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[出典] "De novo design of high-affinity binders of bioactive helical peptides" Torres SV, Leung PJY, Venkatesh P [..] Watson JL, Rogers JM, Baker D. Nature 2023-12-18. https://doi.org/10.1038/s41586-023-06953-1 [著者所属] U Washington (Seattle), Institute for Protein Design (UW), U Copenhagen.

[背景]

 副甲状腺ホルモン(PTH)、神経ペプチドY(NPY)、グルカゴン(GCG)、セクレチン(SCT)などのペプチドホルモンは、レセプターと結合するとαヘリカル構造をとり、ヒトの生物学において重要な役割を果たしており、臨床治療や生物医学研究において確立されたバイオマーカーとして利用されている。そうしたペプチドホルモンの検出や解析は現在、抗体に依存しているが、抗体の作製には多大なリソースを必要とする。

 また、高親和性で安定し、再現性の高い抗体の作製は技術的にも困難である。抗体のループを介する相互作用表面は、らせん状に伸長したペプチドに特異性の高い結合には特に適していない。一般的に、タンパク質は大腸菌で高収率かつ低コストで容易に生産可能であり安定性も非常に高く、また、3次元構造に折りたたまれた構造化タンパク質に結合するタンパク質を作り出すデノボ設計技術は相当に進歩してきたが、らせん状ペプチドに高い親和性と特異性をもって結合するタンパク質 (以下、バインダー) の設計は、依然として という未解決の課題である。

[成果]

 David Bakerらの研究チームは今回、この課題を解決するための、パラメトリック生成と深層学習に基づくタンパク質設計法を開発した。先行研究で活用したRFdiffusionをベースとするモデル [*] を拡張し、多様な標的へのバインダー設計を可能にし、入力構造モデルを連続的なノイズ生成とノイズ除去 (partial diffusion / 部分拡散) によって洗練させることで、他の手法で生成された設計を洗練させるか、または、ランダムなノイズ分布から出発することで、完全にde novoで、らせん状ペプチドの標的へのピコモルレベルの親和性バインダーの生成に成功した。

 研究チームの知る限り、これらは実験的最適化なしに計算によって、あらゆるタンパク質や低分子標的に対して最も親和性の高い結合タンパク質をでデノボで設計した初めての例である。RFdiffusionによる設計は、質量分析による副甲状腺ホルモン (parathyroid hormone: PTH)とグルカゴン(GCG)の濃縮とその後の検出、および生物発光ベースのタンパク質バイオセンサーの構築を可能にした。

 コンフォメーションが変化する標的に対するバインダーを設計し、天然タンパク質と設計されたタンパク質の両方を部分拡散によって最適化するアプローチは、広く役立つはずである。

[*]
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