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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

2024-02-02 Innovative Genomics Instiuteからのプレスリリースへのリンクを追記
Press Releases "Highly Targeted CRISPR Delivery Advances Gene Editing in Living Animals - Envelope delivery vehicles use tricks from viruses to sneak into cells" Sanders R. 2024-02-01. https://innovativegenomics.org/news/envelope-delivery-vehicle/

2024-01-18 Nature Biotechnology 論文に準拠した初稿
[出典] "In vivo human T cell engineering with enveloped delivery vehicles" Hamilton JR [..] Doudna JA. Nat Biotechnol 2024-01-11. https://doi.org/10.1038/s41587-023-02085-z [著者所属] UC Berkeley, Gladstone Institutes, Gladstone-UCSF Institute of Genomic Immunology (IGI), Lawrence Berkeley National Laboratory

 ゲノム編集を含む治療的介入には、標的細胞核への分子の安全かつ効果的な送達が必要である。近年、非ウイルス送達法が注目を集めているが、現時点ではその適用が、生体外における細胞、局所投与で標的可能な組織、および、生体内では肝臓に限られている。非ウイルス送達法の中で最近の脂質ナノ粒子製剤は、肝臓以外の細胞や臓器に向かう性質 (トロピズム) があることが報告されているが、生体内ゲノム編集アプリケーションの拡大には、全身投与後に体内の特定の細胞や臓器に分子を送達するための選択肢を増やしておく必要がある。

 一方で、ウイルスやウイルスベクターに備わっているトロピズムを再プログラムすることは、細胞膜やエンドソームの低pH環境での融合による細胞侵入に必要なウイルス糖タンパク質と細胞選択的標的化分子の双方を表面に提示するという確立された送達戦略である。この中で最近、エンドソーム融合活性は維持するが、ネイティブな低密度リポタンパク質レセプターへの結合親和性を欠く、水疱性口内炎ウイルス (Vesicular stomatitis virus) 糖タンパク (VSVG) の変異型、VSVGmut、を利用する形 [Nat Commun, 2018] が利用されている。このVSVGmutを細胞型特異的ターゲティング分子と組み合わせることで、レンチウイルスの導入遺伝子の送達を方向づけることができ、受容体と抗原の相互作用を研究するためのT細胞およびB細胞受容体ライブラリーのハイスループットスクリーニングが可能になった [Nat Methods 2022; Cell 2022]

 近年、レトロウイルス様粒子 (virus-like particle: VLP)、細胞外小胞 (extracellular vesicle: EV)、バイオミメティック・ナノ粒子といった細胞膜断片に覆われた (cloaked) 粒子は、分子カーゴの送達に人気を集めている。この種の「膜に包まれた送達媒体 / Enveloped Delivery Vehicles (EDV)」では、積み荷 (cargo) である分子を包み込み (packaging / パッケージ化) 、標的細胞の認識と標的細胞との融合活性を制御する生体工学が必要である。Jennifer A. Doudnaが率いる研究チームは今回、Cas9-EDV 1Cas9-sgRNAのリボ核タンパク質 (RNP) 複合体 をパッケージ化したEDV (Cas9-EDV) 上に、前述のVSVGmutと抗体由来の一本鎖可変フラグメント (scFv) を提示することで [Fig. 1 a 引用右図参照]、生体外と生体内の双方でヒトの細胞型特異的なゲノム編集を実現可能なことを示した。なお、Cas9-EDVは、Cas9 RNPの一過性の送達にVLPアセンブリーを活用している。

 Cas9-EDVと標的分子の多重化を利用して、ヒト化免疫系を持たせたマウスの生体内で、肝細胞へのオフターゲット送達を伴わずに、ヒトT細胞の遺伝子操作を介してCAR-T細胞を生成可能なことを実証した [Fig. 3とFig. 5引用の左下図と右下図参照]
Cas9-EDV 3  Cas9-EDV 5
これらのデータは、Cas9-EDVが、生体内で、カーゴである分子を特定の細胞型に送達し、複雑なゲノム操作 (標的遺伝子の破壊と有用遺伝子の導入の双方を行う) プログラム可能なプラットフォームであることを示した。その結果、Cas9-EDVには、体外でのゲノム編集、ひいては、免疫療法における移植前処置治療、を不要にして、患者の身体的および経済的負担を軽減することが期待できる。

[論文挿入図リスト]
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