crisp_bio

科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

[出典]
  1. SPOTLIGHT "For the CRISPR Fan(zor)atics: RNA-guided DNA endonucleases discovered in eukaryotes" Patinios C, Beisel C. Mol Cell. 2023-09-07. https://doi.org/10.1016/j.molcel.2023.08.019 [著者所属] Helmholtz Institute for RNA-based Infection Research (HIRI);CRISPR-CasシステムのようなRNAガイドDNAエンドヌクレアーゼは、原核生物に限られると考えられていた。Feng Zhangが率いる研究チームは、真核生物にも、RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼとして機能し、ゲノム編集に利用可能なFanzorが存在していたことを報告した; Fig. 1 に、AsCas12a (PDB 5B43), ISDra2 TnpB (Deinococcus radiodurans R1, PDB 8H1J), SpuFz1 (Spizellomyces punctatus, PDB 8GKH), およびMmeFz2 (AlphaFoldモデル)の比較図あり。
  2. SPOTLIGHT "Fanzor: a compact programmable RNA-guided endonuclease from eukaryotes" Awan MJA, Awan MRA, Amin I, Mansoor S. Trends Biotechnol 2023-09-04. https://doi.org/10.1016/j.tibtech.2023.08.003 [著者所属] National Institute for Biotechnology and Genetic Engineering (Pakistan)
[注] 以下のテキストはSPOTLIGHT 1に準拠する。

真核生物のRNAガイドDNAエンドヌクレアーゼの発見はFan(zor)tasticである!

 Fanzorはそれ自体新しいものではない [Mobile DNA, 2014]。TnpBと呼ばれるトランスポゾン関連バクテリア・タンパク質に対する真核生物における遠縁のホモログとして、10年以上前にFanzor1Fanzor2として初めて報告されたが、その機能についてはDNAメチル化に関与していると推測される程度であった [] 今やCRISPR遺伝子座として知られているバクテリアのゲノム配列が、発見当時は「奇妙な配列」と捉えれていたことを思い起こさせる。


 その後、TnpBRuvCに似たエンドヌクレアーゼドメインをCRISPR-Cas12ヌクレアーゼと共有していることが発見され、TnpBCas12ヌクレアーゼの祖先とされた。さらに、現在ωRNAと呼ばれるRNAガイドはプログラム可能であり、Cas12ヌクレアーゼで観察されるのと同様に、TnpBに標的DNAの粘着末端を残すことが示された。これらの洞察が、FanzorにTnpBの子孫としてのCas12との関係性から、真核生物におけるRNAガイドDNAエンドヌクレアーゼとしての関心が向けられることになった。


 Feng Zhang研究チームは、ゲノムデータベースを用いてFanzoタンパク質のカタログを作成し、Fanzor1Fanzor2の系統的分岐を確認した以外に、既知のFanzorのセットを拡大し、Fanzor1Fanzor2とは別の進化系統を発見し、より多様な真核生物やウイルスにFanzorタンパク質が存在するとした (ただし、哺乳類は未だ含まれていない)。また、DNA切断に関与するRuvC様ドメインなど、TnpBCas12aヌクレアーゼに共通するドメインがFanzorsに含まれていることも明らかにされ、FanzorsCas12aヌクレアーゼよりもサイズ小さく、ゲノム編集アプリケーションにとって有利なことも示唆された。


 Feng Zhang研究チームは次に、Fanzorが、TnpBωRNAに相当するDNA切断を指示するガイドRNAに結合しているかどうかを見た。まず、Fanzor1タンパク質 (SpuFz1)を何十コピーもコードする土壌真菌を用い、低分子RNAの塩基配列を決定したところ、トランスポゾンの右端に約89ntRNAがコードされていることが明らかになった。この低分子RNAはパン酵母で共発現させるとSpuFz1と結合することが確認され、SpuFz1TnpBCas12ヌクレアーゼのようにリボ核タンパク質複合体を形成することが示された。


 他のFanzor1およびFanzor2タンパク質の解析により、RNAガイドの元でDNA切断を評価するためのタンパク質の大規模なセットが確立された。CRISPR/CasシステムのPAMに類したフランキング配列の必要性を解明するためのin vitro DNA切断アッセイが行われ、ターゲット隣接モチーフ (TAM) は、試験された数種のFanzorによって大きく異なることが明らかにされた。予想通り、切断産物はTnpBCas12ヌクレアーゼに典型的な5′オーバーハングを残す (粘着末端を残す) スタッガード・カット も含んでいた。しかし、TnpBCas12ヌクレアーゼとは異なり、試験したFanzorはいずれも非標的DNAのトランス切断活性 (コラテラル活性) を示さなかった。


 研究チームはまた、ωRNAと二本鎖DNA標的と結合したSpuFz1のクライオ電顕構造も報告し、FanzorωRNAをどのようにDNA標的認識に利用するかについての興味深い洞察を明らかにした。ωRNA内の15 ntDNA標的認識に関与し、ωRNAが、Cas12ヌクレアーゼと結合するタンパク質ドメインの役割を果たしていた。また、ωRNAの骨格の一部はDNA切断に関与する推定上の水分子と協調しているように見え、ωRNADNA触媒の役割を果たしていることが示唆された。これらの洞察にとどまらず、この構造は、Fanzorをゲノム編集に利用していく基盤となる。


 ヒト細胞におけるFanzorによるゲノム編集は、Fanzorタンパク質とωRNAを改変することで、実用的な効率を実現するに至った。当初、HEK293T細胞で設計したωRNAとともにSpuFz1を発現させても、挿入や欠失 (indel) 誘導効率が5%を超えることはほとんどなかったが、ωRNAまたは標的DNA結合を増加させると予測されるSpuFz1タンパク質の変異をテストし、ωRNA5′末端を延長すると、17%まで改善された。さらに、ωRNAのステムループの1つは切断される可能性があった。得られたエディターは、よりコンパクトな他のCasエディターやTnpBエディターと同様の結果を示し、Fanzorsがゲノム編集ツールに向けて競争力があることが示唆した。Fanzorsがさらに、ゲノムを標的とする真核生物のエンドヌクレアーゼに期待される核局在化シグナルをコードしていることが示され [bioRxiv 投稿]、ゲノム編集のためにシグナルを付加する必要がない特徴もそなえている。一方で、ガイドRNAが比較的短いことから、ゲノムワイドではオフターゲット活性を伴うリスクが高いと考えられるが、Fanzorsとトランスポゾンとの関連は、真核生物ゲノムにおける大きなDNA挿入への利用を予感させる。


 [対象論文を紹介したcrisp_bio記事] 
 [Fanzor関連論文とbioRxiv 投稿]
このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット