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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "Artifishial: naturalness and the CRISPR-salmon" Winther H. Agric Human Values. 2024-02-19. https://doi.org/10.1007/s10460-024-10548-5 [所属] Norwegian University of Science and Technology (ノルウェー科学技術大学の哲学・宗教学科において、ゲノム編集動物はどのように規制されるべきかを問う学際的プロジェクトCRISPRWELLに参加しているポストドク)

 遺伝子組み換え作物 (GMO) が世論の抵抗に遭っている理由のひとつは、それが「不自然である (unnatural)」と認識されていることである。この認識は、道徳的に好ましくないとされる種の境界を越えるという認識と、部分的に、重なっている。CRISPRによるゲノム編集動物は、外来遺伝子の挿入を必要としないため、この点で倫理的なゲームチェンジャーであるとする主張がなされている。

 本稿では、一般市民やその他のステークホルダーとの個別インタビューやフォーカス・グループを含む実証的な生命倫理研究に基づき、サケの養殖におけるCRISPRゲノム編集の道徳的可否について、「自然性 / naturalness」に観点から考察を加える。

 具体的には、自然性の2つの軸、すなわち、種本来の特性で生きていることと、人間の影響を受けないで生きていること、について論じ、これらの軸から見たCRISPRゲノム編集の適用基準を示し、養殖サケに対する道徳的義務と、絶滅危惧種である野生のサケに対する道徳的義務との間に矛盾をもたらすと、論じる。さらに、気候変動や生物多様性の損失が進むにつれて、人間の影響を受けない自然が理想として提示される一方で、原始のままの自然を保全するにはテクノロジーや人間の介入に依存する可能性がある、というパラドックスに向き合いことになることを、指摘する。
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