2024-10-08 Meiji Seika ファルマ株式会社が2024年5月29日に「第2回厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 研究開発及び生産・流通部会 季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチン の製造株について検討する小委員会」に提出した資料へのリンクを以下に追記:https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001266060.pdf
本ブログ記事で紹介してきたワクチン/偽薬の接種結果を比較したベトナムでの臨床試験結果(起源株対象ワクチン 7702名/7638名)と国内での臨床試験(起源株対象ワクチン420名/408名;JN.1変異株対象ワクチン 463名/464名)からの有効性と安全性のデータが、ファイザーのコミナティとの比較も含めて、グラフを使ってわかり易くまとめられている。
2024-09-30 ステラ・メディックスの星 良孝氏による、第3b相臨床試験を報告した査読付き論文、審査に提出された報告書、加えて、東大医科研感染・免疫部門 ワクチン科学分野の石井 健教授への取材をベースにした記事が、9月29日にJBpressからオンライン刊行された。記事のタイトルは "【10月1日より接種開始】新型コロナ「レプリコン・ワクチン」は本当に大丈夫なのか?ワクチンの第一人者が答える - 「5人死亡」「18人死亡」「エクソソーム」「日本だけ承認」……ネットなどの指摘をどう読むか」"である。
記事では例えば、「約1万6000人(ワクチン接種者とプラセボ接種者ほぼ半々)、接種後92日間にワクチン接種者群で5人 (うち、COVID死1人), プラセボ接種者群で16人(うち、COVID死 9人)が死亡した」というデータ [*]を示して、リスクとベネフィットを冷静に判断することを奨めている。
[*]
レプリコン・ワクチン群 5/8059 例(0.1%):低血糖、膵炎、肺の悪性新生物、咽頭癌転移、コロナ感染が各1例
プラセボ群 16/8041例(0.2%):コロナ感染が9例、リンパ節腫脹、肝硬変、肝がん、大動脈解離、肺炎、アシネトバクター性肺炎、敗血症性ショックが各1例
すなわち、ネットに流布されている「(レプリコン・ワクチン接種者)5人死亡」は事実であるが、論文を丁寧に読めば、切り取られた情報に過ぎないぎないことが明らかになり、また、これが、misinformation/disinformation/miscommunicationの典型的な例であることも明らかになる。
本ブログ記事で紹介してきたワクチン/偽薬の接種結果を比較したベトナムでの臨床試験結果(起源株対象ワクチン 7702名/7638名)と国内での臨床試験(起源株対象ワクチン420名/408名;JN.1変異株対象ワクチン 463名/464名)からの有効性と安全性のデータが、ファイザーのコミナティとの比較も含めて、グラフを使ってわかり易くまとめられている。
記事では例えば、「約1万6000人(ワクチン接種者とプラセボ接種者ほぼ半々)、接種後92日間にワクチン接種者群で5人 (うち、COVID死1人), プラセボ接種者群で16人(うち、COVID死 9人)が死亡した」というデータ [*]を示して、リスクとベネフィットを冷静に判断することを奨めている。
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レプリコン・ワクチン群 5/8059 例(0.1%):低血糖、膵炎、肺の悪性新生物、咽頭癌転移、コロナ感染が各1例
プラセボ群 16/8041例(0.2%):コロナ感染が9例、リンパ節腫脹、肝硬変、肝がん、大動脈解離、肺炎、アシネトバクター性肺炎、敗血症性ショックが各1例
すなわち、ネットに流布されている「(レプリコン・ワクチン接種者)5人死亡」は事実であるが、論文を丁寧に読めば、切り取られた情報に過ぎない
2024-09-15 Meiji SeikaのsaRNAワクチン"コスタイベ筋注用"がオミクロン株JN.1系統対応として承認された [Meiji Seilaファルマ株式会社ニュースリリース 2024-09-13]。これで日本ではJN.1株対応ワクチンとして、mRNAワクチンの4種類(コスタイベ筋注に加えて、モデルナのスパイクバックス筋注、ファイザー・ビオンテックのコミナティ筋注、および 第一三共のダイチロナ筋注)と組換えたんぱくワクチン一種類(武田薬品工業のヌバキソビッド筋注)が承認されたことになる。
2024-09-08 crisp_bio 2024-09-08 自己増幅型RNAワクチンが前臨床モデルにおいてエンテロウイルスD68の感染と発病を予防
2024-08-24
crisp_bio 2024-08-24 H5鳥インフルエンザに対する自己増幅型mRNAワクチン脂質ナノ粒子製剤の免疫原性と生体内分布
2024-08-18
crisp_bio 2024-08-17 自己増幅型RNA (saRNA) の生体内分布、発現動態、反応原性に影響を及ぼすデリバリービークルと投与経路
2024-08-12 Meiji Seikaファルマなどによる日本での臨床試験からの続報 (第1項)とベトナムでの臨床試験の結果 (第2項) が報告されている査読付き論文2報を追加1. Meiji Seikaファルマなどによる日本での臨床試験からの続報が査読付き論文として発表された - 自己増幅RNA COVID-19ワクチン(ARCT-154)とBNT162b2の免疫応答の持続性を比較
[出典] "Persistence of immune responses of a self-amplifying RNA COVID-19 vaccine (ARCT-154) versus BNT162b2" Oda Y, Kumagai Y, Kanai M, Iwama Y, Okura I, Minamida T, Yagi Y, Kurosawa T, Chivukula P, Zhang Y, Walson JL. Lancet Infect Des. 2024-02-01/Apr. https://doi.org/10.1016/S1473-3099(24)00060-4 [所属] Meiji Seika ファルマ, 北里大学北里研究所病院, Arcturus Therapeutics, Walson Consulting
本試験では、mRNAワクチンを2回接種し、少なくとも3カ月前にBNT162b2のブースター投与を受けた日本人成人を、ARCT-154(n=420)またはBNT162b2(n=408)の2回目のブースター投与を受ける群に無作為に均等に割り付けた。 この解析では、COVID-19感染を示すと考えられるSARS-CoV-2 N-proteinについて、1日目、29日目、91日目、181日目に血清陽性を示した参加者を段階的に除外し、6カ月時点ではARCT-154群332人、BNT162b2群313人を組み入れ対象とした。
本試験で得られたデータは、臨床の場において、従来のmRNAワクチンと比較して、saRNAワクチン後の中和抗体の持続時間が長いことを示しており、HerfstとdeVries [Lancet Infectious Diseases, April 2024]が疑問視した免疫の持続時間が長いことを裏付けている。中和抗体は防御免疫の主な指標であることが示されているので、これらの結果はsaRNAワクチンによる防御の持続期間が長いことを示唆している。以前に報告した [本記事2024-05-05の項参照]オミクロン BA.4/5亜系に対する優れた免疫原性は、今回も確認され、反応の幅が広がったことを示唆している。
2. ベトナムでの臨床試験の報告が査読付き論文として発表された - 自己増幅型mRNA ARCT-154 COVID-19ワクチンの安全性、免疫原性および有効性:第1相、第2相、第3a相および第3b相ランダム化比較試験の統合解析
2. ベトナムでの臨床試験の報告が査読付き論文として発表された - 自己増幅型mRNA ARCT-154 COVID-19ワクチンの安全性、免疫原性および有効性:第1相、第2相、第3a相および第3b相ランダム化比較試験の統合解析
[出典] “Safety, immunogenicity and efficacy of the self-amplifying mRNA ARCT-154 COVID-19 vaccine: pooled phase 1, 2, 3a and 3b randomized, controlled trials” Trịnh QV, Phạm HN, Chử MV, Nguyễn TT, Lương QC, Tường Lê VT, Nguyễn TV, Trần LT, Thi Van Luu A, Nguyen AN, Nguyen NT, Vu HS, Edelman JM, Parker S, Sullivan B, Sullivan S, Ruan Q, Clemente B, Luk B, Lindert K, Berdieva D, Murphy K, Sekulovich R, Greener B, Smolenov I, Chivukula P, Nguyễn VT, Nguyen XH. Nat Commun. 2024-05-14. https://doi.org/10.1038/s41467-024-47905-1
[所属] Vietnam (Vinmec-VinUni Institute of Immunology, Hanoi Medical U, Pasteur Institute, Hi-tech Center, Vietnam Biocare Biotechnology Jointstock Company, College of Health Sciences - Vin U); USA (Arcturus Therapeutics, CSL Sequiris Inc)

