crisp_bio

科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

[注] REMOVER (REplacement with Multiplex OVERdigestion); PITCh (Precise Integration into Target Chromosome)
[出典] "REMOVER-PITCh: microhomology-assisted long-range gene replacement with highly multiplexed CRISPR-Cas9" Matsuzaki S, Sakuma T, Yamamoto T. In Vitro Cell Dev Biol Anim. 2024-02-09. https://doi.org/10.1007/s11626-024-00850-1 [所属] 広島大学, 湧永製薬

 CRISPR-Cas9をベースとするさまざまな遺伝子編集技術が開発され、遺伝子挿入や遺伝子置換などが実現され、疾患の研究や治療に応用されている。遺伝子挿入については、効率化や拡張のための研究が数多く行われているが、遺伝子置換に関する報告は比較的少なく、遺伝子置換技術のさらなる改良が求められている。

 広島大学の研究チームは今回、2014年に発表したPITch法と2018年に発表したLoAD (local accumulation of DSB repair molecules) をベースに、 高度に多重化されたCRISPR-Cas9を利用した効率的な長距離遺伝子置換法を確立し、REMOVER-PITChシステムとして発表した。

 REMOVER-PITChは、ヒト培養細胞を用いて2つのゲノム遺伝子座 (ムコ多糖症VII型とVI型の原因酵素をコードしているGUSBとARSB)でその有用性を実証した。まず、このシステムを用いて約20kbのGUSB 遺伝子座の遺伝子置換を達成した [Figure 1引用左下図参照]
REMOVER-PITch 1   REMOVE-PITch 4
 次に、REMOVER-PITChとLoADシステムを併用することで、ARSB 遺伝子座の約200kbという長い遺伝子領域の置換を達成した
[Figure 4引用右上図参照]。このREMOVER-PITChシステムにより、ゲノムからの様々な配列の除去とゲノムへの組み込みがそれぞれ可能となり、様々な疾患モデルやヒト化モデルの作製が容易になる。

 例えば、今回モデルとした選択した遺伝子座に関連するムコ多糖症は、病型に応じて数十から数百の病原性変異が同定されている。 遺伝子置換法は、このような多数の病原性変異が対応遺伝子上に散在する疾患の対立遺伝子修復や、動物モデル作製への有力なアプローチとなり得る。

[関連crisp_bio記事]
このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット