2023-09-25 ブログ記事タイトルを「CRISPR-Casの適応過程で、外来DNAをCRISPRアレイを挿入する際に、なぜゲノムをフールドする必要があるのか、その構造基盤が明らかに」から「CRISPR-Casシステムが外来DNAをCRISPRアレイに取り込む際に、何故、ゲノムが折り曲げらねばならぬのか?」に改題。
2023-09-24 初稿
[出典] "Structure reveals why genome folding is necessary for site-specific integration of foreign DNA into CRISPR arrays" Santiago-Frangos A [..] Wiedenheft B. Nat Struct Mol Biol. 2023-09-14. https://doi.org/10.1038/s41594-023-01097-2 [著者所属] Montana State U, New York Structural Biology Center, The Scripps Research Institute.
[出典] "Structure reveals why genome folding is necessary for site-specific integration of foreign DNA into CRISPR arrays" Santiago-Frangos A [..] Wiedenheft B. Nat Struct Mol Biol. 2023-09-14. https://doi.org/10.1038/s41594-023-01097-2 [著者所属] Montana State U, New York Structural Biology Center, The Scripps Research Institute.
バクテリアやアーケアは、外来DNAの断片をCRISPRアレイの最初のリピート配列に組み込むことで、ウイルスやプラスミドに対する耐性を獲得する。しかし、この部位特異的な統合のメカニズムはまだ十分に解明されていない。
モンタナ州立大学、ニューヨーク構造生物学センターおよびスクリプス研究所のチームが今回、クライオ電顕法により、緑膿菌のCas (Cas1-Cas2/3インテグラーゼ)と非Casタンパク質(integration host factor (IHF)/外来DNAを統合する宿主タンパク質)、CRISPRアレイのリード配列とリピート配列、および外来DNAからなる560 kDaの複合体構造 [*]を決定し、緑膿菌のCas1-Cas2/3と宿主のIHFタンパク質が、150塩基対の宿主DNAをU字型に折り曲げて、Cas1-Cas2/3から直角に突き出したループを形成するメカニズムを明らかにした [その全体像については Fig. 1. Cryo-EM structure of the type I-F CRISPR integration complex 参照]。
[*] PDB-8FLJ / EMD-29280: Cas1-Cas2/3 integrase and IHF bound to CRISPR leader, repeat and foreign DNA (解像度: 3.48 Å)
緑膿菌PA14のI-F CRISPRシステムにおいて、CRISPRアレイは6つのCas遺伝子 (cas1, cas2/3, cas8, cas5, cas7およびcas6)に隣接している。
- 4つのCas1と2つのCas2/3タンパク質が、Cas3とCas1サブユニットが閉じた花の花びらのように中央のCas2ホモダイマーを取り囲むヘテロヘキサマーへと集合する(Cas1<4>-Cas2/3<2>)。
- Cas1-2/3とIHFタンパク質が、CRISPRアレイの上流のリーダー配列と協働して、外来DNAを最初のリピートで統合する。
- リーダー配列には2つのIHF結合部位と2つの逆向きリピート配列 (inverted repeat)があり、これらがリーダーとリピートの接合部へと外来DNAを統合するのに必要である。
- Cas2/3融合体は統合において中心的な役割を果たすだけでなく、DNAに結合したカスケードCRISPRサーベイランス複合体 (Cascade) にリクルートされ、外来遺伝子を分解する。
- 宿主DNAがU字型に曲げられることで、Cas1-2/3インテグラーゼの一方の面に外来DNAを捕捉し、ループ部分がCas1の活性部位に最初のCRISPRリピートを配置する。
- 2つのCas3タンパク質の双方が100度回転し、Cas2ホモダイマーの両側にDNA結合部位を露出させ、それぞれがリーダーの逆反復モチーフに結合する。
- リーダー配列モチーフは、5′-GTを持つ多様な繰り返し配列にCas1-2/3を介した統合を誘導する。
本研究によって、DNAフォールディングと外来DNAの部位特異的デリバリーに重要なCas2の新たなDNA結合表面を明らかになった。
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