[臨床試験] NCT05012943 The ARCT-154 Self-Amplifying RNA Vaccine Efficacy Study (ARCT-154-01) (ARCT-154-01)
ベトナム人成人16,107人を対象として [Fig.2 引用右図の上から2つ目のBOX参照]、自己増幅型mRNA COVID-19ワクチンであるARCT-154を28日間隔で2回接種する第1/2/3a/3b相対照観察者盲検比較試験において、生理食塩水プラセボと比較評価した。
ARCT-154の忍容性は良好で、一過性の有害事象は概ね軽度から中等度であった。2回目の投与から4週間後、94.1%(95%信頼区間:92.1-95.8)の被接種者が中和抗体のセロコンバージョン (抗体陽性化)を示し、ベースラインからの幾何平均倍率は14.5倍(95%信頼区間:13.6-15.5倍)であった。有効性解析の対象となったCOVID-19確定症例640例のうち、ほとんどがデルタ(B.1.617.2)変異型であった。

ARCT-154ワクチン接種は、特に重症のCOVID-19疾患に対して、忍容性、免疫原性、有効性が高い [Fig. 6引用右図参照]。
2024-05-05 2023年7月13日付のプレプリントサーバーmedRxiv 投稿が, 査読済み臨床報告として Lancet Infectious Diseases 誌から刊行されていた:
自己増幅型mRNAワクチンARCT-154の第3相試験からの報告 - その免疫原性, 安全性, 忍容性を、4回目のブースター接種の位置付けで, 従来型mRNAワクチンBNT162b2と比較
[出典] "Immunogenicity and safety of a booster dose of a self-amplifying RNA COVID-19 vaccine (ARCT-154) versus BNT162b2 mRNA COVID-19 vaccine: a double-blind, multicentre, randomised, controlled, phase 3, non-inferiority trial" Oda Y [..] Walson JL. Lancet Infect Dis 2023-12-20/2024 Apr. https://doi.org/10.1016/S1473-3099(23)00650-3 [所属] Meiji Seika ファルマ, 北里大学北里研究所病院, Arcturus Therapeutics (San Diego), Walson Consulting (Seattle, WA).
この二重盲検 , 多施設, 無作為化, 対照 ,第3相, 非劣性試験は、日本国内の外来臨床施設11ヶ所で実施され、mRNAワクチンのBNT162b2またはmRNA-1273を2回接種した後、登録の少なくとも3カ月前にBNT162b2を接種した18歳以上の健康な成人を対象に、4回目のブースターとしてARCT-154またはBNT162b2を摂取する群に、1:1の割合で無作為に割り付けられた。
その上で、ARCT-154ワクチン接種28日後の免疫応答が、BNT162b2ワクチン接種28日後の免疫応答に対して非劣性であることを、偽ウイルス中和抗体幾何平均力 (GMT) 比とサーズウイルス2の野生型Wuhan-Hu-1株 (武漢株) に対する血清反応率の双方について、比較した。オミクロンBA.4/5亜種 (以下、オミクロン株)に対する免疫応答についても比較評価した。安全性は全解析セットで評価された。なお、本試験は論文投稿時点で進行中である [日本臨床試験登録: jRCT 2071220080]。
2022年12月13日から2023年2月25日の間に、828人の参加者を登録し、4回目のブースターとして参加者にランダムに、420人にARCT-154を, 408人にBNT162b2を接種した。ARCT-154の武漢株に対する接種28日後の免疫応答は、BNT162b2に対して非劣性であり、オミクロン株に対する接種29日後の免疫応答は、BNT162b2に優った。
試験中の死亡例は無かった。重篤な有害事象は1例、ARCT-154群における肝機能異常、が発生し、これは、試験用ワクチンに関連していると考えられた。心筋炎および心膜炎の検出で特に注目すべき有害事象は、胸の痛み (ARCT-154群で1例、BNT162b2群で3例) および息切れ (BNT162b2群で2例) であり、いずれもワクチン接種に関連すると考えられた。局所反応は、ARCT-154ワクチンを接種した420人中398人 (95%)、BNT162b2ワクチンを接種した408人中395人 (97%) に見られ、全身性の有害事象は、ARCT-154ワクチンを接種した276人 (66%)、BNT162b2ワクチンを接種した255人 (63%) に見られた。これらの有害事象は軽症であり、ワクチン接種後3~4日以内に発現し、消失した。
