F [著者所属] Innovative Genomics Institute, UC Berkeley, Lawrence Berkeley National Laboratory, Utrecht U, UCSF, Hampton U, Monash U, Arizona State U, Vilnius U, Harvard Medical School, U Massachusetts Chan Medical School, Montana State U, U Otago, Delft U Technology, Kavli Institute of Nanoscience, Iowa State U, Metagenomi Inc, North Carolina State U, U Melbourne

 CRISPR-Cas酵素は、RNA誘導 (ガイド) によるバクテリアとアーケアの適応免疫を担っているが、近年、ヒトを含む生物全般のゲノム編集からバイオテクノロジーまで広く利用されている。特に、クラス2のCRISPR関連酵素 (Cas9、Cas12、Cas13のファミリー)は、多くの研究、臨床、農業応用に展開されている。また、その多様かつ膨大な遺伝的および生化学的データがパプリックドメインに公開されているが、それ故に、クラス2 CRISPR-Cas システムを活用しようとする研究者に向けたナビゲーションシステムが求められている。スクリーンショット 2024-01-14 10.54.18

 Jennifer A. Doudnaが率いる研究チームが今回構築・公開したCasPEDIA (http://caspedia.org)は、Cas9、Cas12、およびCas13のファミリー、さらにファミリーと進化的に関連するIscB (HEARO) およびTnpBタンパク質を含む数百種類の酵素とタイプとサブタイプを27の系統群に分類・統合し、データの品質を管理した (キュレーションを施した) Wikiタイプのエンサイクロペディアである
[NAR論文のグラフィカルアブストラクトを右に引用]
 
 CasPEDIAの全ての酵素は、主要なヌクレアーゼ活性、ターゲットの要件、ガイドRNA設計の制約に基づいて、標準化したワークフローでアノテーションを施されている。酵素番号 (EC番号) に倣って定義したCasIDは、 CasPEDIAの機能分類体系であるが、現在の系統分類と併記されており、CasPEDIAの利用は酵素機能と配列の類似性によって関連するオーソログを検索することができる [CasIDについて、下図CasPEDIAからの画面キャプチャ参照]
  CasID 1   CasID 2
[注] NAR論文からバイオテクノロジーに貢献しているCas酵素のCasIDの例を、スクリーンショット 2024-01-14 10.54.26Figure 1から右下図に引用

 CasPEDIAは、広く使用されているCas酵素のコンテクストに依存する酵素学的特性を要約した包括的なデータポータルであり、バイオテクノロジーへの活用を促進する貴重な情報資源を利用者に提供する。スクリーンショット 2024-01-14 11.14.30

 CasPEDIAは、これまでの系統的なCas命名法を補完し、研究者が多様なクラス2 Cas酵素の多面的な特性を活用することを可能にする。
[右図は各酵素について閲覧可能な情報一覧の例 (SpyCas9): NAR論文Figure 2から引用]

[今後の課題]

 クラス2 CRISPRシステム由来の酵素は、多様なCasタンパク質のほんの一部に過ぎない。クラス1 CRISPR-CasシステムとCRISPR適応免疫システムがバクテリアとアーケアのゲノム全体にわたって最も豊富なCRISPRシステムと酵素を構成している。

 クラス1 CRISPR-Cas酵素 (Cascade)は大型の多タンパク質複合体であり、標的核酸認識において複数の酵素活性が関与することから、バイオテクノロジーへの導入は困難であったが、徐々に、応用が広がってきている。その応用を促進するために、CasIDをクラス1 Casへ展開することが、優先事項の一つである。

 クラス2 CRISPR-Casシステムについても、新たなシステムの発見が相次いでおり、その追跡を継続していく必要がある。CasPEDIAデータベースの準備中だけでも、8つの新しいシステムが報告されていた [#1-8]
 
 CasPEDIAは積極的に進化させるべきデータベースであり、コミュニティーの参加と持続的なコンテンツ管理が求められている。CRISPRの研究者は、CasPEDIA Consortiumに連絡して、新しいWikiエントリーや機能を提案したり、現在のWikiを更新したりすることが奨励される。
 
 このようなコミュニティーの努力により、将来の研究者にとって有用な情報資源としてのデータベースが維持される。WebサイトのContactページからCasPEDIAへの協力、提案、要望 (キュレーター、新たなWikiエントリーのリクエスト、既存のエントリー改訂のリクエスト、追加データの希望)を申し込まれたい、とされている。

[*] 参考文献紹介crisp_bio記事
  1. [20230117更新] CRISPR-Casシステムはファージにも内在し、それは動植物のコンパクトなゲノム編集ツール足り得るDiverse virus-encoded CRISPR-Cas systems include streamlined genome editors.
  2. 2022-12-20 未培養微生物から小型かつゲノム編集に利用可能なCas9dとHEAROを発見Compact Cas9d and HEARO enzymes for genome editing discovered from uncultivated microbes.
  3. 2022-10-30 タイプV CRISPR-Casシステムの中で、シトシン (C) リッチなPAMを認識する新たなCas12lファミリーを発見A new family of CRISPR-type V nucleases with C-rich PAM recognition.
  4. 2022-12-20 ブレスレット状のユニークな構造を介してDNA切断活性を示すコンパクトなCasπ (Cas12l) を発見The compact Casπ (Cas12l) ‘bracelet’ provides a unique structural platform for DNA manipulation.
  5. [20221208更新] DNAに結合し転写を抑制する小型なCRISPR-Cas12mエフェクターThe miniature CRISPR-Cas12m effector binds DNA to block transcription.
  6. 2023-07-10 TnpBに由来するコンパクトなCas12nの発見、特徴および応用Cas12n nucleases, early evolutionary intermediates of type V CRISPR, comprise a distinct family of miniature genome editors.
  7. [20230108更新] CRISPR-Cas12a2の非選択的なRNA/DNA切断活性は, 大規模な構造変化を介して解放されるRNA targeting unleashes indiscriminate nuclease activity of CRISPR–Cas12a2.
  8. 2023-01-09 Cas12a2は、RNAをトリガーとするdsDNAの無差別切断を介した不稔感染により、バクテリアを保護するCas12a2 elicits abortive infection through RNA-triggered destruction of dsDNA.