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- テラスケールのディープ・クラスタリングにより188種類のCRISPR-Casシステムを発見 -

2023-12-23 Nature Reviews Genetics 誌ハイライト記事へのリンクを追記
"Efficient computation reveals rare CRISPR-Cas system"
Erti H. Nat Rev Genet. 2023-12-19. https://doi.org/10.1038/s41576-023-00690-xバクテリアやアーケアのゲノム配列のデータマイニングの観点からScience 論文をハイライト

2023-11-27 Science 論文を取り上げたNature 誌のNEWS記事へのリンクを追加し、初稿時のブログ記事タイトルを副題とし、タイトルを「ゲノム編集への応用を期待できる新たなCRISPRシステムの宝庫を開ける法」
[出典] NEWS "‘Treasure trove’ of new CRISPR systems holds promise for genome editing" Reardon S. Nature 2023-11-23. https://doi.org/10.1038/d41586-023-03697-w

 Science 論文の共同責任著者の一人でありCRISPRゲノム編集技術の先駆者の一人であるFeng Zhangは「CRISPRシステムの多様性には驚かされる ... 今回採ったアプローチは一石二鳥だ。生物学の研究が進むと共に有用なツールにつながる可能性のある因子を発見できる」と言う。

 CRISPRシステムはこれまでに、2つのクラスに分類されるI〜VIの6種類のタイプに分類されてきた。こ各タイプは、酵素の種類や、RNAやDNAを認識・結合・切断する機序など、それぞれ異なる性質を帯びている。

 Science 論文の研究チームはまず、自然界に存在するCRISPRシステムをあらいざらい探し出すために、公共データベースから利用可能な膨大な数の遺伝子配列の解析を可能にする FLSHclust (Fast Locality-Sensitive Hashing–based clustering) と呼ぶことになるアルゴリズムを開発し、FLSHclustを介して、遺伝子配列間の類似性を探し、それらを約5億のクラスターにグループ化することによって、新たなCRISPR関連遺伝子を発見した。

 各クラスターの機能を予測することで、CRISPRと何らかの形で関連する約13万個の遺伝子を発見し、そのうちの188個はこれまで見られなかったものであった。こうして、CRISPRシステムがバクテリオファージを攻撃するために用いる多彩な戦略が明らかになり、また、ファージがバクテリアの防御から逃れるのを助けるかもしれないDNAの『抗CRISPR』断片も同定された。

 新たな遺伝子の中には、RNAを標的とする全く未知のCRISPRシステムのコードも含まれており、研究チームはこれをVII型と名付けた。Science 論文の共同責任著者の一人であるNCBI/NKMのEugene Kooninは、「新たなCRISPRシステムを発見するのはますます難しくなっている ... タイプVII、そしてまだ同定されていない他のタイプも含めて、自然界では極めて稀なものに違いない ... 次のタイプを見つけるには、おそらく途方もない努力が必要でだろう」と言う。

 ドイツのマーブルグ大学の微生物学者Lennart Randauは、「生化学にとって宝の山だ ... 次は、酵素やシステムがどのような機構で働くのか、そしてそれらをどのように生物工学に適応させられるかを解明することだ」と言う。Science 論文の筆頭著者のAltae-Tranは、「VII型CRISPRシステムやFLSHclustによって同定された他の遺伝子が、遺伝子工学に役立つかどうかを判断するのは時期尚早だが、例えば、タイプVIIはごく少数の遺伝子しか持たないため、ウイルスベクターに簡単に組み込むことができ、細胞内に導入することができる。対照的に、研究チームが発見した他のシステムのいくつかは、非常に長いガイドRNAを含んでおり、特定の遺伝子配列をこれまでにない精度で標的にできる可能性がある」と、言う。

2023-11-25 Science 論文に準拠した初稿
[出典] "Uncovering the functional diversity of rare CRISPR-Cas systems with deep terascale clustering" Altae-Tran H, Kannan S [..] Koonin EV, Zhang F. Science 2023-11-23. https://doi.org/10.1126/science.adi1910 [著者所属] MIT, Broad Institute, McGovern Institute, NCBI/NLM;構造化アブストラクト挿入図

