2024-05-16
CRISPR/Cas12aとアプタマーと化学発光をベースとして, 乳癌診断のための腫瘍関連タンパク質陽性エクソソームの相対量決定法を実現
[出典] “CRISPR/Cas12a and aptamer-chemiluminescence based analysis for the relative abundance determination of tumor-related protein positive exosomes for breast cancer diagnosis” Guan X [..] Sun S. Biosens Bioelectron. 2024-05-11. https://doi.org/10.1016/j.bios.2024.116380 [所属] Shenzhen International Graduate School (Tsinghua U), Shenzhen Second People's Hospital
エクソソームは、癌診断に向けたリキッドバイオプシーにおける新規バイオマーカーとして、期待されている。しかし、エクソソーム膜上では様々なタンパク質が異なる発現量を示し、また、臨床サンプル中のエクソソームの絶対濃度は様々な要因に影響されやすい。深圳に研究チームが今回、CRISPR/Cas12aとアプタマー化学発光に基づく解析法 (CRISPR/Cas12a and aptamer-chemiluminescence based analysis: CACBA) を開発し、乳癌診断のための血漿中の腫瘍関連タンパク質陽性エクソソームの相対量決定を実現した。
エクソソームの総濃度は、CRISPR/Cas12aに基づく方法を用いて、捕捉されたCD63を通して検出限界 (LoD) 8.97×103粒子/μlに達した。一方、上皮細胞接着分子 (EpCAM) および膜結合型ムチンであるMUC1が陽性のエクソソームは、アプタマー化学発光 (aptamer-chemiluminescence: ACL) ベースとするCACBAにより定量的に検出され、LoDはそれぞれ1.45×102および3.73×102粒子/μlに達した。その結果、EpCAM陽性とMUC1陽性のエクソソームンの割合 (相対存在量)を利用して、乳癌患者と健常ドナーを識別することが可能になった。
高感度、高い特異度、優れた抗干渉性、安定した回収率により、臨床試験で実用化されていた方法よりも高い精度と頑健性が得られた。さらに、安定性に優れ、調製が容易で低コストであることから、この方法はエクソソーム蛋白質の迅速分析への新たなアプローチを提供するだけでなく、様々な癌の診断に迅速に応用できる可能性がある。
[検出系の詳細]
- CD63アプタマー (AptCD63) とトリガー配列 (Trigger) で機能化した磁気ビーズ (MB) でエクソソームを捕捉し、続いて酵素結合EpCAMアプタマー (AptEpCAM) またはMUC1アプタマー (AptMUC1) と結合させる。
- 遊離トリガーを含む磁気分離後の上清を、CRISPR/Cas12aを介したエクソソーム濃度測定に用いる。
- 一方、エクソソーム膜タンパク質は、MB-エクソソーム-酵素サンドイッチ複合体を用いて、ACLを介した検出される。
- この戦略は、これまでのエクソソームに基づく癌診断のための多重解析のとは異なる価値あるアプローチを提供する。
2024-05-14
核酸の前増幅反応とCas12aシグナル増幅反応を0.05セントのワックスインターフェースを介して一体化することで, 低価格高感度なサイズウイルス2検出法を実現
[出典] "A Wax Interface-Enabled One-Pot Multiplexed Nucleic Acid Testing Platform for Rapid and Sensitive Detection of Viruses and Variants" Liu J [..] Cheng J, Xu Y. Small Methods 2024-05-08. https://doi.org/10.1002/smtd.202400030 [所属] Tsinghua U, CapitalBiotech Technology, Aerospace Information Research CAS, National Engineering Research Center for Beijing Biochip Technology
中国の研究チームがネストされたRPAとCRISPR/Cas12aトランス切断活性をワックスで遮断することで、サーズウイルス2のワンポットアッセイを実現し、Stable Interface assisted Multiplex Pathogenesis Locating Estimation in Onepot (SIMPLEone)として発表した。
SIMPLEoneにより、サーズウイルス2およびその亜種、あるいは複数の呼吸器ウイルスを40分で高感度にワンポット検出可能である。89の臨床サンプル、14の環境サンプル、20の猫スワブサンプルをSIMPLEoneで分析し、その優れた感度(スワブの非抽出検出では3~6コピー/反応、スワブから抽出したRNAのアッセイでは100~150コピー/mL)、精度 (97.7%以上)、特異度 (100%) が実証された。さらに、SIMPLEoneのマルチプレックス検出機能を使用することで、サーズウイルス2感染患者において高い割合 (44.2%)のウイルスの共感染症例が検出された。
2024-05-12
CRISPR-Cas13a/Cas12aシステムによる乳癌バイオマーカーcircROBO1とBRCA1の同時検出
[出典] "Simultaneous detection of breast cancer biomarkers circROBO1 and BRCA1 based on a CRISPR-Cas13a/Cas12a system" Tan C [..] Yi X, Wang J, Tang H. Biosens Bioelectron. 2024-05-09. https://doi.org/10.1016/j.bios.2024.116373 [所属] Central South U, Sun Yat-Sen U Cancer Center.
