[注] Acr (anti-CRISPR / 抗CRISPR)
[出典] "An anti-CRISPR that represses its own transcription while blocking Cas9-target DNA binding" Deng X [..] Wang Y. Nat Commun. 2024-02-28. https://doi.org/10.1038/s41467-024-45987-5 [所属] Institute of Biophysics CAS, University of  CAS.
[構造情報]
PDB IDs:  8JFO (apo-AcrIIA15), 8JFU (AcrIIA15-DNA), 8JFR (AcrIIA15 NTD-DNA), 8JFT (SaCas9-sgRNA-AcrIIA15 CTD),  8JG9 (SaCas9-sgRNA-AcrIIA15-IR).
EMDB IDs: EMD-36217 (SaCas9-sgRNA-AcrIIA15 CTD), EMD-36225 (SaCas9-sgRNA-AcrIIA15-IR). 

 AcrIIA15は、黄色ブドウ球菌のCas9 (SaCas9) を阻害するAcrタンパク質である。これまでの研究で、AcrIIA15は2つの機能を持つことが示唆されていたが、その2つの活性の構造的・生化学的基盤は不明なままであった。ここでは、AcrIIA15とSaCas9-sgRNAとの複合体のクライオ電顕構造を決定し、AcrのC末端ドメイン (CTD) がdsDNAを模倣してPAM認識を阻害する機構を明らかにした。

[詳細]

 Acrsは、同じオペロン内で保存されている抗CRISPR関連 (anti-CRISPR-associated: aca   ) 遺伝子の上流に頻繁にコードされるため、aca 遺伝子はacr 遺伝子を同定するための貴重なマーカーとして機能する。注目すべきことに、既知のacaタンパク質はすべて、共通のhelix-turn-helix (HTH) のDNA結合モチーフを共有している。このHTHモチーフは、acr-aca オペロンのプロモーター配列の主溝に挿入されることで、acr 遺伝子の転写抑制因子として機能する。この抑制は、ファージのライフサイクルに有害となりうる過剰なAcrの発現を防ぐために極めて重要である。このネガティブ・フィードバック制御は、感染初期にはCRISPR-Casシステムからファージゲノムを効果的に保護し、感染後期には過剰なAcr発現による細菌の早期溶解を回避する。

 Acr 遺伝子とAca 遺伝子が同じオペロン内で分離している典型的な配置とは対照的に、ある種のAcrは、CRISPR-Casシステムを阻害するドメインと、HTHモチーフを含むもう一方のドメインという、正規のAcrとAcaの両成分を持つ融合タンパク質である。AcrIIA1、AcrIIA6、AcrIIA13-15、AcrIF24など、このような2つの機能を持つ融合型Acrがいくつか同定されている。

 Staphylococcus ゲノムから同定されたAcrIIA13, AcrIIA14, およびAcrIIA15は、SaCas9のDNA切断活性を抑制し、また、すべてN末端にHTHモチーフを帯びている。AcrIIA13は標的DNAのローディングを阻害することでSaCas9を阻害し、AcrIIA14はCas9のHNHドメインに結合し、そのアロステリックな活性化を阻害することが、示されている。AcrIIA15については、sgRNAのローディングを阻害し、Cas9サーベイランス複合体の形成を阻害することが示唆されているが、その機構はまだ詳らかにされていない。また、AcrドメインとAcaドメインが融合型Acrにおいてどのように連携しているのかも不明である。

 中国の研究チームは今回、AcrIIA15とSaCas9-sgRNAとの複合体そしてまたはAcrオペロンプロモーターDNAとの複合体の構造を決定し、生化学的解析も加えた結果、AcrがCRISPR-Casシステムを阻害する新たな機序を発見した:
  • AcrIIA15 CTDは、PAMを模倣することで、Cas9が標的DNAに結合するのをブロックする。
  • AcrIIA15AcrIIA15はそのN末端のHTH含有ドメインを介してホモ二量体を形成し、acr 遺伝子の上流にあるDNAの逆向き反復配列に特異的に結合する。
  • Cas9-sgRNA-AcrIIA15-DNA 四元複合体のクライオ電顕構造から、AcrIIA15二量体は、N末端ドメインを介してDNAと相互作用し、また、C末端ドメインを介して2つのSaCas9-sgRNA複合体とも相互作用する [Fig. 6引用右図参照]