 Eugene V. KooninとFeng Zhangが率いる研究チームは今回、CRISPRに関連する遺伝子モジュールを、既存のすべての公開シーケンスデータから網羅的に列挙することを試みた。最近、CRISPRシステムによるプログラム可能な核酸認識には、トランスポジションやプロテアーゼ活性など、これまで知られていなかったいくつかの生化学的活性が関連していることが明らかになったことから、研究チームは、もっと多様な酵素活性がCRISPRシステムに関連している可能性があり、その多くは既存の配列データベースでは希少な可能性があると推論した。

 研究チームは、局所性を考慮したハッシュに基づいて並列化され、膨大なデータセットに対してリニアな時間でディープ・クラスタリングを可能にするアルゴリズム、高速局所性ハッシュベースクラスタリング (Fast Locality-Sensitive Hashing–based clustering: FLSHclust) 、を開発した。FLSHclustは、超高速なクラスタリングアルゴリズムとして知られているMMseqs2に迫るクラスタリング性能を示した。

 FLSHclustを高感度CRISPR探索パイプラインに適用したところ、多くの希少システムを含む、これまで報告されていなかった188種類のCRISPR関連システムが同定された。研究チームは、新たに発見されたシステムから4種類について実験的に検証した。
  • CRISPR関連DNA損傷誘導遺伝子G (DinG) 様ヘリカーゼにHNHヌクレアーゼドメインが挿入されたタイプIVが、RNAガイドされPAM依存的で二本鎖DNA (dsDNA) を分解する活性を帯び、それには、DinG-HNHタンパク質のアデノシン三リン酸(ATP)加水分解機能とHNHヌクレアーゼ機能の双方が必要なことを同定した。これは、特定の干渉機構を備えたタイプIV CRISPRシステムの最初の例である。
  • 次に、cas3 を欠失した一方で、HNHヌクレアーゼドメインがCascadeの異なるサブユニット (cas8cas5)に挿入された2種類のタイプI CRISPRシステム (Cas8-HNHCas5-HNH) については、いずれも正確なdsDNA切断と一本鎖DNA(ssDNA)切断を行うことを同定した。さらに、Cas5-HNHシステムによるssDNAのコラテラル切断も観察された。両システムがヒト細胞におけるゲノム編集に応用可能であり、Cas8-HNHシステムの特異性が高いことも明らかにした。
  • 加えて、多様なアーケアから見出された最小限のCas7-Cas5エフェクター複合体やβ-CASPドメインを含む特徴的な干渉タンパク質を含むタイプ VII CRISPRシステムの候補については、タイプIII-E CRISPRシステムに由来する可能性が高く、RNAを標的とすることを示した。
 その他のCRISPR関連システムとしては、潜在的なエフェクターおよび適応コンポーネント、これまで知られていなかったMuトランスポゾンとCRISPRシステムとの関連、そしてタイプVシステムに関連する多数の新たに同定されたタンパク質およびドメインが挙げられる。また、抗CRISPR機構としてCas9が共役している可能性のある例も同定され、CRISPR以外の超可変定期的散在反復配列もいくつか指摘された。

 本報告は、FLSHclustを数百万の配列を迅速かつ効率的にクラスタリングするツールとして紹介し、大規模配列データベースのマイニングに広く応用した。今回発見したCRISPR関連システムは、RNAガイド機構に関連した多様な生化学的活性の宝庫であり、バイオテクノロジーへと発展する大きな可能性を秘めている。

[参考] 図一覧
  • Fig. 1. Design and implementation of FLSHclust.
  • Fig. 2. Discovery of hundreds of rare previously undiscovered CRISPR systems with a sensitive, scalable CRISPR association pipeline.
  • Fig. 3. Type IV-A CRISPR systems perform directional dsDNA unwinding and strand-specific cleavage.
  • Fig. 4. HNH-functionalized Cascade subunits perform precise, RNA-guided dsDNA cleavage.
  • Fig. 5. Candidate type VII CRISPR system.
  • Fig. 6. Diverse CRISPR systems identified in this study.
[参考] Deep Clustering

Deepな教師なしクラスタリング - Deep Clusteringまとめ」β shortLab. 2020-07-02. 
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