28日目に免疫応答が強化されていたことは、この期間中に武漢株とオミクロン株に対する防御の可能性が高まり、防御の持続期間も長くなる可能性を示唆した。今後、オミクロン株以後のサーズウイルス2変異株に対する免疫原性を評価する予定である。
2024-04-12 Cell 誌のBENCH TO BEDSIDE記事へのリンクを追記
BENCH TO BEDSIDE "Self-amplifying RNA COVID-19 vaccine" Wayne CJ, Blakney AK. Cell 2024-04-11. https://doi.org/10.1016/j.cell.2024.03.018
2023年11月、Arcturus Therapeuticsが開発した自己増幅型RNA COVID-19ワクチンARCT-154が厚生労働省より承認された。臨床試験では、mRNAワクチンBNT162b2と比較して低用量で同等の安全性と有効性が示された。
[出典]
- NEWS "Self-copying RNA vaccine wins first full approval: what’s next?" Dolgin E. Nature 2023-12-06. https://doi.org/10.1038/d41586-023-03859-w
- "Japan's Ministry of Health, Labour and Welfare Approves CSL and Arcturus Therapeutics' ARCT-154, the first Self-Amplifying mRNA vaccine approved for COVID in adults" PR Newswire. 2023-11-28. (NEWS PROVIDED BY CSL). https://www.prnewswire.com/news-releases/japans-ministry-of-health-labour-and-welfare-approves-csl-and-arcturus-therapeutics-arct-154-the-first-self-amplifying-mrna-vaccine-approved-for-covid-in-adults-301999193.html
- "明治HDのコロナワクチン承認 従来型、供給は24年以降" 日本経済新聞. 2023-11-28. https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC284JL0Y3A121C2000000/
明治ホールディングス傘下のMeiji Seika ファルマが28日、厚生労働省から新型コロナウイルスワクチン (ARCT-154: 自己増幅型RNA COVID-19ワクチン)の製造販売承認を得たと発表した。承認を得たARCT-154は、サンディエゴの Arcturus Therapeuticsとメルボルンに本部がある CSL によって開発された初の自己増殖型RNAワクチン (‘self-amplifying’ RNA: saRNA) であり、Meiji Seikaファルマは、医薬品受託製造会社ARCALISと連携して、製造・販売に向かう。
今回の承認は、ベトナムで実施中の1万6,000人を対象とした有効性試験や、標準的なmRNA COVID-19ワクチンの比較対象と比較して高い免疫原性結果と良好な安全性プロファイルを達成した第3相COVID-19ブースター試験など、複数のARCT-154試験から得られた良好な臨床データに基づいている。 初期試験結果はmedRxiv [*]に掲載され、年内には査読付き学術誌に掲載される予定である。
[*] "Booster dose of self-amplifying SARS-CoV-2 RNA vaccine vs. mRNA vaccine: a phase 3 comparison of ARCT-154 with Comirnaty®" Oda Y [..] Walson JL. medRxiv 2023-07-13. https://doi.org/10.1101/2023.07.13.23292597 [preprint]; 臨床研究等提出・公開システム (Japan Registry of Clinical Trials) jRCT 2071220080
