[出典]
News & Views "Turning up the heat on essential E. coli genes" Kumar A, Stirling PC. Mol System Biol. 2023-09-18/10-12. https://doi.org/10.15252/msb.202311933 [著者所属] BC Cancer Research Institute (Canada)
論文 "Mapping temperature-sensitive mutations at a genome scale to engineer growth switches in Escherichia coli " Schramm T [..] Link L. Mol Syst Biol 2023-08-29/10-12. https://doi.org/10.15252/msb.202311596 [著者所属] U Tübingen
論文 "Mapping temperature-sensitive mutations at a genome scale to engineer growth switches in Escherichia coli " Schramm T [..] Link L. Mol Syst Biol 2023-08-29/10-12. https://doi.org/10.15252/msb.202311596 [著者所属] U Tübingen
温度感受性 (temperature-sensitive: TS) 対立遺伝子は、調節可能なサーモスイッチを作り出し、必須細胞活動を低下させ、遺伝子機能の解明に用いられる。テュービンゲン大学の研究チームは今回、CRISPRベースのアプローチを用いて、大腸菌の必須遺伝子にTS対立遺伝子を系統的に作り出した。
必須遺伝子の機能を誘導的に破壊する他の技術では、外因性のリガンドやタンパク質のタギングに依存することが多い。それに対してTS対立遺伝子は使い方が簡単で、生物を許容温度から半許容温度、非許容温度へと移行させることで、様々な活性レベルをモデル化することができる。
テュービンゲン大学の研究チームは、グルコースを単一の炭素源とする最少培地において必須である346の大腸菌遺伝子を標的として、TSPredアルゴリズム [*] を用いて各遺伝子について50のアミノ酸変異を設計し、それぞれのタンパク質の耐熱性に影響を与える変異に注目した。各遺伝子に目的とする単一のアミノ酸変異を誘導するガイドRNAsのライブラリーに基づくCRISPRノックインを介して、15,000株以上の編集済み大腸菌株からなる菌株コレクションを作成した。
このコレクションには6,000以上の低形質 (hypomorphic) 対立遺伝子が含まれており、温度をシフトする前に脱落した。残りの対立遺伝子のうち、サーモスイッチのように振る舞う1,269個のTS対立遺伝子の中から、さらなる特性解析のために94個を単離した [図1 A参照]。ここで、大腸菌必須遺伝子のほぼ3分の1について新たなTS対立遺伝子を実現したが、さらに1,200を超える推定対立遺伝子が含まれており、このアプローチを用いることで、346の全遺伝子に変異を導入したコレクションを作成可能なことが示唆された。
これまでTS対立遺伝子を作り出す試みが多くの生物で行われてきたが、酵母 (Saccharomyces cerevisiae)で最も成功し、酵母の必須遺伝子の大部分を代表する標準的なコレクションが構築されていた。過去10年間で、このコレクションは遺伝的相互作用の深いマッピングを可能にし、酵母TS対立遺伝子から得られた生物学的知見が拡張され続けている。今回のテュービンゲン大学の研究成果は、酵母研究で見られたような新しい生物学的発見に貢献することが期待される。
また、TS対立遺伝子のコレクションは、化学物質や代謝物の生産を制御し、最適化するための汎用性の高い合成生物学のツールキットとして、有用である。研究チームは、DNAポリメラーゼIII gamma/tau DnaX<L289Q>のTS対立遺伝子を用いて、アルギニンの過剰生産から細胞の成長を切り離すことで、このコンセプトを実証した。
DnaX<L289Q>変異は42°で成長停止を引き起こすが、アルギニン生産経路は24時間の試験期間中依然として活性であることが示された。すなわち、成長を抑制しつつ代謝産物の生産を継続可能なことが示され、成長中の培養に必要な栄養素の摂取量を節約しながら、化学物質の大量生産を実現する可能性が広がった。言い換えると、バイオリアクターの温度を調節することで、TS対立遺伝子を介した化学合成の代謝フラックスを制御するアプローチが有効になる。
DnaX<L289Q>変異は42°で成長停止を引き起こすが、アルギニン生産経路は24時間の試験期間中依然として活性であることが示された。すなわち、成長を抑制しつつ代謝産物の生産を継続可能なことが示され、成長中の培養に必要な栄養素の摂取量を節約しながら、化学物質の大量生産を実現する可能性が広がった。言い換えると、バイオリアクターの温度を調節することで、TS対立遺伝子を介した化学合成の代謝フラックスを制御するアプローチが有効になる。
さらに、このアプローチは、必ずしも大腸菌に限定されるものではなく、Pichia pastoris、シアノバクテリア、植物など、工業的に有用な様々な生物に適用可能である。
最後に、AlphaFoldと生成AIを用いた信頼性の高いタンパク質構造予測が、工学的に設計されたTS対立遺伝子の可能性をさらに広げる。研究チームは選択されたTS対立遺伝子におけるアミノ酸の偏りを同定しており、将来、実験データを計算機的アプローチと統合してライブラリー設計を最適化できる可能性を示唆している。また、AlphaFoldをはじめとするタンパク質設計の高性能化に伴って、変異がタンパク質の安定性にどのように影響するかについての理解が深まるだろう。
今後、優れたTS対立遺伝子を作る原理を深く理解していくことで、標的タンパク質の活性、相互作用、ドメインを特異的に不安定化するよう、TS対立遺伝子というサーモスイッチをさらにチューニングすることが可能になるであろう [図1 B参照]。
今後、優れたTS対立遺伝子を作る原理を深く理解していくことで、標的タンパク質の活性、相互作用、ドメインを特異的に不安定化するよう、TS対立遺伝子というサーモスイッチをさらにチューニングすることが可能になるであろう [図1 B参照]。
[*] "TSpred: a web server for the rational design of temperature-sensitive mutants" Tan KP, Khare S, Varadarajan R, Madhusudhan MS. Nucleic Acids Res 2014-04-29.
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