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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

 - ファージを介した実験室内進化と合理的設計を駆使して、GAより小型でより高活性なPEを導出 [グラフィカルアブストラクト引用右図参照] 
[出典] 
論文 "Phage-assisted evolution and protein engineering yield compact, efficient prime editors" Doman JL, Pandey S [..] Liu DR. Cell 2023-08-31. https://doi.org/10.1016/j.cell.2023.07.039 [著者所属] Merkin Institute of Transformative Technologies in Healthcare (Broad Inst), Harvard U, U Minnesota Medical School. 
ニュース "Evolved prime editors are smaller and more efficient for therapeutic applications" Williams SCP. Broad Institute. 2023-08-31. https://www.broadinstitute.org/news/evolved-prime-editors-are-smaller-and-more-efficient-therapeutic-applications

[要旨]
 
 David R. Liuらが開発したPEsはFig.1 [Figure 1の一部引用右図参照]、DNA二重鎖を切断することなく、生きた細胞内で多様かつ正確なゲノム編集を可能にしたが、臨床応用にあたって、サイズと編集効率が課題であった。研究チームは今回、先行研究で開発していた実験室内進化法であるPACE/PANCE [*] と合理的設計を駆使して、PEを構成する逆転写酵素 ( reverse transcriptase: RT) とSpCas9を改変することで、その課題を解決した。
  • コンパクトかつ編集効率を大きく向上させるRTsを選択・作出し、これまでのPEmaxよりも516~810 bp小型のPEを作出した [Figure 3/4の一部引用左図参照]。Fig. 3
  • 異なるRTsが異なるタイプの編集に特化していることを発見し、この知見を利用して、PEmaxおよびPEmaxΔRNaseH (デュアルAAVデリバリーシステムで使用される切断型エディター) を上回るRTsを作出した。
  • さらに、PEの活性を高めるSpCas9改変体を作出した。
  • RTの改変とSpCas9の改変をあわせて7種類のPE6 (PEa-g) に至った。
  • 本研究で作出したPE6によって、初代ヒトT細胞や患者由来の線維芽細胞において、治療効果を期待できる編集を実現し、また、スプリット型PE6をデュアルAAVで送達することで生体内でより長い挿入をインストールすることを可能にし、Fig. 6マウス脳の皮質で40%のloxP挿入を達成した [PEa-gの使い分けについてFigure 6の一部引用右図参照]。
 本研究はPEの性能向上を実現するとともに、PEのメカニズムの理解を深める知見をもたらした。

 一連のPE6sと PEmaxΔRNaseHの比較から、pegRNAのフォールディングエネルギーが PE 効率の決定因子であることを発見した。また、Cas9 変異体から得られたプロトスペーサー依存的な効果から、pegRNA の結合と R ループの安定化が PE に及ぼす標的特異的な影響を詳細に分析する必要があることが明らかになった。

 PE の理解を深める知見をもたらした。PE6 バリアントと PEmaxΔRNaseH の違いを調べることで、pegRNA の伸長フォールディングエネルギーが PE 効率の決定因子であることを発見した。また、Cas9 変異体から得られたプロトスペーサー依存的な効果から、ペgRNA の結合と R ループの安定化が PE に及ぼす標的特異的な影響について興味深い疑問が浮かび上がりました。

 また、本研究で有意な進化に成功したRTsは、4つの異なるクラス (グループIIイントロン、レトロン、長鎖末端反復レトロトランスポゾン、レトロウイルス)に由来していたが、PE-PACEをこの酵素スーパーファミリーに含まれる80,000種類のRT遺伝子にスケールアップして適用することで、さらなる進歩をもたらすことが示唆される。

 [David R. Liuらが開発したファージを利用した実験室内進化法PACEとPANCE]
 [David R. Liuらとは異なる研究チームによるPE改良の試み]
[論文構成]
 本文と参考文献 70編 (21頁), STAR*METHODS 13頁, およびSupplemental figures 7件 (13頁).
 INTRODUCTION
 RESULTS
  • Surveying reverse transcriptase enzymes for prime editing
  • Rational engineering of reverse transcriptase enzymes
  • Development and validation of a prime editing PACE selection circuit
  • High-stringency PE-PACE reveals edit-dependent effects on evolved editors
  • Evolution of compact RTs
  • Mammalian cell characterization of compact evolved RTs
  • Evolution and engineering of highly active AAV- compatible RTs
  • Dependence of PE6c, PE6d, and PEmaxΔRNaseH performance on RTT secondary structure
  • PE6 variants with different processivities offer improvements over PEmax
  • PE6b and PE6c offer improvements over PEmax for therapeutic edits
  • Evolution of Cas9 variants for enhanced prime editing
  • Engineering Cas9 variants for enhanced prime editing
  • Combining PE6 RT and Cas9 mutants
  • Recommendations and applications of PE6 mutants
  • PE6 variants enable longer and more complex edits in vivo via a dual-AAV delivery system
 DISCUSSION
  • Limitations of the study
 [図と補足図一覧]
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