(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/02/15)
2014年にStreptococcus pyogenes Cas9 (SpCas9)、2015年にStaphylococcus aureus Cas9 (SaCas9) の三者複合体の結晶構造(Cas9/gRNA/標的DNA) を高分解能で解いた西増弘志と濡木 理(東大)、Feng Zhang(Broad Inst.)らは今回、F. novicida Cas9 (FnCas9) の三者複合体結晶構造を解析した.
- F. novicida Cas9(FnCas9)は1,629アミノ酸からなる最大のCas9の一つであり、PAMは5'-NG-3' PAMとされていた.また、FnCas9は、crRNAに依存したdsDNA切断機構に加えて、crRNAとは異なるscaRNA (small CRISPR/Cas-associated RNA)に依存したdsDNA切断機構が存在し、後者によってリポタンパク質の発現を抑制することで宿主の炎症性自然免疫応答を抑制して毒性を高めるとされていた.
- 研究チームは今回、三者複合体の構造を分解能1.7 Åで解き、SpCas9 およびSaCas9の構造と比較し、CRISPR/Cas9システム間に存在する構造と機能の共通性と多様性を明らかにした.また、複合体構造情報に基づいて、FnCas9のアミノ酸残基置換によって認識PAM配列をNGGからYGへとPAMによる制約を緩やかにすることに成功した.
- [SpCas9の構造基盤]
SpCas9は、RECローブとNUCローブの2種類のローブで構成されている;sgRNAと標的DNAのヘテロ二本鎖は2つのローブの間に形成されているチャネルに結合している;dsDNAは、NUCローブのWedge (WED)ドメイン(注*)とPAM-interating (PI)ドメインの間に位置している;PAMは、NUCローブのPIドメインの特異的なアミノ酸残基によって認識される.
(注*) WEDドメインは、SpCas9論文の後に発表されたSaCas9論文で特定された. - [FnCas9の特徴]
WEDドメインやRECドメインの構造が独特であり、ドメイン間の相互作用関係がSpCas9/SaCas9と異なり、2ローブ構成をとっていない;sgRNAスキャフォールドも独特である;FnCas9のPIドメインが5'-NGG-3' PAMの認識機構もまた独特である.
- [SpCas9の構造基盤]
- PAMスクリーニングによってPAMは主として5'-NGG-3'であるが、わずかに2番目と3番目にAを許す事を見出した.
- PAMの近傍のアミノ酸3種類を置換(E1369R/E1449H/R1556A)した変異体RHA FcCas9は、より制約がゆるい5'-YG-3'PAMを認識した(挿入図参照).

- FnCas9-リボ核タンパク質複合体はマウス受精卵に注入することで、野生型FnCas9とNGG PAMの組合わせもRHA FnCas9と YG PAMの組合わせいずれもが、Tet1EX3 遺伝子座にindelsを導入する事を確認した.ただし、ヒト細胞内で発現させたFnCas9はゲノム編集活性を示さなかった.
- 塩基特異的なPAMとの相互作用を部分的に塩基非特異的なPAMとの相互作用で代替することが可能であり、この手法によって、SpCas9とSaCas9のPAM制約を改変可能と考えられる.
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