[出典] "Modular Design of Biodegradable Ionizable Lipids for Improved mRNA Delivery and Precise Cancer Metastasis Delineation In Vivo" Chen Z [..] Xiong H. J Am Chem Soc. 2023-10-18. https://doi.org/10.1021/jacs.3c09143 [著者所属] 南開大学, UTexas Southwestern Medical Center; グラフィカルアブストラクト

 脂質ナノ粒子 (LNP) は、臨床的に最も進歩した非ウイルス性のmRNA送達担体の代表である。しかし、LNPプラットフォームの潜在的な可能性は、エンドソーム脱出能力が低いことで大きく損なわれている。中国に米国が加わった研究チームは今回、ジスルフィド結合で架橋されたエステルリンカーを合理的に導入し、96のリンカー分解性イオン化可能脂質 (linker-degradable ionizable lipids: LDILs) をモジュール的に合成することで、生体内でのmRNA送達を改善した。
 
 最適化されたLDILは、1つの4A3アミノ基のヘッドグループ、4つのジスルフィド結合架橋リンカー、および4つの炭素数10のテールから構成され (4A3-SCC-10および4A3-SCC-PH)、そのユニークなGSH応答性円錐型構造により、優れたエンドソーム脱出能と迅速なmRNA放出能を帯びるに至った。特に、最適化LDILは、他のLNPに対して、肝臓におけるmRNA送達をそれぞれ87倍および176倍有意に改善し、また、4A3-SCC-PH LNPは、tdTomatoマウスの静脈内投与により、低いCre mRNA用量で99%の肝細胞の高効率遺伝子編集を可能にした。一方、4A3-SCC-PH LNPは、ホタルルシフェラーゼmRNAの選択的送達を実現し、腹腔内注射後、腫瘍細胞でのルシフェラーゼ発現を促進し、生物発光イメージングによる癌転移の可視化と手術をさらに改善した。
 
 ここで採用した手法は、遺伝子編集やがん免疫療法などの幅広い応用に向けた新しい生分解性イオン化可能脂質の開発にさらに拡張できるものと考えている。