[注] トランスラトーム (translatome):DNAから転写されてRNA全てを意味するトランスクリプトームに対して、シングルセル内である条件下で利用されている全RNAを意味する;ORF (オープンリーディングフレーム);非正規型 (non-canonical)
[出典] "CRISPR–Cas9-based functional interrogation of unconventional translatome reveals human cancer dependency on cryptic non-canonical open reading frames" Zheng C, Wei Y [..] Chen Y. Nat Struct Mol Biol 2023-11-06. https://doi.org/10.1038/s41594-023-01117-1 [著者所属] U Texas MD Anderson Cancer Center, 中国科学院生物物理学研究所 (兼任), 復旦大学 (兼任), Texas A&M Institute of Biosciences and Technology,  Lerner Research Institute (Cleveland Clinic Foundation),  Baylor College of Medicine, Duke U Medical Center.

 アノテーションが付されたトランスラトームを超えるクリプティックな翻訳を介して、発生あるいは生理に関与するタンパク質が産生されることを示唆するエビデンスが出現してきている。しかし、癌におけるクリプティック非正規型ORFの機能については、まだ不明な点が多い。このギャップを埋め、非正規型ORFに対する大腸癌 (CRC)の依存性をシステマティックに同定するために、は、著者らは、リボソームプロファイリングならびにCRISPR-Cas9ノックアウトスクリーニングに分子および臨床データの大規模解析を組み合わせた統合的マルチオミクス戦略を適用した。
  • 非正規型ORFの多くが、CRCにおいて正常な組織内よりも発現が上昇し [Fig. 1のa/b引用左下図と c/d引用右下図参照]、臨床的に関連する分子サブタイプと関連していることを同定した。
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  • 霊長類に特異的なロングノンコーディングRNAによってコードされる微小タンパク質SMIMPが、in vivoで腫瘍を促進することを同定した。
  • このSMIMPの発現がCRCの予後不良と関連し、正常組織では低く、CRCや他のいくつかのがん種では特異的に上昇することを同定した。
  • その分子機構として、SMIMPはコヒーシン複合体のコアサブユニットであるSMC1AのATPアーゼ形成ドメインと相互作用し、SMC1Aとシス制御エレメントとの結合を促進し、CDKN1AおよびCDKN2Bによってコードされる腫瘍抑制性細胞周期制御因子のエピジェネティック抑制を促進することも明らかにした。
 本研究は、コヒーシンを介した遺伝子制御の重要な構成要素として、クリプティック微小タンパク質の存在を明らかにし、クリプテティック非正規ORFによってコードされる'dark'プロテオームに、潜在的な治療・診断標的が含まれている可能性を示唆した。