[出典] "Time-programmed activation of CD47 disruption and immunogenic cell death with Cas9 ribonucleoprotein nanocapsule for improved cancer immunotherapy" Xing Y, Yang J, Wang C [..] Cheng Z, Liu Y, Liu Q. Chem Eng J. 2023-09-03. https://doi.org/10.1016/j.cej.2023.145796 [著者所属] Anhui Medical U, Anhui U Chinese Medicine, Nankai U.
免疫チェックポイント阻害剤やCAR-T細胞などの癌免疫療法は革命的な癌の治療法であるが、
腫瘍の免疫原性の低さや免疫チェックポイントの過剰活性化が、抗腫瘍免疫の十分な活性化を阻害する課題を伴っている。こうし課題に対処するために、中国の研究チームは、腫瘍細胞の免疫原性細胞死 (immunigenic cell death: ICD) と免疫チェックポイント分子の一つであるCD47の破壊を時間的に制御した形で抗腫瘍免疫を相乗的に活性化する手法を、Cas9リボ核タンパク質 (RNP) ナノカプセル(Cas9NC) を開発することで、実現した。
このCas9NCは、複数の機能性モノマーからなる薄いポリマー・シェルでRNPをコーティングすることによって形成され [*]、腫瘍組織にペイロードを送達する能力をCas9NCに付与するだけでなく、CD47を標的とし転写と翻訳に時間を要するCRISPR-Cas9システムの発現を腫瘍細胞のICDに先行させる制御を可能とする。
この時間制御戦略は、発現時間の異なる2つのペイロードの相乗効果を著しく促進する。さらに、CD47の破壊は、一時的な構造的阻害をもたらす抗体に優る治療効果を達成する。
Cas9NCは強固で耐久性のある抗腫瘍免疫応答を開始し、原発性腫瘍と転移腫瘍の両方の成長を著しく阻害し、悪性腫瘍の再発と転移を予防する。総合すると、CD47破壊とICDを相乗的に行うこの時間プログラム活性化戦略は、がん免疫療法の改善のための有望なアプローチを提供する。
[*] グラフィカルアブストラクト参照
- APEGとAPEG-FAの組み合わせによって、Cas9NCの血中安定性を改善し、腫瘍への集積を促進する。APPaとBISの統合によって、APPaのレーザー照射が非致死量の活性酸素種 (ROS) を生成する際の光化学的内在化 (photochemical internalization: PCI) 効果を通じてCas9NCのエンドソーム脱出を促進する。
- 次いで細胞内のGSHリッチな微小環境に応答してCas9-sgRNA RNPを放出する。
- 最終的に、長時間のレーザー照射によって発生した致死量の活性酸素が、腫瘍細胞のICDを引き起こし2つのペイロードの時間プログラムによる活性化を達成する。
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