乳癌の診断はマルチターゲットの検出によって精度が向上する。中国の研究チームは、乳癌バイオマーカーとして新規なcircROBO1と古典的なBRCA1を同時に蛍光検出する手法を開発した:
- CRISPR-Cas13aおよびCRISPR-Cas12aは、それぞれの標的によって直接活性化され、その結果、それぞれRNAおよびDNAレポーターが切断され、6-カルボキシフルオレセイン (FAM) および6-carboxy-xrhodamine (ROX) のシグナルが発生し、両バイオマーカーのワンステップでの検出が実現された。
- FAMおよびROXの蛍光強度は、それぞれcircROBO1およびBRCA1の濃度に依存し、circROBO1およびBRCA1をそれぞれ0.013 pMと0.26 pMの検出限界を達成した。
- このシステムは高感度かつ特異的であり、臨床サンプルの検出においても高い診断能力を示した。
本研究において、乳癌におけるBRCA1とcircROBO1の競合する内因性RNA (competing endogenous RNA: ceRNA) の機構も明らかにされた。
2024-05-09
ssDNAで修飾したcrRNAを用いたRPA-Cas12aワンステップアッセイによるSARS-CoV-2の高感度視覚的検出[出典] "Sensitive and visual detection of SARS-CoV-2 using RPA-Cas12a one-step assay with ssDNA-modified crRNA" Zeng Q, Zhou M, Deng W, Gao Q, Li Z, Wu L, Liang D. Anal Chim Acta. 2024-05-06. https://doi.org/10.1016/j.aca.2024.342693 [所属] Guangxi Normal U, City U Hong Kong, Hong Kong Polytechnic U, Vitargent (International) Biotechnology Limited;
グラフィカルアブストラクト 核酸検出、特に病原体検出に向けて、等温増幅とCRISPR-Cas12aを組み合わせたワンステップアッセイが数多く開発されてきた。しかし、等温増幅酵素もCas12aヌクレアーゼも、標的DNAを基質とすることから、2種類の反応が競合し、ワンステップアッセイの検出能力が損なわれることになる。そこで、ワンステップアッセイの感度を向上させる手法の一つが、等温増幅とCRISPR検出のバランスをとることである。中国の研究チームは今回、先行研究 [*]で開発していた一本鎖DNA (ssDNA) 修飾 (modified) crRNA (mD-crRNA) を用いたCas12aワンステップアッセイを病原性DNAの検出に応用した。
[*] "Rapid and sensitive Cas12a-based one-step nucleic acid detection with ssDNA-modified crRNA" Zeng Q, Zhou M [..] Li Z, Wu L, Liang D. Anal Chim Acta. 2023-07-17.
https://doi.org/10.1016/j.aca.2023.341622
研究チームは今回、mD-crRNAを利用して、紫外線下でSARS-CoV-2を視覚的に検出できる高感度ワンステップアッセイを確立し、交差反応性なしに、野生型crRNAの100倍にあたる5 aMの検出限界を達成した。
研究チームは、mD-crRNAの3′末端にssDNAを付加すると、Cas12a-mD-crRNA複合体と標的DNAとの結合親和性が減弱することも明らかにした。この結合親和性の低下が、Cas12aのシス切断活性を低下させ、ワンステップアッセイにおける標的DNAの切断を緩和する。その結果、標的DNAの増幅と蓄積が増大し、検出感度が向上する。
40件のSARS-CoV-2 RNAサンプルの臨床検査において、ワンステップアッセイの結果と既知のqPCR結果との一致率は97.5%であった。
2024-05-04
CRISPR関連遺伝子ドーピング制御戦略としてのSHERLOCKによるsgRNAの検出
[出典] "Detection of sgRNA via SHERLOCK as Potential CRISPR Related Gene Doping Control Strategy" Paßreiter A [..] Thevis M. Anal Chem. 2024-04-29. https://doi.org/10.1021/acs.analchem.3c05776 [所属] German Sport University Cologne, CER Groupe - Département Santé, European Monitoring Center for Emerging Doping Agents (EuMoCEDA)
遺伝子工学技術の進歩、特にCRISPR/Casをベースとするツールの出現により、遺伝子ドーピングに対する懸念が一貫して高まっている。これらのツールは、アスリートによる不正なパフォーマンス向上のための前例のない可能性を提供する一方で、核酸のバイオセンシングを通じて遺伝子ドーピングを検出する新たな道を提供する。そこで、これまでの研究に基づき、RT-RPAに続くSHERLOCKによる定性的核酸検出法を、血清中の化膿レンサ球菌に関連するsgRNAを直接検出するために最適化した。その結果、血清100μL中のsgRNAの検出感度が100pMから1fMに向上した。さらに、前回の概念実証試験で収集された in vivo マウス投与サンプルの再解析を実施したところ、24 時間の収集期間内に投与後予想されるすべてのサンプルで sgRNA の同定に成功した。
これらの知見は、sgRNAの同定を介したCRISPR関連遺伝子ドーピングをコントロールする戦略の可能性を示した。
2024-05-03
肺癌の原因変異検出のための頑健なCRISPRカイネティックスアッセイのデザインと評価
[出典] "Design and Evaluation of a Robust CRISPR Kinetic Assay for Hot-Spot Genotyping" Blanket C, Kuo CJ, Bhattacharya A, Santiago JG. Anal Chem. 2024-04-29. https://doi.org/10.1021/acs.analchem.3c05657 [所属] CentraleSupelec - U Paris-Saclay, Stanford U, Stanford U. School of Medicine;
グラフィカルアブストラクト CRISPR-Cas12のトランス切断活性をベースとするアッセイ法では、標的核酸により誘導されるCas12トランス切断活性のエンドポイント測定を採用することが多い。しかし、エンドポイントに基づく方法は、恣意的な実験的選択が精度と頑健性に影響するリスクを伴っている。このようなリスクを回避することを目的として米仏の研究チームは、肺癌に関与する上皮成長因子遺伝子の変異 (エクソン19欠失) をモデルとして正確なアッセイ法を開発した。
研究チームは、変異型と野生型のターゲットを識別するために、Cas12のトランス切断活性をベースとするバイオセンサーのカイネティクスを特徴付けた。ガイドRNA配列、レポーター配列、レポーター濃度、酵素濃度、DNAターゲットの種類など、アッセイの主要なパラメーターを較正するために広範な実験 (780反応) を行った。興味深いことに、ターゲット分子とレポーター分子の間の競合反応が観察された。これは感度を向上させるために前増幅を用いるCas12バイオアッセイの設計にとって重要な結果をもたらすものであった。最後に、腫瘍から抽出した18個のアンプリコンと100回の反復実験で、99%の精度が得られた。
