2023-11-16 Research Highlght記事の書誌情報を追記
Research Highlight "Decoding γδ T cell anticancer therapies: integrating CRISPR screens with tumor organoids" Decoding γδ T cell anticancer therapiesZhou J, Wu M, Yang G. Sig Transduct Target Ther 2023-11-13. https://doi.org/10.1038/s41392-023-01678-z  [著者所属] 温州研究院, 北京大学
  最近のNature 論文にて、Mamedovたちは、ゲノムワイドCRISPRスクリーニングと腫瘍オルガノイド培養を統合することにより、γδT細胞の殺傷とBTN3Aの細胞発現を調節する経路を同定し、γδT細胞のストレス監視に関する理解を深め、γδT細胞の抗がん機能を高める新規経路を提案した [Figure 1引用右図参照]
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2023-09-08 Nature 論文に準拠した初稿
[出典] 
論文 "CRISPR screens decode cancer cell pathways that trigger γδ T cell detection" Mamedov MR [..] Marson A. Nature 2023-08-30. https://doi.org/10.1038/s41586-023-06482-x [著者所属] Gladstone-UCSF Institute of Genomic Immunology, UCSF, Stanford U, Dana-Farber Cancer Institute, Harvard T.H. Chan School of Public Health, U New Mexico, U Chicago, U Medical Center Utrecht, Gladstone Institutes, Princess Máxima Center for Pediatric Oncology, Oncode Institute, UC Berkeley
ニュース "How unique immune cells can recognize—and destroy—tumors" Gladstone Institute. EurekAlert! 2023-08-30. https://www.eurekalert.org/news-releases/1000123

 免疫系の中でユニークな細胞であるガンマ・デルタT (γδ T) 細胞は、癌細胞を認識して効果的に殺傷する。また、腫瘍内のγδ T細胞のレベルが高い癌患者は、レベルが低い癌患者よりも治療成績が良い傾向がある。しかし、γδ T細胞がどのようにして腫瘍細胞を認識するのか、また、この強力な免疫細胞をベースとする癌療法をどのように開発するのか、を理解するには至っていない。今回、グラッドストーン研究所とカリフォルニア大学サンフランシスコ校を主とする研究チームが、γδ T細胞による腫瘍細胞の認識機構と、腫瘍細胞の破壊の引き金となる腫瘍細胞内部の因子を同定した。

 研究チームはゲノムワイドCRISPRスクリーン技術を使ってリンパ腫細胞内の数千の遺伝子を破壊し、どの遺伝子の破壊がγδ T細胞による腫瘍細胞殺傷にどのように影響するかを系統的に検証した。その結果、γδ T細胞がブチロフィリンと呼ばれる分子の複合体を認識していることを同定した。しかし、プチロフィリン分子は正常細胞にも存在することから、γδ T細胞が認識することを知るだけでは、不十分であることも、判明した。

 研究チームはここで、急速に分裂する多くの腫瘍細胞に共通する特徴であるコレステロール産生の亢進がブチロフィリン複合体の活性化につながり、γδ T細胞がブチロフィリン複合体にアクセスできるようになるという機構に思い至った。

 CRISPRスクリーニングの結果をさらに詳しく調べたところ、腫瘍細胞に細胞ストレスを引き起こし、γδ T細胞に殺傷されやすくし、また腫瘍細胞表面のブチロフィリン分子の量を増加させることが明らかになった。

 この知見を利用して、研究チームは、癌患者の腫瘍細胞を細胞のストレス応答を模倣した薬剤で治療すると、これらの腫瘍細胞は、ブチロフィリンが増加するためにγδ T細胞に認識されやすくなり、その結果、より効率的に死滅することを示した。一方で、正常細胞では、ブチロフィリンがγδ T細胞には見えなないことから、正常細胞の殺戮を開始することはない。しかし、癌でストレスが上昇し、ブチロフィリンが活性化されると、これらの分子がより多く存在するようになり、γδ T細胞の標的として働くようになる。

 こうして、γδ T細胞の基本的な生物学が見えてきたが、同時に、患者の癌細胞表面に存在するブチロフィリンの量を操作することで、γδ T細胞を介した癌療法の可能性も見えてきた。