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[注] PT (phosphorothioate/ホスホロチオエート); SBD (sulfur binding domain/硫黄結合ドメイン)
[出典] "Characterization of a promiscuous DNA sulfur binding domain and application in site-directed RNA base editing" Hu W, Yang B, Xiao Q [..] He X, Liu G. Nucleic Acids Res. 2023-09-13.
https://doi.org/10.1093/nar/gkad743 [著者所属] Shanghai Jiao Tong U, Shanghai Advanced Research Institute CAS, East China U Science and Technology (ECUST)

 ホスホロチオエート (PT) 修飾は原核生物で発見され、制限修飾システムなど多くの生物学的機能に関与している。PT修飾は、PT依存性制限エンドヌクレアーゼの硫黄結合ドメイン (SBD) によって、DNA骨格や塩基との相互作用を伴う硫黄原子の配位を介して認識される。このPT認識のユニークな特性は、SBDを遺伝子ターゲティングのツールへと発展させる可能性を秘めていたが、一方で、PT-DNA結合の配列特異的であることが、その応用には限界をもたらしていた。
 
 中国の研究チームが今回、SBD-GA先の配列特異性による限界を克服するために、海洋性バクテリアのHahella ganghwensis 由来の配列プロミスキャスなPT依存性SBDHgaを同定し、SBDHgaとPT-DNA基質との複合体の結晶構造を分解能 1.8Åで決定した [グラフィカルアブストラクト引用右図参照]。

 この構造情報をベースに、SBDHgaの広範な配列認識機構では、DNAの長溝に挿入する他のSBDの長いL4ループに代わって、短いL4ループがDNAの骨格と相互作用し、また、SBDHgaとDNAバックボーン間の他の部分との接触が強化されたことが、SBDHgaの幅広い配列範囲に寄与していることが明らかになった。
 
 SBDHgaの幅広い配列認識を利用して、PT修飾RNAオリゴヌクレオチドをガイドRNAとして、SBDHgaとhADAR2DD [*]のキメラ複合体による新しい部位特異的RNA編集システムを開発した。
[*] DNAに作用するヒト・アデノシン・デアミナーゼのデアミナーゼドメイン 

 SBD 6このシステムによって、GFPのナンセンス変異を最大60%の頻度で修復することに成功した。この効率は、現在利用可能なRNA編集技術に匹敵する [Figure 6引用右図参照]。

 この研究は、核酸修飾を認識するターゲティング・ドメインを用いた部位特異的RNA編集の最初の利用法を示し、遺伝子治療のための新しい分子標的ツールの可能性を示唆した。

[構造情報] 2023-09-16 公開待ち
  • PDB 8H0L :Sulfur binding domain of Hga complexed with phosphorothioated DNA 
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