2024-05-02
磁気修飾バクテリオファージをトリガーとするATP放出活性化EXPAR-CRISPR/Cas14aシステムによる類鼻疽菌の視覚的検出
[注] 類鼻疽菌 (Burkholderia pseudomallei ): 人獣共通感染症メリオイドーシスを引き起こす病原菌
[出典] "Magnetically modified bacteriophage-triggered ATP release activated EXPAR-CRISPR/Cas14a system for visual detection of Burkholderia pseudomallei " Yao J, Zhang Z [..] Guo Y, Gu S, Xia Q. Biosens Bioelectron 2024-04-27. https://doi.org/10.1016/j.bios.2024.116334 [所属] Hainan Medical U, Southwest Medical U
中国の研究チームが、バクテリオファージによる細菌の溶菌によって放出されるATPを利用して、B. pseudomallei を定量的に検出する革新的なバイオセンサーを開発した。高い特異性を持つ溶菌性バクテリオファージvB_BpP_HN01を磁性ナノ粒子アセンブリーとともに用いて生物学的レセプターを形成し、生存可能な標的細菌の捕捉と濃縮を容易にした。短時間の抽出とインキュベーションの後、捕捉されたターゲットは急速な溶解を受け、ATPを含む内容物が放出される [
グラフィカルアブストラクト参照]
。
EXPAR-CRISPRカスケード反応は、効率的なシグナル伝達と二重増幅の機能を提供し、生成されたATPがアクチベーターとしてシグナル出力を誘導し、最終的に標的細菌量を検出可能な蛍光シグナルに変換する。B. pseudomallei 検出において、、ダイナミックレンジ102~107 CFU/mL、80分以内のLOD 45 CFU/mLを達成した。さらに、様々なモニタリング方法と互換性のある出力シグナルにより、本手法はB. pseudomalleiの迅速診断と現場での環境モニタリングを可能とする。
2024-04-30
CRISPR/Cas12aにインクジェットでプリントしたナノ構造電極を組み合わて低コストな病原体検出を実現
[出典] "Low-cost Inkjet-Printed nanostructured biosensor based on CRISPR/Cas12a system for pathogen detection" Carota AG, Bonin A [..] Di Francesco F. Biosens Bioelectron. 2024-04-25. https://doi.org/10.1016/j.bios.2024.116340 [所属] U Pisa, Catalan Institute of Nanoscience and Nanotechnology (ICN2), Catalan Institution for Research and Advanced Studies (ICREA);
グラフィカルアブストラクト 病原性細菌によって引き起こされる感染症が、世界的に、特に発展途上国において、急増していることから、迅速で持ち運び可能で低コストな病原体検出装置が求められている。イタリアとスペインの研究チームは今回、プラスチック基板上に金と銀のナノ粒子をインクジェットで印刷する費用対効果の高い電極を利用して、高感度で特異的な電気化学的バイオセンシング・プラットフォームを開発した。
CRISPR/Cas12aのトランス切断活性をベースとするこのバイオセンサーでは、標的病原体の標的DNA配列の存在下で、Cas12a/gRNAのトランス切断活性が起動され、メチレンブルーで標識され電極表面に固定された一本鎖DNAレポーター (ssDNA-MB: 直鎖およびヘアピン状) が切断される。標的配列が存在しない間は、このレポーターが電極との電子交換を促進するため、矩形波ボルタンメトリー (SWV) により大きな電流シグナルが得られるが、標的配列存在したでは、Cas12aのトランンス切断活性によりssDNAレポーターが切断され、その結果、メチレンブルーの還元に伴うSWVシグナルが減少する。
原理的には、このセンシング機構は、そのDNAの特定の配列を標的とする適切なガイドRNAを選択することにより、あらゆる細菌に適応させることができる。バイオセンサーの性能は、2種類の代表的な病原菌(グラム陰性菌の大腸菌とグラム陽性菌の黄色ブドウ球菌)に対して評価され、大きな表面積を提供する金電極は、市販のスクリーン印刷金電極よりに優る性能を示した。特に、レポーターとしてポリTループ10本を組み合わせた場合には、86%のシグナル変動が生じ、感度が向上した。
2024-04-29
ダブルエマルション液滴を用いたCRISPR/Cas12aに基づく核酸の定量検出の強化
[出典] "Enhanced CRISPR/Cas12a-based quantitative detection of nucleic acids using double emulsion droplets" Zhang Y [..] Li M. Biosens Bioelectron. 2024-04-26. https://doi.org/10.1016/j.bios.2024.116339 [所属] Macquarie U, U New South Wales, UCSF, UCLA, 東大, 奈良先端大, U Southampton, Wuhan U,
液滴マイクロ流体工学とCRISPR/Cas12a技術を組み合わせることで、その特異性、感度、簡便性から、核酸を1分子レベルで検出・定量するための強力なソリューションが生まれる。しかし、従来の油中水型 (Water in Oil: W/O) 単一エマルジョン (single emulsion: SE) には、安定性に問題があることが多く、アッセイ結果の正確さと再現性が損なわれる傾向がある。SEに対して、二重乳化するwater-in-oil-in-water (W/O/W) ダブルエマルジョン (DE) は、液滴デジタルアッセイにおいて優れた安定性と均一性を提供する。このような利点があるにもかかわらず、CRISPRシステムをベースとする核酸検出にDE液滴を使用することを実証した例は無かった。
オーストラリア、米国、日本 (東大化学 合田研究室)の研究チームは今回、CRISPR/Cas12aに基づくヒトパピローマウイルス18型(HPV18)DNAの定量的検出におけるSEおよびDE液滴の性能を評価するための比較解析を行った [Figure 1引用右図参照]
。異なる温度と時間ポイントでインキュベートする前後で、液滴のサイズ (直径) の変化、エマルジョン化の程度、内容物の混合度合いを調べることにより、SEとDEの安定性を評価した。 - DE液滴は、その優れた安定性から、内容物の混合を防ぎ、インキュベーション中の汚染リスクを軽減した。
- DE液滴は、カプセル化およびインキュベーション中のサンプルの損失を大幅に最小化し、SE液滴よりも優れている。
- DE液滴は、SE液滴と異なり、市販のフローサイトメトリーと互換性があり、CRISPR/Cas12aベースの正確かつハイスループットなDNA定量を可能にする。
DEプラットフォームは、CRISPR/Cas12aおよびフローサイトメトリー技術と組み合わせることで、核酸バイオマーカーの絶対定量を行う信頼性の高いツールとして有望なことが、HPV18 DNAの高精度な定量で実証された。
2024-04-28
ワンポットRPA-CRISPR/Cas12aアッセイによる12種類の呼吸器病原体のシンプルで高感度な視覚的検出
