[出典] "CRISPRmap: Sequencing-free optical pooled screens mapping multi-omic phenotypes in cells and tissue" Gu J [..] Gaublomme JT. bioRxiv. 2023-12-26 (preprint). https://doi.org/10.1101/2023.12.26.572587 [著者所属] Columbia U, Columbia U Irving Medical Center, Weill Cornell Medicine, Genentech Research and Early Development,  New York Genome Center

[マルチオミックス・オプティカル*・プール型スクリーン"CRISPRmap"に至るまで]
[*] オプティカルよりもイメージングの方が良さそうに思える。

 CRISPRスクリーンの手法は、プール型sgRNAライブラリーの開発、続いて、読み出しにscRNA-seqを採用することで、遺伝子に与える摂動に応じたトランスクリプトームのプロファイルの変化を解析する能力が飛躍的に向上したが [1, 2]、シーケンシングのために細胞を分離・溶解する必要があった。そこに、細胞を破壊することなく、複雑な細胞形態や分子分布を含む、細胞行動や動的な表現型の変化を捉えるイメージング技術が組み合わせたハイコンテント・スクリーンが登場し [3,4]。これらの進歩により、遺伝学的スクリーニングにおいて、表現型の解析において空間分解能を追究することが可能になった。

 しかし、表現型 (フェノタイプ)と遺伝子型 (ジェノタイプ) の関係性を知るためには、トランスクリプトーム・プロファイルに加えてプロテオームも同時に解析するシングルセル・マルチオミクス・プロファイリングが必要である。RNAシーケンシングでは見えない転写後および翻訳後のプロセスのために、不完全または誤った関係性に行き着くリスクがあるためである。マルチモーダル・プロファイリングとイメージングを利用したプール型プーリングCRISPRスクリーンを組み合わせることで、パスウェイ・ワイド、あるいはゲノム・ワイドなスケールで遺伝子に摂動を与え、健康の状態や癌のような疾患の状態において細胞パスウェイがどのように制御されているかについての理解を深められる可能性がある。

 こうした状況の中で、Cas9ヌクレアーゼと異なりDNA二重鎖切断 (DSB)  を介さずに、一塩基分解能でゲノム配列に摂動を与えることが可能な塩基エディターをベースとするプール型スクリーンが登場し、研究者が生きた細胞内で内在性タンパク質を直接改変することを可能にし、それによって自然環境におけるタンパク質の研究に革命をもたらした [5, 6, 7]。塩基エディターによる正確な塩基変換は、主に定義されたゲノム・ヌクレオチドの一定のウィンドウ内で起こる [8]。塩基エディターの編集精度は、タンパク質の機能を高分解能で解析し、配列と活性の関係をマッピングするのに有利である。

[意義不明のバリアント (variants of unknown significance: VUSs) の意義を明らかにする]

 次世代シーケンシングが臨床腫瘍学で一般的になるにつれ癌の素因や攻撃性に関連する遺伝子に関連する意義不明のバリアント (variants of unknown significance: VUSs) の数が急増している [9]。VUSは特に、ゲノムの安定性、DNA損傷シグナル伝達、DNA損傷関連チェックポイント、DNA修復遺伝子に重要なDNA損傷応答 (DNA damage response: DDR) 遺伝子でよく同定される [10]。VUSが癌の発生・増殖・転移などに寄与する機能を帯びているにか、それとも、パッセンジャーにすぎないかを知ることは、創薬、治療、予後に至るまで臨床上極めて有意義である。

 最近の技術の進歩により、腫瘍組織内におけるCRISPRシステムのガイドRNAの発現を、タンパク質のエピトープベースでシングルセル・レベルで同定することが可能になった [11, 12]これらの革新的な技術を基に、研究チームは、高度に多重化された抗体やRNA転写産物のプロファイリングと互換性のある、オプティカル・プール型スクリーンに向けて、シーケンシングを介さずにバーコードの読み出しを可能にするアプローチを開発した。

[CRISPRmap]

 本手法は、新規のin situ CRISPRガイド同定バーコード読み出しアプローチと、同時多重免疫蛍光およびin situ RNA検出を組み合わせたものである。CRISPRmapバーコードは、DNAオリゴのコンビナトリアル・ハイブリダイゼーションによって検出・読み出され、バーコード検出効率を高めると同時に、サードパーティー独自のシーケンス試薬への依存とアッセイコストを削減する [参考 Figure 1 CRISPRmap assay design overview: A sgRNA library; B sgRNA library lentivirus; C CRISPRmap-CROPseq-Guide-Puro; D In situ Multi-omic phenotyping; E In situ Barcode detection & Amplification; F Cyclic readout of barcode; G Phenotype-Genotype analysis (CRISPR edits vs Optical Features)]

 この方法を乳癌細胞株に適用し、相同組換え経路やファンコニー貧血経路に関与するDNA損傷修復の中核遺伝子について、マルチオミクス塩基編集スクリーニングを実施し、これらの遺伝子の塩基変異が、電離放射線やがん治療に一般的に用いられるDNA損傷剤による治療後のDNA損傷シグナル伝達や細胞周期制御にどのように影響するかを明らかにした。今回は、約100万個の細胞がプロファイリングされ、バリアントと表現型の関係性の包括的な評価が可能になった。

 その中で、以前はVUSとして分類されていた患者由来の変異のうち、病因となる可能性の高い変異をピンポイントで特定することができた。さらに、腫瘍組織中のプールされたライブラリーのバーコードを効果的に識別し、マルチプレックス抗体での検出と連動させることに成功した。

 CRISPRmapは、生体内CRISPRスクリーニングの足がかりとなり、細胞のランドスケープや経路の挙動を細胞内レベルでマッピングすることが可能になる。


[引用論文/関連crisp_bio記事]

3 CRISPRメモ_2018/08/04 [第1項] プール型CRISPR-Cas遺伝子編集技術とハイコンテントスクリーン技術の融合によりハイスループットのスクリーニングを実現. ;"Optial Pooled Screens in Human Cells" Feldman D [..] Zhang F, Blainey PC. Cell. 2019-10-17. 

4 CRISPRメモ_2019/05/15 [第3項] ジェノタイプもフェノタイプも画像で判定するプール型CRISPRスクリーニング法により、lncRNA局在の調節因子を同定. ; "Imaging-based pooled CRISPR screening reveals regulators of lncRNA localization" Wang C, Lua T [..] Zhuang X. PNAS 2019-05-13. 
8 CRISPR関連文献メモ_2016/04/21 [第2項] DNA二本鎖切断を介さずに、ゲノムDNA中の1塩基を編集. ;"Programmable editing of a target base in genomic DNA without double-stranded DNA cleavage” Komor AC [..] Liu DR. Nature. 2016 -04-20. https://doi.org/10.1038/nature17946

10 "The DNA damage response: making it safe to play with knives" Ciccia A. & Elledge SJ. Mol Cell 40, 179-204 (2010). 

12 "Spatial epitope barcoding reveals clonal tumor patch behaviors" Rovira-Clave X, .Drainas AP, Jiang S [..] Sage J, Nolan GP. Cancer Cell 2022-11-14.