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[出典] 論文 "CRISPR–Cas9 genome editing induces a p53-mediated DNA damage response" Haapaniemi E, Botla S, Persson J, Schmierer B, Taipale J. Nat Med. 2018 Jul;24(7):927-930 (Online 2018-06-11) ;bioRxiv投稿  Inhibition of p53 improves CRISPR/Cas-mediated precision genome editing. Haapaniemi E, Botla SK, Persson J, Schmierer B, Taipale J. bioRxiv Posted August 25, 2017. (CC BY 4.0)
[概要] CRISPR/Cas9は、p53の活性化を介してDNA損傷応答と細胞周期停止を誘導するが、p53を一時的に阻害することで、HDR(相同組換え修復)率を5倍上向上させることが可能である。一方で、HDR編集効率が高い細胞ではp53が一時的に抑制されている可能性があり、CRISPR/Cas9 HDRの臨床展開にあたっては、p53の一時的阻害のリスクの評価と対策が必要である
  • CRISPR/Cas9ゲノム編集はDSBsの誘導とその修復に依存する。修復過程には、高頻度に修復エラーが発生するNHEJ修復過程と精密に修復されるHDR過程が存在し、細胞周期G1期には圧倒的にNHEJが優勢であり、HDRは専らS期(DNA合成期)に機能する。このHDRにCas9標的部位に相同な修復用テンプレートDNAを供することで、修復エラーを伴わない精密なゲノム編集が進行する。しかし、CRISPR/Cas9 HDR修復はいくつかの癌細胞株では効果的であるが、初代細胞では極めて効率が低い。これまでに、NHEJ阻害剤の併用などによりHDRを介した修復率が3倍程度まで改善されたが、関連する分子機構は不明であった。
  • 著者らは、RPE-1不死化ヒト網膜色素上皮正常細胞のCRISPR/Cas9dropout”スクリーン(図1-a)において、既知の必須遺伝子を標的とするgRNAs(を帯びたクローン)が想定に反して枯渇しなかった。一方で、p53癌抑制転写因子とその転写対象のp21(CDKN1A)遺伝子、加えて、p21に誘導される細胞周期停止に必要なRB1網膜芽細胞腫抑制遺伝子のgRNAsが劇的に(dramatically)エンリッチされる(挿入図1-a右端の図と挿入図1-b)ことを見出した。この傾向は、p53パスウエイが一部活性なMCF10A正常乳腺上皮細胞にも見られた。p53 DNA damage response 1
  • この実験結果は、Cas9DSBsを介して細胞内のp53を活性化し、細胞成長停止または細胞死を誘導し、そのために、p53パスウエイに関与しない必須遺伝子がCRISPR/Cas9dropout”スクリーンから隠されてしまうことが示唆された。この仮説は、p53+/+p53-/-RPE-1を対象とする必須遺伝子のゲノムワイドスクリーニングで裏付けられた(挿入図1-cp53の有無による必須遺伝子であることが明確なリボソーム遺伝子のランキングの差)。
  • また、Cas9-gRNARNP複合体送達による一過性Cas9活性による編集においても、挿入図1-aにあるCas9を恒常的に発現する系での実験と同様に、PRE1 p53+/+ではp21の顕著な上方制御(挿入図2-a)、とG1期停止(挿入図2-b)見られた。なお、RNP送達後24時間後において細胞死の増加は見られず、G1期停止が一過性であることも示唆された(挿入図2-c)。p53 DNA damage response 2
  • 以上の実験結果から、著者らはp53阻害によるHR効率向上の実証実験へと進んだ。不活性な変異GFPを発現させたRPE1 p53+/+(以下、RPE1-GFP)に、変異サイトを標的とするCas9 RNPと修復用ssDNA、および、p53アンタゴニストMDM2を送達し、MDM2の用量に応じて修復効率が劇的に向上することを確認した(挿入図2-d)。一方で、同じRPE1-GFP において、CRISPR-Cas複合体送達による細胞成長停止や細胞死の原因として示唆されてきたI型インターフェロン(IFN)を阻害しても、HR効率は向上しなかった。
  • 本研究から、p53阻害が正常細胞においてHDRを介した精密編集の効率を顕著に向上させることが明らかになったが、一方で、p53阻害は、細胞における染色体再編などの癌原性変異のリスクを高める。したがって、CRISPR/Cas9臨床展開には、p53の活性化を含むCas9が誘起するDNA損傷修復機構の詳細を明らかにする必要がある。
  • [注] 著者らは、「本論文の実験完了後の7月26日にbioRxivに投稿された論文(*)の結果と本論文の結果は整合し、CRISPR/Cas9ゲノム編集の臨床応用にあたりCas9によるp53活性化機構解明の必要性を裏付けている」と記している:(*) Ihry RJ et al. “P53 toxicity is a hurdle to CRISPR/CAS9 screening and engineering in human pluripotent stem cells.” bioRxiv. Posted July 26, 2017. > Nat Med. 2018 Jul;24(7):939-946. (Online 2018-06-11).
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