[出典] "Simple, sensitive, and visual detection of 12 respiratory pathogens with one-pot-RPA-CRISPR/Cas12a assay" Tan Q [..] Li Y, Chen L. J Med Virol. 2024-04-22. https://doi.org/10.1002/jmv.29624 [所属] Institute of Blood Transfusion (成都), Sichuan Provincial Judicial Police General Hospital, North Sichuan Medical College, The Hospital of Xidian Group, Nanning Blood Center
中国の研究チームが、RPA反応とCRISPR/Cas12a反応の競合関係を、両者の反応をパラフィンで分離することで回避し、核酸のシンプルで高性能なワンポットアッセイ法を開発し、6種類の細菌と6種類のウイルスを含む12種類の一般的な呼吸器病原体の同時検出を可能にした。検出結果はLEDブルーライト下で視覚的に観察できる。
このワンポットRPA-CRISPR/Cas12a法の感度は2.5コピー/μLプラスミドに達し、他の細菌やウイルスとの交差反応はない。さらに、臨床分離された細菌およびウイルスの咽頭ぬぐい液サンプルを用いて臨床的有用性を評価したところ、良好な性能が示された。
2024-04-27
Cas9nを介したシグナル増幅とCas12aのトランス切断活性の統合による高選択性かつ高感度な一塩基変異の検出
[出典] "CRISPR/Cas9 nickase mediated signal amplification integrating with the trans-cleavage activity of Cas12a for highly selective and sensitive detection of single base mutations" Fan XW, Gao ZF, Ling DD [..] Li CL, Zhou X. Mil Med Res. 2024-04-23. https://doi.org/10.1186/s40779-024-00530-x [所属] Nanjing U Chinese Medicine, Nanjing U, Eighth Medical Center of PLA General Hospital
中国の研究チームが今回、Cas9nとCas12aを組み合わせた診断プラットフォームを開発し、高感度な一塩基変異解析を実現した。Fig.1 から引用した右図 a にあるように、Cas9n-crRNA複合体が、変異遺伝子配列に特異的に結合し、その結果、ポリメラーゼ/エンドヌクレアーゼ支援シグナル・リサイクルを駆動するニッキング部位が生じる。このニッキング部位は、Replecementプローブ (図中のRep probe) の結合部位として機能する。Rep probeと変異断片はクレノウ断片の助けを借りて3'末端が延長され、"Rep"上の "Recognizing site"が転写される。その後、エンドヌクレアーゼが認識部位を特定し、一本鎖切断が誘導される。こうしてポリメラーゼとエンドヌクレアーゼの共同作業により、多数の"Rec"鎖が生成される。その後、Cas12a/crRNA複合体が放出された "Rec"鎖を識別し、Cas12aのトランス切断活性の活性化が誘導される。活性化されたCas12aは単一で数千もの "Reporter"プローブを切断し、強い蛍光をもたらす。このアプローチにより、KRAS遺伝子の変異 (KRAS-G12D) 検出に成功した。
2024-04-26
CRISPR/Cas12a増幅アプタマースイッチ・マイクロプレートを介した低分子検出法
[出典] "CRISPR/Cas12a-Amplified Aptamer Switch Microplate Assay for Small Molecules" Zhu F, Yu H, Zhao Q. Anal Chem 2024-04-22. https://doi.org/10.1021/acs.analchem.4c01452 [所属] Research Center for Eco-Environmental Sciences CAS, Hangzhou Institute for Advanced Study.
中国の研究チームが、食品や環境中のマイコトキシンや重金属などの低分子汚染物質の簡便、迅速、高感度、その場検出を目指して、構造スイッチ可能なアプタマーを介したシグナル変換と、CRISPR/Cas12aに基づくシグナル増幅とを組み合わせた、標題検出法を開発した。
マイクロプレートには、短いアプタマーに相補的なDNA鎖 (cDNA) が固定されており、ターゲットが存在しない場合には、アプタマーと結合した活性DNAプローブ (Apt-acDNA) をサンプル溶液中で捕捉することができる。捕捉されたApt-acDNAプローブはCas12aのトランス切断活性を活性化し、蛍光DNA基質を無差別に切断し、高い蛍光シグナルを発する。ターゲットが存在すると、Apt-acDNAプローブはマイクロプレート上のcDNAとハイブリダイズするのではなく、ターゲットと特異的に結合し、蛍光シグナルが減少する。
本検出法の分析性能は、2種類の高毒性汚染物質、アフラトキシンB1 (AFB1) とカドミウムイオン (Cd2+) の検出で実証された。高感度かつ高選択性であり、検出限界はAFB1が31 pM、Cd2+が3.9 nMに達した。また、複雑なマトリックスのサンプル中のターゲットの検出も可能であった。
本検出法は、一般的なシグナル変換ストラテジーを用いれば、アプタマーとcDNAを変えるだけで他のターゲットを検出することも可能であり、幅広い分野での実用化が期待される。
2024-04-25
光変調アプタマーをベースとする阻害剤を用いたワンポットRPA/CRISPR-Cas12aアッセイ
CRISPR Dxは、その感度、特異性、簡便性から核酸検査 (NAT)を革新した。その中で、感度の向上と2種類の反応系間のサンプル移動に伴うコンタミネーションのリスクを排除するため、CRISPRシステムリコンビナーゼポリメラーゼ増幅法 (RPA) を組み合わせたワンポット反応が数多く開発されてきた。しかし、CRISPRシステムの切断活性がRPAの効率に影響を与えるため、その効果は限定的であった。
韓国の研究チームは今回、光切断可能な (photocleavable: PC) リンカーを持つCas12a阻害アプタマーを利用することで、Cas12aリボ核タンパク質 (RNP) を一時的に不活性化し、核酸増幅中にRPA成分が分解されるのを防ぐ手法を編み出した。増幅が完了すると、UVを短時間照射することでPCリンカーを切断し、Cas12a反応を進行させて蛍光シグナルを発生させる [
グラフィカルアブストラクト参照]
。このアプローチにより、コンタミネーションのリスクを効果的に排除し、高い特異性を達成し、感度低下の要因を軽減することに成功した。
この光変調ワンポットRPA/CRISPR-Cas12aアッセイを用いて、アフリカ豚熱ウイルスのp72 遺伝子を50コピー(2.5コピー/μL)の濃度で検出することに成功し、この簡便なワンポットアッセイが、高感度で高い費用対効果かつ安定していることが実証された。
2024-04-21
ウェアラブルセンサーを用いたメタンフェタミンとコカインのポイントオブケア検査 (POCT)
[出典] "Point-of-care testing of methamphetamine and cocaine utilizing wearable sensors" Wang Y, Li K, Shen W, Huang X, Wu L. Anal Biochem. 2024-04-13.