[*] "Booster dose of self-amplifying SARS-CoV-2 RNA vaccine vs. mRNA vaccine: a phase 3 comparison of ARCT-154 with Comirnaty®" Oda Y [..] Walson JL. medRxiv 2023-07-13. https://doi.org/10.1101/2023.07.13.23292597 [preprint]; 臨床研究等提出・公開システム (Japan Registry of Clinical Trials) jRCT 2071220080
新型コロナウイルスに対するこれまでのmRNAワクチンは、主に、ヒトの免疫応答を刺激するタンパク質 (抗原) をコードする遺伝子配列を帯びたRNAをヒト細胞に送り込み、ヒト細胞の機能を利用してRNAから新型コロナウイルスの抗原を生成する。一方で、saRNAワクチンは、抗原をコードする配列に加えて、RNAレプリカーゼをコードする遺伝子配列も組み込まれたmRNAを利用し、ヒト細胞の機能を介さずに、自ら抗原を複製していく [Nature News の挿入図参照]。
ARCT-154の場合、抗原は今やお馴染みのスパイクと呼ばれるタンパク質であり、RNAレプリカーゼとして、一連の遺伝子を除去することで感染性を消失させたベネズエラウマ脳炎ウイルス由来を利用している。すなわち、ウイルスそのものを作るのに必要な情報はコードされておらず、saRNAワクチンが新しいウイルスを作り出すことはなく、また、従来のmRNAに比べればヒト体内で長く維持されるが、分解されて、ヒト体内に恒久的に残ることはない。
ARCT-154の場合、抗原は今やお馴染みのスパイクと呼ばれるタンパク質であり、RNAレプリカーゼとして、一連の遺伝子を除去することで感染性を消失させたベネズエラウマ脳炎ウイルス由来を利用している。すなわち、ウイルスそのものを作るのに必要な情報はコードされておらず、saRNAワクチンが新しいウイルスを作り出すことはなく、また、従来のmRNAに比べればヒト体内で長く維持されるが、分解されて、ヒト体内に恒久的に残ることはない。
saRNAワクチンには、従来のmRNAワクチンによりも少ない用量で十分な効果を発揮することを期待できる。ARCT-154の場合は、これまでのmRNAワクチンのブースター接種に比べ、一人当たり10分の1から6分の1の用量で済む。この用量の節減は、製造コストの削減につながり、また、痛み、発熱、悪寒、その他の反応原性の低減を介してと副反応の軽減をもたらすことを期待できる。
saRNAワクチンに欠点は無いのか。
RNAレプリカーゼの遺伝子配列が加わることで、mRNAの長さが従来型の少なくとも3倍になり、製造過程が複雑になる。また、免疫システムへの作用機序も複雑になる。
saRNAは、複製の中間体を形成することで、有益な免疫シグナル伝達経路を刺激する一方で、刺激が過剰になると、逆効果になる。例えば、ワクチンが免疫システムにRNA複製を阻害するよう促す結果になると、ワクチンの効果が無効になってしまう可能性もある。ベルギーのゲント大学の遺伝子治療研究者であり、saRNA医薬の開発を進めている企業のファウンダーであるNiek Sandersは、「saRNAの最適な投与量と最適な送達システムとの組み合わせを見つける必要がある」と言う。事実、バイテク企業はこのバランスをとる試みを数十年間続けてきた。
RNAレプリカーゼの遺伝子配列が加わることで、mRNAの長さが従来型の少なくとも3倍になり、製造過程が複雑になる。また、免疫システムへの作用機序も複雑になる。
saRNAは、複製の中間体を形成することで、有益な免疫シグナル伝達経路を刺激する一方で、刺激が過剰になると、逆効果になる。例えば、ワクチンが免疫システムにRNA複製を阻害するよう促す結果になると、ワクチンの効果が無効になってしまう可能性もある。ベルギーのゲント大学の遺伝子治療研究者であり、saRNA医薬の開発を進めている企業のファウンダーであるNiek Sandersは、「saRNAの最適な投与量と最適な送達システムとの組み合わせを見つける必要がある」と言う。事実、バイテク企業はこのバランスをとる試みを数十年間続けてきた。
新型コロナワクチン用のsaRNAワクチンは、2022年にインドで緊急承認されたが、その臨床データは芳しくなく、また、暫定的な承認であり、かつ、インドでの規制が比較的ゆるいことから、業界関係者は、ARCT-154の承認が、実質的な重要な分岐点 (watershed moment) とみている [Access to Advanced Health Institute (AAHI) の社長兼最高経営責任者Corey Casper]
現在、十数種類のsaRNAワクチン候補が、帯状疱疹やインフルエンザの予防注射からがんの治療用ワクチンまで、さまざまな用途で臨床試験中であり、また、よりは幅広い応用が考えられている。例えば、saRNAを利用して体内で治療用タンパク質を生産することが考えられる [VLP TherapeuticsのJonathan Smith]。
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