2024-04-01 Trends in Neurosciences 誌のScence Advances 論文の紹介記事を追記
[出典] SPOTLIGHT "CRISPR-based identification of N-terminal acetylation in synucleinopathies" Bae E-J, Lee S-J. Trends Neurosci. 2024-03-28. https://doi.org/10.1016/j.tins.2024.03.006 [所属] Seoul National U College of Medicine, Neuramedy Co. Ltd.
 Kumarらによって、内因性α-シヌクレイン (α-synuclein) のレベルを制御するいくつかの生物学的経路が同定された。内因性α-シヌクレインの安定性を維持する重要な因子として、N末端アセチル化 (NTA) 経路がハイライトされ、NTA経路を標的とした治療法の可能性が示唆された。

2024-02-15 Science Advances 論文に準拠した初稿
[出典] "Sequential CRISPR screening reveals partial NatB inhibition as a strategy to mitigate alpha-synuclein levels in human neurons" Kumar SS [..] Shalem O. Sci Adv. 2024-02-09.
https://doi.org/10.1126/sciadv.adj4767 [所属] U Pennsylvania, Children's Hospital of Philadelphia, Brigham and Women's Hospital and Harvard Medical School, Broad Institute of Harvard and MIT, Harvard Stem Cell Institute.

 αシヌクレイン (αSyn) タンパク質のレベルは、パーキンソン病や関連する神経変性疾患のリスクや重症度と相関することが知られている。このため、そうした疾患の治療戦略
として、αSynのレベル低下が活発に研究されている。

 フィラデルフィア小児病院とペンシルベニア大学のOphir Shalemが率いる研究チームは今回、αSynを内因性かつスケーラブルな方法で研究するために、αSynを閾値を超えて自然に発現するメラノーマ細胞株を同定し、CRISPR-Cas9によるHDRを介して内因性SNCA 遺伝子座をmNeongreen2で標識し、FACSベースのゲノムワイドCRISPR-Cas9 KOスクリーンを行った [Fig. 1参照]。その結果、3′末端プロセシング、タンパク質分解、転写、シグナル伝達タンパク質に関連する遺伝子を含む、αSynタンパク質制御の多層性が明らかになった。

 CRISPR KOスクリーンに続いて、その結果の特異性を高めるために、SNCA 標識メラノーマ細胞株とiPS細胞由来の神経細胞 (iNeurons) を対象とするCRISPRiによる標的化スクリーン [Fig. 2参照]も行った。

 CRISPR KOとCRISPRiの2段階のスクリーンの結果から、多層な制御機構の各層においてαSyn修飾因子を発見したが、N末端アセチル化 (NTA) が細胞質αSynを、Ube2w (Ubiquitin-conjugating enzyme E2 W)依存性プロテアソームによる急速な分解から保護する重要な機構であることを発見した。

 そこで、NTAを担う酵素であるNAA25の非存在下、および複数の細胞株でαSynの非アセチル化形態を過剰発現させることにより、αSynの細胞内分布と分解を探索した。また、今回のスクリーンで同定された負のαSyn修飾酵素であるメチオニルアミノペプチダーゼ2 (METAP2) を低分子阻害剤で阻害すると、SNCAの三重化を帯びたiNeuronsにおけるαSynレベルが減弱することも発見した。

 今回、Synのポジティブおよびネガティブな修飾因子、非アセチル化αSynの分解の基礎となるメカニズム、およびパーキンソン病患者由来ニューロンにおけるαSynを低下させる効果的な戦略が明らかになった。また、FACSを読み出しとする大規模なプール型CRISPRスクリーンによって、疾患タンパク質の本来のコンテクストにおける制御ネットワークの解析が可能なことが示された。