https://doi.org/10.1016/j.ab.2024.115526 [所属] Nanjing Normal U; Shenzhen Institutes of Advanced Technology; Animal, Plant and Food Inspection Center of Nanjing Customs District.
薬物乱用を防止するために、メタンフェタミンとコカインのPOCTが必要とされている。このニーズに対応するため、中国の研究チームが、Cas12aバイオセンサーに、メタンフェタミンとコカインに特異的なアプタマー、および、マイクロ流体システムと磁気分離技術も組み込んだマルチチャンネルのウェアラブルセンサーを開発した。このセンシング・プラットフォームは、検出限界0.1ng/mLを達成し、現場での薬物検出への応用が期待される。
2024-04-20
CRISPR/Cas13aで駆動するエキソヌクレアーゼ-III支援比色アッセイに基づく直接的で正確なmiRNA検出
[出典] "Direct and accurate miRNA detection based on CRISPR/Cas13a-triggered exonuclease-iii-assisted colorimetric assay" Li Y, Wang Q, Wang Y. J Anal Sci Technol. 2024-04-16. https://doi.org/10.1186/s40543-024-00434-4 [所属] Chongqing U Cancer Hospital.
マイクロRNA (miRNA) の異常発現は疾患の診断の進行を見るに有用な指標であり、miRNAの定量化は、様々な種類の癌の臨床診断や治療に非常に重要である。中国の研究チームは今回、CRISPR/Cas13aのトランス切断活性をベースに、miRNAを直接かつ特異的に認識するバイオセンサーを開発した。
本手法の特徴は、エキソヌクレアーゼ-III (Exo-III) による銀イオン (Ag+)-アプタマー鎖の切断およびAg+-ベースの発色反応を組み合わせたところにある [Fig. 1引用右図参照]
。
本バイオセンサーの検出限界は5.12 fMに達し、複雑な生物学的サンプル中のmiRNA量の正確な測定実にも利用可能なことが証された。また、この比色法は、高感度であることに加えて、プローブの設計や蛍光色素の標識が簡単であることから、臨床診断への応用が期待される。
2024-04-19
蛍光性RNAアプタマーとCRISPR-Cas13aを統合した迅速かつ高感度なワンポット・プラットフォームによるMPXVの視覚的検出[出典] "A rapid and sensitive one-pot platform integrating fluorogenic RNA aptamers and CRISPR-Cas13a for visual detection of monkeypox virus" Wang X, Deng X, Zhang Y [..] Tang Y, Du D. Biosens Bioelectron 2024-04-11. https://doi.org/10.1016/j.bios.2024.116268 [所属] Xiamen U, Xiamen Center for Disease Control and Prevention, South China Agricultural U
中国の研究チームがCas13aのトランス切断活性をベースとするシグナル増幅にRAAによる前増幅を組み合わせたワンポット反応系"RAA-Cas13a-Apt"を構築したが、Cas13aトランス切断活性のレポーターとして、TO3-3 PEG-Biotin Fluorophore (TO3)と特異的に結合し発光する費用対効果が高く安定な蛍光性RNAアプタマー(Mango III)を利用したところを特徴としている。
RAA-Cas13a-Aptでは、トランス切断活性を活性化されたCas13aがssRNAアプタマーを効果的に切断し、その結果、アプタマーと蛍光色素のペアから放出される蛍光が減少する。このメカニズムにより、紫外線下での視覚的検出が可能となり、高度な装置や専門的なトレーニングが不要となる。RAA-Cas13a-Aptは、40分で4コピーの標的MPXV DNAの検出限界 (LoD)を達成し、臨床MPX検体を用いた検証でも高感度・高精度を達成した。
このラベルフリーの検出プラットフォームはシンプルで利用しやすいため、資源が限られた環境におけるPOCTに理想的であり、迅速かつ正確な病原体検出の実現可能性を高める。
2024-04-18
エムポックスウイルスの超高感度シングルステップCRISPR検出をベストポケット型診断装置で数分で実現
[注] エムポックス/サル痘 (
mpox)ウイルス (
MPXV): Mpox Research Consortiumがプレプリントサーバの
medRxivに投稿した論文によると、「コンゴ民主共和国東部で新たなMPXVクレードI系統のヒト感染が持続的に発生し、この新たなパンデミックの可能性を秘めたクレードIbの流行を封じ込めるために、サーベイランスの強化、接触者の追跡、症例管理の支援、標的を絞ったワクチン接種などの緊急対策が必要」とされている. [
medRxiv 2024-04-14.
