[出典] "TNRC18 engages H3K9me3 to mediate silencing of endogenous retrotransposons" Zhao S, Lu J [..] Song J, Wang GG. Nature 2023-11-08. https://doi.org/10.1038/s41586-023-06688-z [著者所属] Duke U School of Medicine, U North Carolina at Chapel Hill School of Medicine, UC Riverside, The First Affiliated Hospital of Harbin Medical U (兼任), U Arkansas for Medical Sciences.
ヒトゲノムのほぼ半分は転移因子 (transposable element: TE) で構成されており、その多くはロングターミナルリピート (LTR) や非LTRなどのレトロトランスポゾンである。LTRは内在性レトロウイルス (endogenous retrovirus: ERV) で構成され、非LTRにはLINEとSINEが含まれている。宿主ゲノムの完全性は、こうしたTEが、ヒストン修飾、DNAメチル化、ヒストンシャペロン、ノンコーディングRNAなどによる様々なサイレンシング機構によって厳密に制御されていることで、維持されている。特に、構成的ヘテロクロマチンに特徴的なヒストンマークであるH3K9me3が、TEの制御に、決定的な役割を果たしている。
H3K9me3は、SETDB1 (ESETとしても知られる)などのライター (writer) によって付加され、ヘテロクロマチンタンパク質1 (HP1) ファミリータンパク質が帯びているH3K9me3リーダー (reader)クロモドメインによって認識される。SETDB1の欠損はグローバルなTE活性化を引き起こすが、このような大規模なTE活性化はHP1が欠損して発生しない。このことは、TE抑制を媒介する未知のH3K9me3関連メカニズムの存在を示唆している。
ここで、ヒトサイレンシングハブ (human silencing hub: HUSH) 複合体の構成要素であるM期リンタンパク質8 (M-phase phosphoprotein 8 : MPP8)内のクロモドメインが、H3K9me3特異的リーダーとして同定された。しかし、HUSH複合体の枯渇は主に非LTRであるLINE1の抑制を引き起こし、ヒトゲノムの約8%を占め、遺伝子制御機能を持つ可能性のあるTEクラスであるLTR (すなわち、ERV) のサイレンシングを媒介するH3K9me3リーダーは不明であった。著者らは今回、トリヌクレオチドリピート含有遺伝子18 (TNRC18) がH3K9me3を認識し、LTR12などのERVクラスI (ERV1) エレメントのサイレンシングを仲介することを見出した。
ここで、ヒトサイレンシングハブ (human silencing hub: HUSH) 複合体の構成要素であるM期リンタンパク質8 (M-phase phosphoprotein 8 : MPP8)内のクロモドメインが、H3K9me3特異的リーダーとして同定された。しかし、HUSH複合体の枯渇は主に非LTRであるLINE1の抑制を引き起こし、ヒトゲノムの約8%を占め、遺伝子制御機能を持つ可能性のあるTEクラスであるLTR (すなわち、ERV) のサイレンシングを媒介するH3K9me3リーダーは不明であった。著者らは今回、トリヌクレオチドリピート含有遺伝子18 (TNRC18) がH3K9me3を認識し、LTR12などのERVクラスI (ERV1) エレメントのサイレンシングを仲介することを見出した。
- HEK293細胞の20の代表的なERV遺伝子座 (ERV1、ERVクラスIIおよびIIIを含む) を標的とするCasID [*]を利用して、ERVに近接するタンパク質を同定し、生化学的、生物物理学的および構造学的研究により、TNRC18のカルボキシ末端ブロモ隣接相同性 (BAH) ドメイン、TNRC18(BAH)が、H3K9me3特異的リーダーであることを同定した。
- また、TNRC18のアミノ末端セグメントが、HDAC-Sin3-NCoR複合体のような共抑制因子を直接リクルートするためのプラットフォームであり、その結果、H3K9me3が検出されたERVの最適な抑制を実現する機序を同定した。
- さらに、CRISPR-Cas9による変異導入実験により、TNRC18(BAH)を介するH3K9me3関与を破壊する点変異導入が、マウスでは新生児死亡を引き起こし、複数の哺乳類細胞モデルでは、ERVの発現抑制を引き起こし、シス制御エレメントのランドスケープ、ひいては遺伝子発現プログラムに影響を与えることを同定した。
これらを総合すると今回、進化的に若いERVをエピジェネティックに沈黙させ、宿主ゲノムの完全性、トランスクリプトーム制御、免疫、発生に重大な影響を及ぼす、新たなH3K9me3感知・制御経路が明らかにされた。
[*] 局所的クロマチン組成を同定するCasID
[*] 局所的クロマチン組成を同定するCasID
"Determination of local chromatin composition by CasID" Schmidtmann E, Anton T, Rombaut P, Herzog F, Leonhardt H. Nucleus. 2016-09-02. https://doi.org/10.1080/19491034.2016.1239000
クロマチンの構造と機能は多くのタンパク質が関与しているが、それらのゲノムワイドな分布を通常、免疫沈降法 (ChIP)によって同定される。LMU Munichの研究チームは今回、特定のDNA配列における局所的なクロマチン環境を調べる新しいツールを開発した。
不活性化版Cas9 (dCas9)のプログラム可能なDNA結合と、プロミスキュアスなビオチンリガーゼBirA* (CasID)を組み合わせ、特定の遺伝子座の直接近傍のタンパク質をビオチン化し、続く、ストレプトアビジンを介した沈殿と質量分析により、反復テロメア、メジャーサテライト、マイナーサテライトDNAに関連する既知および未知のクロマチン因子を同定した。すなわち、超解像顕微鏡を用いて、転写因子と推定されるZNF512がクロマチンセンターに局在していることを同定した。
CasIDの汎用性により、機能的タンパク質複合体と遺伝子座特異的クロマチン組成の系統的解明が容易になった。
[*] 参考図 Figure 1 Workflow for CasID
- BirA*-dCas9-eGFP/sgRNA発現細胞を外因性ビオチンを含まない増殖培地で培養する。
- BirA*-dCas9-eGFP融合体は、sgRNAと関心のあるゲノム遺伝子座との間の配列相補性により、目的のターゲットに誘導される。
- 培地にビオチンを添加すると、BirA*が近接したタンパク質のリジン残基にビオチンを結合させる。
- 遺伝子座に関連するタンパク質がビオチン化されると、免疫蛍光顕微鏡で直接観察可能になり、また、細胞溶解後LC-MS/MSにまわすことも可能になる。
コメント