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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "Integration of xeno-free single-cell cloning in CRISPR-mediated DNA editing of human iPSCs improves homogeneity and methodological efficiency
of cellular disease modeling" Namipashaki A [..] Hawi Z. Stem Cell Rep. 2023-11-16. https://doi.org/10.1016/j.stemcr.2023.10.013 [著者所属] Monash U, Monash Biomedicine Discovery Institute, Walter and Eliza Hall Institute of Medical Research, U Melbourne, U Adelaide.

 iPS細胞におけるCRISPR-Cas9の応用を妨げる大きなボトルネックの一つは、編集後の均一なシンングルセル・クローニングである。HEK293やSH-SY5Yのような非一次細胞型とは異なり、CRISPR化iPSCを単一細胞の状態から安定したクローンへと培養することは困難な作業である。これは、分散誘導アポトーシス (dissociation-induced apoptosis) に対するiPSCの生得的感受性と、CRISPR-Cas9複合体の毒性に応答するp53媒介アポトーシスのリスク上昇の結果である。

 これまでは、生存率を高めるために、トランスフェクトされた細胞は、混合集団で培養・増殖される。その結果、モザイク状のコロニーが生成され、抗生物質による選択、あるいは連続的なスクリーニングと選別のいずれかのラウンドによる精製を経て、特定の集団内で所望の編集を持つ細胞の割合が増加させる。これらのアプローチは標的変異を濃縮するのに役立つが、精製された細胞は混合コロニーの子孫であるため、不完全な同質性を持ち、その後の表現型解析を複雑にする。また、フィーダー層 (例えば、マウス胚線維芽細胞) を適用して、目的とした編集が進行した単一細胞の増殖をサポートすることで、この不均一性を回避できる可能性もある。しかし、これらに異種性が全くないとは言えず、ヒト遺伝病メカニズムのモデル化には最適ではない。

 オーストラリアの研究チームは今回、目的とした編集が進行したCRISPR iPSCクローンをフィーダーフリーで樹立・増殖させる新規な方法を開発した。
  • リポフェクションを利用することでエレクトロポレーションよる導入よりも生存率を高めた。
  • CRISPR iPSCの生存率を高めることが、高いトランスフェクションに繋がった。
  • NHEJ/NDRに適用可能なCRISPR iPSCの一様なシングルセル・クローニング法を適用した。
  • 3種類の細胞株において、トランスフェクション後のシングルセル・クローンの生存率は最大70%、トランスフェクション効率は97%を超えた。編集効率はは、NHEJでは生存クローンの50%~65%、HDRでは10%に達した。

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