https://doi.org/10.1101/2024.04.12.24305195]
[出典] "Ultrasensitive single-step CRISPR detection of monkeypox virus in minutes with a vest-pocket diagnostic device" Wang Y, Chen H, Lin K, Han Y [..] Jin R, Song R, Rong Z, Wang S. Nat Commun. 2024-04-16. https://doi.org/10.1038/s41467-024-47518-8 [所属] Bioinformatics Center of AMMS (生物信息学研究中心 @中科院数学院), Air Force Medical U, Capital Medical U
新興感染症をもたらしたMPXVは、世界的な健康への懸念を高めており、その迅速で高感度かつ使いやすい診断法が求められている。中国の研究チームが、RPA (リコンビナーゼポリメラーゼ増幅)とCRISPR/Cas13aの組み合わせをベースに、CRISPR資源に乏しい現場で利用可能なMPXVの超高感度検出を可能とする一段階反応のプラットフォームを開発し、SCOPE (Streamlined CRISPR On Pod Evaluation platform) として発表した。
SCOPEでは、標的のMPXVの核酸が合理化されたウイルス溶解プロトコルを介して、発疹液スワブ、口腔スワブ、唾液、尿サンプルから2分間で迅速に放出され、
その後、10分間の一段階でのRPA-CRISPR/Cas13a反応が行われる。このポッド型 ( CRISPRPod: CPod)のベストポケット型分析装置は、反応実行、シグナル取得、結果解釈の全プロセスを実現する [Figure 1引用右図 a 参照]
。検体から結果が出るまで15分以内である [右図 b 参照]

[注] CPodの詳細についてはFig.4引用左図参照
SCOPEの検出感度は0.5コピー/μL(2.5コピー/反応) に達した。また、ボランティアの臨床サンプル102検体で検証した結果、検査結果はリアルタイムPCRの結果と100%一致した。
SCOPEは、小型化されたワイヤレスデバイスを用いた簡便な手順で、1分子レベルの感度を数分で達成するものであり、CRISPRに基づく診断技術をPOCT (ポイントオブケア試験) での実用化を加速する。
2024-04-16
アロステリック・アクティベーター制御CRISPR/Cas12aシステムによる細胞内の内因性・外因性ターゲットのバイオセンシングとイメージング
[出典] "Allosteric Activator-Regulated CRISPR/Cas12a System Enables Biosensing and Imaging of Intracellular Endogenous and Exogenous Targets" Li QN [..] Pang DW, Kong DM. Anal Chem 2024-04-11. https://doi.org/10.1021/acs.analchem.4c00555 [所属] Nankai U, Tianjin U, Laboratory of Environmental Factors Risk Assessment of Agro-Product Quality Safety, Ministry of Agriculture (Ministry of Agriculture, Tianjin)
標的核酸認識によって活性化するCRISPR/Cas12aシステムのトランス切断活性をベースとするセンサーは、バイオセンシングの分野に新しい時代を切り開いた。CRISPR/Cas12センサーの「オン・オフ・オン」モードでの設計は、主にトランス切断活性を駆動するアクチベーター鎖 (AS) をプログラムして、標的核酸に応答してCas12aのトランス切断活性を間接的に切り替えることに焦点を当てている。しかし、この設計は通常、アクチベーター鎖を初期「ブロック」状態に保つための補助プローブの助けを必要とする。この補助プローブの設計と投与量は、最小のバックグラウンドと最良のS/N比を確保するために厳密に最適化される必要がある。これは必然的に実験の複雑さを増大させる。中国の研究チームは今回、この問題を解決するために、補助プローブを利用することなく、Cas12a酵素活性を直接制御することを提案した。
ヘアピン構造に埋め込まれるようにASを合理的に設計することで、CRISPR/Cas12aシステムのトランス切断活性の活性化を阻害する。標的核酸が存在すると、標的鎖を介した鎖の変位によってASのコンフォメーションが変化し、ヘアピン構造が開き、ASがアクチベーターとしての機能を発揮する。このASのスイッチ可能な構造は、ターゲット濃度に応じてCas12aの活性化のレベルを調節するために使用できる。低バックグラウンドと安定性の利点により、CRISPR/Cas12aベースの戦略は、生きた細胞内の内因性バイオマーカー (miR-21) の可視化と共に、外因性ウイルスが細胞に侵入する過程を長期的かつ正確に可視化することができる。
このシステムを利用して、宿主細胞におけるウイルスゲノムの放出と複製の過程を高感度にモニタリングすることで、ウイルス感染メカニズムやウイルス性疾患に対する防御法について有用な知見が得られる。
2024-04-15
RAAとCRISPR-Cas12aバイオセンサーを組み込んだ遠心マイクロ流体デバイスにより, 呼吸器感染症細菌の迅速かつ正確な同定を実現
[出典] "Automatic Microfluidic Harmonized RAA-CRISPR Diagnostic System for Rapid and Accurate Identification of Bacterial Respiratory Tract Infections" Xiang X [..] Shang Y, Song M. Anal Chem 2024-04-09.
