[出典] "Treatment of a genetic liver disease in mice through transient prime editor expression" Rothgangl T [..] Schwank G. bioRxiv 2024-02-24 (preprint). https://doi.org/10.1101/2024.01.22.575834 [著者所属] U Zurich, ETH Zurich, Acuity's Therapeutics Inc (Canada), U Children’s Hospital Zurich, U  Pennsylvania

 プライム編集は、DNA二本鎖切断や相同組み換え修復過程を必要としない汎用性の高いゲノム編集技術である。このため、肝臓のような分裂終了細胞が主体である組織における病原性変異を修正するツールとして有望である。これまでに、PEをウイルスベクターで送達し肝臓における生体内編集の実証が複数報告されている。しかし、PEのウイルスベクターによる送達には、PEの発現の長期にわたり発現によってオフターゲット編集のリスクが高まる課題が伴う。なた、目的とする編集が進行した細胞が、PEを発現し続けることで、T細胞によって除去されるリスクも想定される。

 チューリッヒ大学のGeraid Schwankが率いるスイス研究チームは先行研究で、小型化したSpCas9をベースにしたPE2を、インテインを利用してスプリットしたintein-split PE2とpegRNAをAAVで送達することで、フェニルケトン尿症モデルマウスの治療に成功していた [*]。今回、スイスにカナダと米国が加わった国際研究チームは、先行研究で利用したPE2をPmaxに変更した上でスプリットして、編集済み細胞を再編集しないように改変したpegRNAを採用した。その上で、pegRNAは自己相補性アデノ随伴ウイルス (self-complementary adeno-associated viral: scAAV) ベクターを用いて送達し、スプリットPmaxは脂質ナノ粒子(LNP) に封入したヌクレオシド修飾mRNAを用いて送達する生体内PEを開発した。

 この方法により、2.5x1013 ベクターゲノム(vg)/kgのAAV投与量と3mg/kgのmRNA-LNPの単回投与で、48時間のPEの一過性発現とDnmt1 遺伝子座の26%の編集が達成された。フェニルケトン尿症(PKU)のPahenu2マウスモデルの病原性突然変異を標的とした場合、2.5x1013 vg/kgのAAV投与量と2mg/kgのmRNA-LNPを3回投与することで、4.3%の遺伝子修正率を達成した。また、編集は肝臓と目的の遺伝子座に特異的であり、血中L-フェニルアラニン (Phe) 濃度を1500 μmol/l以上から治療閾値の600 μmol/l以下に低下させるのに十分であった。

 本研究は、一過性のPE発現による肝臓での生体内遺伝子修正の実現可能性を示し、PEの臨床応用の可能性を広げた。

[*] 
crisp_bio 2022-03-19 マウス生体内プライムエディティング(PE)によるフェニルケトン尿症療法.;"In vivo prime editing of a metabolic liver disease in mice" Böck D, Rothgangl T, Villiger L [..] Schwank G. Sci Transl Med 2022-03-16.