2024-04-19 Science Immunology 刊行論文のハイライト記事の書誌情報を追記:"Restoring T-cell Cytotoxicity To Correct Familial Hemophagocytic Lymphohistiocytosis" Biernacki M, Markey K. Hematologist. 2024-04-15. https://doi.org/10.1182/hem.V21.3.2024310

 遺伝子編集による遺伝性血液疾患の治療への期待が高まっている。例えば、CRISPR-Cas9を介したCD34+造血幹・前駆細胞の編集による胎児ヘモグロビンの発現亢進や、鎌状赤血球貧血やβサラセミアの治療である。こうした研究結果を臨床応用するためには、1)患者から十分なT細胞を採取できること、2)修復されたメモリーT細胞が養子移入後も持続し、十分に機能すること、3)修復されたNK細胞を用いずにT細胞の修復だけでヒトの炎症亢進を抑制できること、などを証明する必要がある。さらにFHLの場合は、さまざまな遺伝子の欠損が病因子であり、多くのFHL患者を治療するためには、さまざまな修復のツールボックスが必要となる。また、Munc13-4の例のように、現在のCRISPR-Cas9技術では、オフターゲット編集のため、すべての修復が臨床的に可能とは限らない。それにもかかわらず、Science Immunology 論文は、若いFHL患者の予後改善に向けた確かな一歩を記した。

2024-02-07 Science Immunology 刊行論文に準拠した初稿
[出典] "Precise CRISPR-Cas9 gene repair in autologous memory T cells to treat familial hemophagocytic lymphohistiocytosis" Li X [..] Rajewsky K. Science Immunol. 2024-02-02.
https://doi.org/10.1126/sciimmunol.adi0042 [所属] Max-Delbrück-Center for Molecular Medicine in the Helmholtz Association, Charité - Universitätsmedizin Berlin, Berlin Institute of Health (BIH) at Charité, University Medical Center Hamburg-Eppendorf

 家族性血球貪食性リンパ組織球症 (Familial Hemophagocytic Lymphohistiocytosis: FHL) は、重篤な全身性炎症亢進を特徴とする、遺伝性でしばしば致死的な免疫不全症である。同種他家由来の骨髄移植により治癒することもあるが、より効果的な治療法が緊急に必要とされている。FHLは、細胞性免疫を制御するタンパク質の不活性化変異によって引き起こされる。

 ドイツの研究チームは今回、アデノ随伴ウイルスベースのCRISPR-Cas9システムと非相同末端結合の阻害剤を用いた相同組み換え修復 (HDR)過程を介して、潜在的に長寿命なT細胞においてFHLの原因である不活性化変異を生体外で修復した。
  • 修復されたCD8メモリーT細胞は、EBウイルスで誘発したFHL2 (パーフォリン-1: Prf1 欠損が原因のサブタイプ) マウスモデルにおいて、致死的な炎症亢進を効率的に治癒した。
  • FHLの重症患者の変異メモリーT細胞において、FHL3サブタイプの原因となるPRF1 とMunc13-4 (UNC13D )の欠損を修復すると、CD8+T細胞の細胞傷害性が回復し、増殖及び修復に成功した。
 これらの結果は、CRISPR-Cas9 HDRを介した精密な遺伝子修復をベースとする自家T細胞療法による遺伝性T細胞免疫調節異常症候群の臨床への道を拓いたものである。