https://doi.org/10.1021/acs.analchem.3c05682 [所属] Fujian Medical U, Huaiyin Normal U, Beijing Xiangxin Biotechnology Co Ltd, Xining Urban Vocational & Technical College, Jinan U, Hainan Hospital of Chinese PLA General Hospital;
グラフィカルアブストラクト 中国の研究チームが今回、前増幅反応とCRISPR-Cas反応の二段階のアッセイ系に対して、オールインワンのRAA-CRISPR/Cas13a反応系を用意することで、細菌検出の精度と感度が向上することを示した。加えて、サンプルの流れに遠心力を利用する遠心マイクロ流体チップに統合することで、サンプル消費量を削減し、検出スループットを大幅に向上させ、複数の呼吸器病原体の同時検出を可能にした。
さらに、サンプルの前処理にChelex-100を組み込むことで、"Sample-to-Answer"機能を実現した。この極めて重要な追加機能により、実際の臨床サンプル検査におけるシステムの展開が容易になり、60の臨床サンプルセットから12種類の一般的な呼吸器系細菌を正確に検出することが可能になった。
このシステムは、臨床診断に不可欠な迅速で信頼性の高い結果を提供し、医療従事者が患者にタイムリーで正確な治療介入を行うことを可能にする。
2024-04-14
高感度で選択的なCRISPR-Cas12aベースの脂肪量および肥満関連タンパク質 (FTO) 検出アッセイ
[注] FTO (Fat mass and obesity-associated protein)
[出典] "Highly sensitive and selective demethylase FTO detection using a DNAzyme-mediated CRISPR/Cas12a signal cascade amplification electrochemiluminescence biosensor with C–CN/PCNV heterojunction as emitter" Li H [..] Liu J, Li Y. Biosens Bioelectron. 2024-04-06. https://doi.org/10.1016/j.bios.2024.116276 [所属」Northwest U (西安), Shaanxi U Technology
FTO遺伝子の変異は、肥満の発症リスクの増加と関連している。中国の研究チームが今回開発したアッセイ系では、FTOタンパク質が存在すると、DNAzymeの触媒コア上のm6A修飾が除去され、切断活性が回復し、いわゆるアクチベーターDNAが生成される。アクチベーターDNAはさらにCas12aのトランス切断能を活性化し、一本鎖フェロセンタグ付き(ssDNA-Fc)プローブの切断を引き起こし、その後測定可能な電気化学発光(ECL )シグナルが放出される。
このバイオセンサーは、1.0 pMから100 nMの範囲で0.63 pMという低い検出限界で高い感度を示した。さらに、このバイオセンサーは、がん細胞溶解液中のFTOの検出とFTO阻害剤のスクリーニングに成功し、早期臨床診断と創薬に大きな可能性を示した。
2024-04-07
部位特異的DNAメチル化を検出するメチル化感受性制限酵素 (MSRE)からCRISPR/Cas12aコラテラル活性を介してCHAシステムへと繋ぐことで、部位特異的DNAメチル化の高感度・高特異度アッセイを実現
DNAメチル化は癌の発生と進行に密接に関連しているため、特定部位のDNAメチル化を正確に決定することは、癌のタイムリーな発見に不可欠である。中国の研究チームが今回、メチル化感受性制限酵素 (MSRE)、CRISPR/Cas12a、および触媒的ヘアピン集合体 (CHA) 増幅に基づく新規なレシオメトリック蛍光法を開発し、部位特異的なメチル化を高感度 (LoD 2.02fM) かつ特異的に検出することに成功した。
MSREとして一般的に利用されているAciIによってメチル化ターゲットと非メチル化ターゲットを識別し、CRISPR/Cas12aシステムによって部位特異的標的を認識する。Cas12aのコラテラル活性を介して、1つの標的を大量の活性化因子へと変換し、CHA反応を誘発し、カスケードシグナル増幅を達成する。さらに、CHA中のヘアピンプローブの構造変化により、2つの標識色素が空間的に分離され、FRETシグナルの変化が生じる。
一般に、CRISPR/Cas12aコラテラル活性をタンデムCHAに繋ぐ戦略は、標的核酸に類似した核酸に起因する偽陽性シグナルの発生を回避し、かつ、感度向上をもたらす。さらに、レシオメトリック蛍光法により、自己較正による環境影響を排除することができる。
このアプローチは、大腸癌と前癌組織の区別、および大腸患者と健常人の区別が可能であり、生物学的研究および癌研究に有望である。
2024-04-06
堅牢な光開始ワンポットCRISPR-Cas12a核酸診断のためのユニバーサルcrRNAアシル化戦略
[出典] "Universal crRNA Acylation Strategy for Robust Photo-Initiated One-Pot CRISPR-Cas12a Nucleic Acid Diagnostics" Liu P [..] Yang R. Angew Chem Int Ed Engl. 2024-04-02. https://doi.org/10.1002/anie.202401486 [所属] Hunan Normal U, Central South U
CRISPRシステムの時空間制御は、精密な遺伝子編集や正確な分子診断に必須の機能として、汎用的かつ効率的な戦略が模索されてきた。中国の研究チームが今回、crRNA鎖上の2'-ヒドロキシル(2'-OH)を光脱離剤 (PLG)で効率的にアシル化することで、CRISPR-Cas12aシステムを制御する普遍的で利用しやすいアシル化戦略を提案した。PLGを導入することで、crRNAの機能を効率的に抑制し、crRNAの配列によらず短時間の光照射でCRISPR-Cas12a反応を速やかに回復させることができる。
この戦略に基づき、CRISPR-Cas12aシステムにリコンビナーゼポリメラーゼ増幅 (RPA)を統合したロバストなワンポット検査のための汎用的システムを構築し、POIROT (PhotO-Initiated CRISPR-Cas12a system for Robust One-pot Testing)と称した。POIROTは、従来のワンステップアッセイよりも2桁感度が高く、2ステップアッセイに匹敵することを示した。
臨床サンプルの検査において、POIROTはゴールドスタンダードの定量PCR (qPCR)に匹敵する感度と特異性を有しながら、qPCR法よりも迅速な高効率検出を達成した。
今回考案・実現した戦略は、ワンポットアッセイのための他の多くの普遍的な光制御CRISPR技術の開発を促進し、さらには制御可能なCRISPRベースのゲノム編集、疾患治療、細胞イメージングの分野の応用を、これまでの制約を超えて拡大することが期待される。
2024-04-05
