[注] リザバーコンピューティングは、人間の脳の仕組みを模倣したニューラルネットワーク(数理モデル)の一種で、時系列情報処理に適した機械学習の枠組みの一つである「再帰的ニューラルネットワーク」の特殊なモデルを一般化した概念です。学習コストが低いことから少ない消費電力で高速かつ高い計算能力を有します [経済産業省: 未踏ターゲット事業の新たな分野としてニューラルネットワークの一種である「リザバーコンピューティング技術を活用したソフトウェア開発」の公募を開始します!. 2023-07-03 ]

[出典] 
  • 論文 "Brain organoid reservoir computing for artificial intelligence" Cai H [..] Guo F. Nat Electron 2023-12-11. https://doi.org/10.1038/s41928-023-01069-w [著者所属] Indiana U Bloomington, U Florida, Center for Stem Cell & Organoid Medicine (Cincinnati Children’s Hospital Medical Center), U Cincinnati School of Medicine
  • News & Views "Reservoir computing with brain organoids" Smirnova L, Caffo B & Johnson EC. Nat Electron. 2023-12-11. https://doi.org/10.1038/s41928-023-01096-7 [著者所属] Johns Hopkins U.

 脳に着想を得たコンピューティング (ニューロモーフィックコンピューティング / neuromorphic computing)は、脳の構造と作動原理をエミュレートすることを目的としてきたが、人工知能技術 (AI) に現在見えている限界を突破するツールとして有用と考えられる。しかし、脳に着想を得たシリコンチップは、ほとんどがデジタル回路の作動原理に基づいて構築されているため、脳機能を完全に模倣するにはまだ限界がある。また、シリコンチップに依存する機械学習や深層学習といったAIは、その計算に膨大なエネルギーを消費する。

 インディアナ大学ブルーミントン校知能システム工学部門のFeng Guoが率いる研究チームは今回、脳オーガノイド内の生物学的ニューラルネットワークの適応的リザーバーコンピューティングを用いた人工知能ハードウェアアプローチを報告した。

 Brainowareと称されるこのアプローチでは、高密度多電極アレイを介して脳オルガノイドから情報を送受信することにより計算が進行する。時空間電気刺激を加えることで、非線形ダイナミクスとフェージングメモリー特性が実現され、また、オルガノイドの機能的結合を再形成することで、学習データから教師なし学習が可能になる。研究チームは、Brainowareをリザーバーコンピューティングの枠組みにおける音声認識と非線形方程式予測に用いることで、実用的な可能性を示した。