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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

2024-01-30 Science 論文の著者らによるコメンタリー記事へのリンクを追記:
"Decoding endocrine cell differentiation: insights from high-throughput CRISPR screening in human gut organoids" Lin L, Clevers H. Clin Transl Med 2023-01-27.
https://doi.org/10.1002/ctm2.1526 [所属] Hubrecht Institute, Oncode Institute, Princess Maxima Center for Pediatric Oncology;

2023-10-30 Science 論文に準拠した初稿
[出典] "Unbiased transcription factor CRISPR screen identifies ZNF800 as master repressor of enteroendocrine differentiation" Lin L [..] Clevers H. Science 2023-10-26.
https://doi.org/10.1126/science.adi2246 [著者所属] Hubrecht Institute, Oncode Institute, Princess Maxima Center for Pediatric Oncolog, he Maastricht Multimodal Molecular Imaging Institute (Maastricht U)

 腸内分泌細胞 (epithelium, enteroendocrine cells: EEC)は胃、小腸、大腸の上皮に存在し、代謝に関わる様々なホルモンを産生し、インスリンのレベル、満腹感、消化管の分泌や運動性などを制御している。しかし、成体幹細胞からのEECへの分化率が低いことから、異なるEECの細胞系譜の生成過程は完全には解明されていない。

 オランダの研究チームは今回、EECの分化を制御する支配的な転写因子 (TF)を同定するために、成人ヒト小腸オルガノイドにおいてTFの全レパートリー (TFome; 1,800 TFs)を対象とする7,210 sgRNsのライブラリーを利用して、CRISPR Cas9 KOスクリーニングを行った。

 この戦略により、KLF5 TCF7L2 を含む、ISCに必須の135遺伝子を同定するに至った。ヒト腸管オルガノイドのための確立された分化プロトコルを利用し、内在性ノックインレポーターを用いて、分化したオルガノイドからEECを濃縮し、sgRNAコンストラクトのEEC内での濃縮を評価した結果、EECの分化を支配することが知られているTFs (NEUROG3SOX4、INSM1)の必須性が確認された。さらに、EECの分化を調節するいくつかのTF(NFIC、TEFZHX2 ) を発見したが、これらはこれまで報告されていなかった。また、これまで研究されていなかったTFであるZNF800を、EEC分化の強固な抑制因子として同定した。

 さらに、ZNF800が内分泌系への分化を支配するマスターリプレッサーであり、特にPAX4を中心とする内分泌TFネットワークを直接制御することによって、腸クロム親和性細胞の分化を制限していることを発見した。

 本研究は、オルガノイド・モデルを利用することで、細胞運命をプログラムする遺伝子の偏りのない機能的CRISPRスクリーニングが可能なことを示した。
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