[注] スポロトリコーシス (深在性真菌症) とその病因菌Sporothrix brasiliensis を対象とする論文
[出典] "CRISPR-based tools for targeted genetic manipulation in pathogenic Sporothrix species" Hatinguais R, Leaves I, Brown GD, Brown AJ, Brock M, da Silva RP. Microbiol Spectr. 2023-09-14. https://doi.org/10.1128/spectrum.05078-22 [著者所属] U Exeter, U Nottingham. 
 
 S. brasiliensis は、感染している猫から人に感染する新興真菌病原体であり、今から25年以内にブラジル全土に広がり、現在ではラテンアメリカの近隣諸国にも広がっており、その病原性因子の同定と感染機構の解明が試みられてきたが、逆遺伝学的ツールが乏しく、進捗が見られなかった。
 
 英国の研究チームは今回、PEGを介したプロトプラスト形質転換が、S. brasiliensisS. schenckiiS. chilensis における異種遺伝子発現のための強力な方法であることを示した上で、CRISPR/Cas9による遺伝子編集と組み合わせることで、Sporothrix 種の病原性因子として提唱されている推定DHN-メラニン合成酵素遺伝子 pks1 の欠失を実現にした。
 
 非相同末端結合DNA修復に重要なKU80ホモログを欠失させたS. brasiliensis のΔku80株 [*]を用いることで、形質転換中の相同組み換え過程による修復が促進され、CRISPR/Cas9との組み合わせで標的遺伝子の欠失が亢進された。
[*] Sporothrix pks1 遺伝子上のCas9酵素切断部位の上流および下流それぞれの約850bpのフランキング・ホモロジー領域を増幅し、nourseothricin (nat1) 耐性カセットと融合させた。