crisp_bio

科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

2025-06-12 Nature 誌刊行論文としての書誌情報を以下に追記:bioRxiv投稿から論文タイトルの書き振りが変更されたが、同義:トランスポゾンから外適応したTnpBホモログは, RNAにガイドされる転写因子として機能する
"TnpB homologues exapted from transposons are RNA-guided transcription factors" Wiegand T [..] Sternberg SH. Nature. 2024-06-26. https://doi.org/10.1038/s41586-024-07598-4

2013-12-04 初稿
[出典] "Emergence of RNA-guided transcription factors via domestication of transposon-encoded TnpB nucleases" Wiegand T [..] Sternberg SH. bioRxiv 2023-11-30 [prepirnt] https://doi.org/10.1101/2023.11.30.569447 [著者所属] Columbia U.

 トランスポゾンにコードされたヌクレアーゼ (TnpB/IscB) は、CRISPR-Cas9とCas12の祖先とされ、また、プログラム可能なゲノム編集のツールとして利用可能なことが報告されるなど、このところ精力的に研究が進められている。コロンビア大学の研究チームは今回、「TnpB様タンパク質には他の機能もある」という仮説の元に、そうしたTnpB様タンパク質を探索するバイオインフォマティクス・パイプラインを構築しつつ研究を進めた。

 トランスポゾンにコードされたtnpB遺伝子は、標的DNAの切断と相同組換えによって、それ自身の利己的な拡散を促進するRNAガイドDNAヌクレアーゼをコードしている。研究チームは系統学、構造予測、比較ゲノミクス、および機能アッセイを利用して、TnpB様ヌクレアーゼ不活化因子 (TnpB-like nuclease-dead repressors: TldR) と名付けることになるプログラム可能な転写抑制因子を複数例発見した。

 TldRは、ゲノム上の保存されたプロモーター領域を特異的に標的として、天然に存在するガイドRNAを利用する。腸内細菌科に広く存在するTldRクレードに焦点を当て、いくつかのTldRsがバクテリオファージ (以下、ファージ) にコードされていることを発見した。

 ファージは、宿主バクテリアの鞭毛プロモーターを模倣したプロモーターを用いて、宿主の鞭毛制御ネットワークを乗っ取り、自分自身のFliCコピーを発現させる。このプロモーターは巧妙にも、宿主の鞭毛プロモーターを模倣しながら、重要な部位に変異を帯び、ファージがコードするFliCコピーのTldRによる抑制を妨げている。

 ファージのTldRによる宿主バクテリアの鞭毛の再構築は、宿主バクテリアの運動性の変化、鞭毛をレセプターとする鞭毛向性の競合するファージの侵入排除、あるいはファージの宿主バクテリアによる哺乳類免疫システムの回避、に利用される可能性がある。

 本研究は、不活性化Cas9 (dCas9) をベースとする人工の転写抑制因子 (CRISPRi) が発明される遥か昔から、天然のCRISPRiが出現していたことを、明らかにした [*]

[*] 不活性化されたTnpBが遺伝子調節因子として外適応した例も報告されている論文
[図一覧]
  • Figure 1 | Bioinformatics identification of naturally occurring, nuclease-deficient TnpB homologs
  • Figure 2 | tldR genes are strongly associated with diverse non-transposon genes and encoded in prophages
  • Figure 3 | TldR proteins are encoded next to gRNAs that target conserved genomic sites. 
  • Figure 4 | TldRs are RNA-guided DNA-binding proteins capable of programmable transcriptional repression
  • Figure 5 | Flagellin-associated TIdRs repress host flagellin gene expression in native clinical Enterobacter strains
このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット