[出典] "A mouse model with high clonal barcode diversity for joint lineage, transcriptomic, and epigenomic profiling in single cells" Li L [..] Wang S-W, Camargo FD. Cell 2023-10-12. https://doi.org/10.1016/j.cell.2023.09.019 [著者所属] Boston Children's Hospital, Harvard U, Harvard Medical School, 西湖大学;グラフィカルアブストラクト

 細胞の系譜と状態を捉えることで、組織の発生と恒常性の基本法則が見えて来る。動物の細胞系譜を追跡/遡及する研究には長い歴史があるが、CRISPR/Casゲノム編集技術が登場した後も、モデルマウスの何百万もの細胞からなる組織のプロファイリングするには、細胞のバーコードの多様性と捉えることのできるシングルセルの系譜のカバレッジが不十分である。

 先行研究で細胞系譜と遺伝子発現プロファイルを同時に捉えることを可能にするマウス系統CARLIN (CRISPR Array Repair LINeage tracing) [*] を実現していた米中の研究チームは今回、末端デオキシヌクレオチド転移酵素 (terminal deoxynucleotidyl transferase: TdT) と30種類のCRISPR標的部位を利用する誘導可能なCas9バーコーディングマウス系統であるDARLINを開発した。
  • CRISPR-Cas9によるDNA編集をベースとしたCARLINでは、挿入よりも欠失が高頻度で発生し、情報が失われることから、DARLINでは、TdTを加えることで挿入頻度を高め、組織全体で推定〜1018系統のバーコードと、多重な遺伝子座の利用を実現した。
  • DARLINは、組織全体にわたってこれまでになく大量の細胞系譜用バーコードを生成し、プロファイリングされた単一細胞の約70%においてバーコードを検出可能であった (CARLINマウスでは~10%)。
  • DARLINを利用して、発生中の早期の造血幹細胞 (HSCs) における細胞運命の偏りとそのトランスクリプトーム・シグネチャーを同定した。
  • また、DARLINを利用して、成人期における骨髄ニッチ間の低レベルHSCsの循環も同定した。
  • さらに、DARLINを利用してシングルセルのクロマチンアクセシビリティ、DNAメチル化、遺伝子発現、細胞系譜の情報を同時にプロファイリング可能とするCamellia-seqをscNMT-seq [Nat Commun, 2018]をベースとして開発した。
  • その結果、細胞クローンの記憶が、遺伝子発現やクロマチンアクセシビリティではなく、ゲノムワイドなDNAメチル化と関連していることを発見した。
 DARLINは、多様な組織や生理的の根本にある細胞の系譜ととその分子シグネチャーの高分解能な解析を可能にする。

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