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- この機構は蝶だけでなく他の動物にも広まっている可能性が高い。
[出典] NEWS "Surprise RNAs solve mystery of how butterfly wings get their colorful patterns" Pennisi E. Science 2024-02-29.  https://doi.org/10.1126/science.zsupi1d

 2016年以来、翅の模様の変異の多くが、皮質と呼ばれるタンパク質をコードする遺伝子によってもたらされていることが突き止められた [1]、と見られていた。しかし今回、3つの研究チームが、これまで皮質と重複していたために見逃されていた遺伝子こそが鍵であると、bioRxiv に投稿した [2, 3, 4]。その遺伝子産物はタンパク質ではない長鎖ノンコーディングRNA (lncRNA) である。

 ジョージワシントン大学のLuca Livraghiは[2]、eBayで売られている真っ白なHeliconius (ドクチョウ属) バリアントの存在を知ったところから、bioRxivに投稿するに至った Heliconius melpomene[右の挿入図は野生型のHeliconius melpomene ]。eBayの象牙のようなバリアントの塩基配列を数十個解読した結果、皮質遺伝子の領域に欠失があり、その欠失していた領域の中に、これまで誰も詳しく調べたことのないlncRNAをコードする配列が含まれていることに気づいた。そこで、カラフルな翅を持ち、Vanessa cardui実験室での繁殖が容易な Vanessa cardui (ヒメアカタテハ)  [左図参照]を対象として、CRISPR/Cas9を利用してlncRNA遺伝子を選択的にノックアウトしたところ、eBayで売られていたHeliconius のような翅が得られた。一方で、皮質遺伝子をノックアウトしても、この現象は見られなかった。Livraghiらはさらに、この同じlncRNAが、他のチョウの鱗粉の黒色やその他の色素沈着も制御していることを発見し、蝶の翅を制御する因子はタンパク質ではなくlncRNAであるエビデンスを2月12日にbioRxiv に投稿した [2]

 Livraghらは、Junonia coenia研究の途上でコーネル大学のグループが、Junonia coenia (アメリカタテハモドキ) [右図参照]の翅の色のパターンを研究していることを知り、協力して研究を進めた。秋になると、特に米国東部では、アメリカタテハモドキの薄茶色の翅が深紅色に濃くなり、熱を効率よく吸収できるようになる。コーネル大学の進化生物学者Richard FandinoとRobert Reedが率いる研究チームもCRISPR/Cas9を利用してlncRNAの異なる部分をノックアウトしたところ、ほとんど色がつかずに、秋の赤みも変化することを発見し、”象牙色lncRNAが季節ごとの色模様を制御する"といったタイトルで2月19日にbioRxiv に投稿した [3]。

 シンガポール国立大学のBicyclus anynana anynanaShen TianとAntónia Monteiroが率いる研究チームもCRISPR-Cas9を利用して、Bicyclus anynana (アニュナナアフリカコジャノメ) [右図参照] 皮質遺伝子座内の2つのノンコーディングRNAsをノックアウトし、そのうちの一つであるmir-193をコードするDNAのノックアウトによって、褐色の翅が薄くなることを発見し、2月12日にbioRxiv に投稿した [4]。mir-193をノックアウトすると、 2024-03-11 9.13.08進化系統上遠縁のPieris canidia  (タイワンモンシロチョウ) [左図参照] でも劇的な効果が見られ、黒い模様の翅が真っ白に変わった。さらに、研究チームは、Livraghiらと、Richard FandinoとRobert Reedらによって同定されたlncRNAが、分解されてこれらのマイクロRNAが生成されると結論づけた。なお、mir-193は、蝶以外にもさまざまな生物に見られることから、今回、蝶で発見された機構が多くの生物種でも機能している可能性がある。

[引用文献]
  1. NEWS 'Landmark study' solves mystery behind classic evolution story. Benson E. Science 2016-06-01 ; "The industrial melanism mutation in British peppered moths is a transposable element" Hof A, Campagne P, Rigden D [..] Saccheri IJ. Nature 2016-06-02. 
  2. Livraghi L, Hanly JJ, Evans E et al. "A long non-coding RNA at the cortex locus controls adaptive colouration in butterflies" bioRxiv 2024-02-12 (preprint). [所属] George Washington U, U Cambridge, Duke U, Smithsonian Tropical Research Institute (Panamá), U Puerto Rico, Wellcome Sanger Institute, Cornell U, U di Parma.
  3. Fandino RA [..] Reed RD. "The ivory lncRNA regulates seasonal color patterns in buckeye butterflies" bioRxiv. 2024-02-19 (preprint).  [所属] Cornell U,  George Washington U, Clemson U
  4. Tian S [..] Monteiro A. "A micro-RNA drives a 100-million-year adaptive evolution of melanic patterns in butterflies and moths" bioRxiv. 2024-02-12 (preprint). [所属] National U Singapore.
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