2024-03-09 Nature 論文を取り上げたNature News記事とゲノムDNA編集以外の遺伝子調節関連crisp_bio記事を以下に引用

  • NEWS "'Epigenetic' editing cuts cholesterol in mice" Ledford H. Nature 2024-02-28:Nature 論文の概要を紹介し、「エピジェネティックスへの奔流」という段落で締めくくっている、「今回の成果は、すでに始まっているエピジェネティック編集への熱狂をさらに加速するであろう。University Medical Center Groningenのエピゲノミクスの専門家Marianne Rotsによると、10社以上の企業がエピジェネティック編集療法の開発に注力している。そのうちの数社は、サルで長期間効果が持続することを報告しているが、まだ査読付き学術誌には発表していない。また、米国のOmega Therapeutics 社は、多くの癌において、過剰に作用し、従来の薬剤では標的とすることが困難であった遺伝子MYC をサイレンシングするエピジェネティック・エディターの臨床試験を実施している。

2024-03-02 Nature 論文に準拠した初稿
[出典] "Durable and efficient gene silencing in vivo by hit-and-run epigenome editing" Cappelluti MA [..] Lombardo A. Nature 2024-02-28.
https://doi.org/10.1038/s41586-024-07087-8 [所属] San Raffaele Telethon Institute for Gene Therapy, U del Piemonte Orientale, Institute for Biomedical Technologies, Vita-Salute San Raffaele


 転写抑制因子を搭載したプログラム可能なエディターを用いた永続的なエピジェネティック・遺伝子サイレンシング (以下、エピ・サイレンシング/ep-silencing) は、ヒト疾患の新たな治療戦略として期待されている。しかし、その治療的可能性を最大限に引き出すためには、生体内へ一過性のエディターを導入した後に、エピ・サイレンシングが持続することを実験的に確認する必要がある。


 この目的のために、イタリアの研究チームは今回、肝細胞で発現し、コレステロールの恒常性に関与する遺伝子であるPcsk9 を標的とするさまざまなエピゲノム・エディター [*1]を設計し、Hit-RUn 1in vitroでスクリーニングした結果、ジンクフィンガー・タンパク質 (以下, ZFP)がマウスPcsk9 の効率的なエピ・サイレンシングに最も適したDNA結合プラットフォームであることを発見した。

[*1] (ZFP, TALE, dCas9) +  (KRAB, cdDNMT3A, DNMT3L) [Fig.1引用右図参照]


 ZFPエピゲノムエディターのmRNAを脂質ナノ粒子を介してマウスに単回投与すると、PCSK9の血中循環レベルがほぼ1年間半減した。注目すべきことに、Pcsk9 Hit-Run 3のエピ・サイレンシングとそれに伴うエピジェネティックな抑制マークは、強制的な肝臓再生後も持続し、新たに導入されたエピジェネティックな状態が遺伝されることが、示された [Fig. 3引用右図参照]


 ここまでのエピ・サイレンシング・プラットフォームは、3つの独立したmRNAを産生・共送達するという複雑な構成であったことから、オールインワンのコンストラクト [*2]として送達する設計へと改良し、これを、evolved engineered transcriptional repressor (EvoETR)と命名した。

[*2] Fig. 4引用右図参照:Hit-run 4ZFP DNA結合ドメイン (DBD) のN末端にcdDNMT3AとDNMT3Lのヘテロ二量体を、C末端にKRABドメインを付加した。高い特異性プロファイルを特徴とするこの設計は、従来の遺伝子編集で得られたものと同等の効率で、かつ、DNA切断を起こすことなく、マウスのPCSK9の循環レベルをさらに低下させた


 本研究は、エピジェネティックなサイレンシングに基づく生体内治療法の実現可能性を示した。


[参考] エピゲノム編集のレビュー