[注] HCC (hepatocellular carcinoma)
[出典] "A CRISPR/Cas9 library screening identifies CARM1 as a critical inhibitor of ferroptosis in hepatocellular carcinoma cells" Cheng Y, Wang X [..] Wang Y, Xuan C. Mol Ther Nucleic Acids 2023-10-19. https://doi.org/10.1016/j.omtn.2023.102063 [著者所属] 天津医科大学, 天津医科大学総医院, 山東第一医科大学附属済南市中心医院, 山東師範大学;グラフィカルアブストラクト

 フェロトーシスについては、鉄を触媒として制御される細胞死の一形態であり、脂質過酸化産物と活性酸素種が致死量まで蓄積することによって生じることが知られている。また、HCCの標準治療薬であるソラフェニブは、HCC細胞にフェロトーシスを誘導することが知られている。しかし、フェロトーシスの転写調節機構はよくわかっていない。

 中国の研究チームは今回、エピジェネティック因子を標的とするCRISPR/Cas9ライブラリースクリーニングを行い、フェロトーシスの重要な阻害因子としてヒストンメチル化酵素の一種であるコアクチベーター関連アルギニンメチルトランスフェラーゼ1 (coactivator-associated arginine methyltransferase 1: CARM1)を同定した。CARM1の枯渇は、ソラフェニブ誘発フェロトーシスを増強し、細胞生存率の低下、細胞グルタチオンレベルの低下、脂質過酸化の増加、ミトコンドリアのクリスタ (crista)構造の変化をもたらした。

 研究チームは、フェロトーシスを誘導する可能性のある CARM1 阻害剤についても検討した。CARM1阻害剤とソラフェニブを併用すると、フェロトーシスの誘導が増強された。注目すべきは、 CARM1のノックダウンと CARM1 阻害剤の両方が、 マウスにおけるHCCの増殖抑制においてソラフェニブとの協働効果を示したことである。

 以上の結果から、CARM1は重要なフェロトーシス阻害因子であり、CARM1阻害剤は新規フェロトーシス誘導因子として、HCC治療の有望な治療戦略となる可能性が示された。