[出典] "CRISPR-edited crops break new ground in Africa" Ledford H. Nature 2024-01-25. https://doi.org/10.1038/d41586-024-00176-8
 
 科学記者のHeidi Ledfordが, 1月16日に米国サンディエゴで開催された「Plant and Animal Genome Conference 2024 (PAG31)」での発表とインタビューをもとに、標題ニュース記事をNature 誌から発表した。

作物の遺伝子編集

 ケニヤッタ大学のSteven Runoは、"意地の悪い魔法使いのような雑草 (witchweed)"と呼ばれるストラガ属の抵抗性のある天然のソルガムの変異を、CRISPR-Cas9遺伝子編集技術で模倣した系統を樹立し、ケニア政府から遺伝子編集種子を栽培する許可を得た。この系統は、ケニアの2022年の規制では遺伝子組み換え作物 (GMO) ではなく、従来の品種改良作物として扱われる。ナイジェリアとマラウイも同様の政策をとっており、エチオピアやウガンダを含む他のアフリカ諸国も追随すると見られている。
[注] ソルガムは丈夫な作物で、アフリカでは食料、建築資材、飼料として広く利用されている。しかし、アフリカの農地の60%以上が、ソルガムの根に寄生し、栄養分と水分を吸い上げる植物、ストライガに汚染されている。ストライガが蔓延すると、作物全体が全滅することもある。

 その他にも、致死性壊死症に対する耐性を持たせたトウモロコシ、製粉後すぐに腐敗しにくいトウジンビエ (peral millet)、ガンの原因となるアフラトキシンを生成するカビに感染しにくい落花生がアフリカで開発されている。

家畜の遺伝子編集

 米国ミシガン州にあるRecombineticsのCEO Dan Carlsonは、アフリカ品種の牛の乳量と暑さや病気に対する耐性を向上させるための編集プロジェクトを紹介した。一方で、スウェーデン農業科学大学で農村開発を研究するKlara Fischerは、遺伝子編集は実験室では比較的安価に行えるが、編集された作物を農場に持ち込むにはまだ大きなハードルがあるとし、「遺伝子編集農作物に関しては、時に、過度に熱狂的になりすぎるきらいがある。また、遺伝子編集種子は購買力の乏しい貧しい小規模農家が市場で購入できる可能性は低いため、政府の関与が必要であろう」と言う。

事業の持続可能性

 Runoは、米国国際開発庁からの資金を当てにし、また、米国インディアナポリスにある農業関連企業 Corteva Agriscienceと協力している。しかし、Runoは、このような支援が常に受けられるとは限らないことを念頭に置いて、研究室の消耗品や設備のコストを削減し、別の資金源を見つけることに取り組んでいる。

 また、CRISPR遺伝子編集をめぐる知的所有権争いが最終的にアフリカでの取り組みにどのような影響を与えるのか、そして海外市場、特にヨーロッパ市場がアフリカで栽培された遺伝子編集作物に門戸を開くかどうかも未知数だという専門家もいる。

 しかし、Runoによれば、彼が話をした農民たちは、海外で開発された種子よりも地元の研究者によって開発された作物の方が安心できると感じているという。