26ヶ国が参加しているGlobal Vaccine Data Networkの枠組みにおいて2021年に設立された多国籍プロジェクトGlobal COVID Vaccine Safety (GCoVS)が、COVID-19ワクチン接種後の特に注目すべき有害事象 (Adverse events of special interest: AESI) の分析結果を発表

[出典] 
[手法]

 スクリーンショット 2024-02-29 15.48.13GCoVSに参加した8ヶ国11施設 (日本は参加していない) 観察コホート研究では、共通のプロトコールを用いて、神経学的、血液学的、心臓学的転帰にわたる13種類のAESIについて、予想されていた発生率と観察された発生率を比較した。予想発生率 (期待値) は、年齢と性別で層別化したCOVID-19ワクチン接種前の医療データを用いて参加施設が算出した。一次解析では、アデノウイルスベクターワクチン (ChAdOx1)と、mRNAワクチン (BNT162b2およびmRNA-1273) の接種後42日までに発生したAESIを対象とした [右図はTable 2から引用した接種されたワクチン一覧]。リスクは、95%信頼区間を有する観察対期待比 (OE比) で評価した。

[結果]

 ワクチン接種を受けた99,068,901人が参加し、ワクチンごとの接種回数は、ChAdOx1が23,093,399回、BNT162b2が183,559,462回、mRNA-1273が36,178,442回であった。以下、心臓のAESI、血管系のAESI、および脳神経系のAESIのリスクを、Table 5, Table 4, およびTable 3を引用しながら見ていく。なお、これらの表でOE比の数値に応じてセルの背景色が三段階に色分けされている:OE比が1.5を超える場合は赤OE比が 1を超えかつ 1.5以下は黄OE比が1.0以下は緑

スクリーンショット 2024-02-29 17.38.45心臓の有害事象 [Table 5引用右表参照]

 右表の一連の赤色セルにあるように、mRNAワクチン (BNT162b2, mRNA-1273)を接種した後に心筋炎が発生するリスクが高く、モデナ社のワクチンを2回接種した後にそのリスクが最も高くなっていた。また、mRNAワクチンの初回投与後、心膜炎のリスクは予想より1.7倍高く、4回目の投与で2.6倍になった。

スクリーンショット 2024-02-29 17.39.25血管系の有害事象 [Table 4引用右表参照]

 ChAdOx1の初回投与後、CVST/脳静脈洞血栓症のリスクが上昇しているが、予想された21件に対し、3.2倍の69件が観察された。このリスクはファイザー社製ワクチンの初回投与後では1.49倍、2回目投与後では1.25倍であった。

脳神経系の有害事象 [Table 3引用右表参照]スクリーンショット 2024-02-29 17.40.01

 ウイルスベクターワクチンであるChAdOx1の場合に、ギラン・バレー症候群の症例が統計的に有意に増加した。これらのワクチンを接種したグループでは、66例が予想されていたが190例が観察された。mRNAワクチンではこのような増加は見られなかった。

[まとめ]

 ワクチン接種後42日目までの発症リスクは、血管系と脳神経系では概ね健常者と同様であるが、AESIの中には、事前に報告されたよりも高リスクな例や、今回の大規模調査で初めてリスクが明らかになった例もあった。

 一方で、事前の臨床試験に加えて、ワクチン接種開始後の疫学的研究から、ワクチンが重症化やロングCOVIDを抑制するというエビデンスが多数報告されており、ワクチン接種のメリットはリスクを上回ること見られる。最近の研究 [The HDR UK COALESCE Consortium, 2024]によれば、英国内のすべての人がワクチンを完全に接種していれば、COVID-19による重篤な結果(死亡を含む)40,393件のうち約7,180件を回避できたとされている。