CRISPR-Cas13aシグナル増幅によるDEHPのデュアルモード検出用有機光電気化学トランジスタアプタセンサー
[注] DEHP: Di(2-ethylhexyl)phthalate/Bis(2-ethylhexyl)phthalate /フタル酸ビス
[出典] "Organic photoelectrochemical transistor aptasensor for dual-mode detection of DEHP with CRISPR-Cas13a assisted signal amplification" Zhang H, Zhang M, Zhou T et al. J. Hazard Mater. 2024-04-01. https://doi.org/10.1016/j.jhazmat.2024.134175 [所属] Shandong Agricultural U, Nanjing Forestry U
有機光電気化学トランジスタ(OPECT)は、固有の増幅能力を持ち、生体適合性に優れ、さらには自己給電型動作が可能であることから、有望な検出ツールとして台頭してきたが、汚染物質の検出への応用は進んでいなかった。
中国の研究チームは今回、可塑剤の一種であるDEHPを超高感度に検出するための新規OPECTデュアルモード・アプタセンサーを構築した。MXene/In2S3/In2O3 Zスキームのヘテロ接合を介して高感度ゲートOPECTバイオセンサーを駆動した。ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホナート)/(PEDOT:PSS)ベースのトランジスタシステムは、ゼロバイアス電圧でほぼ1,000倍の電流利得を達成する感光性ゲートに関連する生物学的事象を変換した。
この研究では、ターゲット依存ローリングサークル増幅をシグナル増幅ユニットとするCRISPR-Cas13aコラテラル活性のアプタマー特異的誘導によってターゲットDEHPを定量し、生体触媒沈殿とTMB発色のシグナル変化戦略を組み込んだ。OPECTと比色分析(CM)の補助的検証を組み合わせることで、0.1 pM~200 pMの直線範囲と0.02 pMの最小検出限界で、DEHPの高感度かつ正確な検出が達成された。
本研究は、DEHPの新しい検出法を提供するだけでなく、ユニークなOPECTのゲーティングと応用のための有望な展望を提供するものである。
2024-04-04
抗生物質を検出するHCRとCRISPR/Cas12αシステムによる汎用性と感度の高い電気化学センサー
[注] HCR (ハイブリダイゼーション連鎖反応)
[出典] "A sensitive and versatile electrochemical sensor based on hybridization chain reaction and CRISPR/Cas12a system for antibiotic detection" Zhang X [..] Xiao T, Zhu L. Anal Chim Acta. 2024-03-30. https://doi.org/10.1016/j.aca.2024.342562 [所属] Sichuan Normal U
NH2-Cu-MOFを電気化学プローブとして用い、HCRをトリガーとするCRISPR/Cas12aシステムを用いて抗生物質を検出する高感度電気化学プラットフォームを構築した。
この検出システムは2つのHCRシステムから構成されている。HCR1はターゲットとは無関係に電極表面で起こり、シグナルプローブをつなぐ長いdsDNAを生成し、強い電気化学シグナルを生成する。HCR2はターゲットによってトリガーされ、生じたdsDNA産物はCRISPR/Cas12aを活性化し、それによってHCR1のトリガーを効果的かつ迅速に切断し、HCR1の発生を妨げ、電極表面上のNH2-Cu-MOFの数を減少させ、最終的に、ターゲットに依存した有意なシグナル変化が得られる。
このセンサーにより、カナマイシンとアンピシリンの検出限界、それぞれ60fMと10fM と達成した。さらに、牛乳や家畜の廃水サンプルでも良好な検出性能を示した。
2024-04-03
デュアル・トーホールド制御CRISPR-Cas12a検出プラットフォームによるApoEの一塩基多型 (SNP) ジェノタイピング
[出典] "Dual toeholds regulated CRISPR-Cas12a sensing platform for ApoE single nucleotide polymorphism genotyping" Zhu Y [..] Su G, Yu Y. Biosens Bioelectron. 2024-03-28. https://doi.org/10.1016/j.bios.2024.116255 [所属] Nantong U.
TSDRのSNP識別機能を統合することにより、Cas12aセンシング・プラットフォームは、一本鎖活性化モードよりも優れた特異性を示し、GCリッチ領域でさえも一塩基ミスマッチを検出することを可能にした。また、この方法はPAMの制限なしにあらゆる標的配列を検出することができ、二本鎖活性化モードよりも普遍的である。
さらに、生体試料分析の感度を向上を目指して、デオキシチミジン置換プライマーとウラシル-DNAグリコシラーゼ (UDG) 処理を利用した改良型RPA戦略を開発し、RPA-UDGと命名した。
RPA-UDGとCas12aの組み合わせにより、ヒト口腔内スワブ液サンプルから、ApoE遺伝子のrs429358およびrs7412遺伝子座の一塩基多型を全て100%の精度で識別した。結果は、市販のラテラル・フロー・ストリップによる読み取りも可能である。
2024-04-02CRISPR/Cas12bに非対称RPAを組み合わせることで, PAMフリーで迅速・超高感度なDNA検出を実現[出典] "A PAM-Free One-Step Asymmetric RPA and CRISPR/Cas12b Combined Assay (OAR-CRISPR) for Rapid and Ultrasensitive DNA Detection" Yang L [..] Wang X, Xu J. Anal Chem. 2023-03-29. https://doi.org/10.1021/acs.analchem.3c05545 [所属] Key Laboratory of Traceability for Agricultural Genetically Modified Organisms, Zhejiang Normal U, Zhejiang U
より高感度でより信頼性の高い分子診断法の確立を目指し、さまざまな等温核酸増幅法とCRISPR/Casシステムによるシグナル増幅の組み合わせが研究されている。また、コンタミネーションのリスクの回避と操作の簡素化を目指して、2種類の反応をシングルステップ (ワンチューブやワンポットでの反応) に統合したシステムも数多く発表されている。さらに、標的二本鎖DNA (dsDNA) 中のPAMモチーフ (例えば、TTNまたはTTTN) による制約を回避しようとする試みも続いている。
中国の研究チームが今回、通常のRPAに換えて非対称なRPAを利用することで、PAMフリーでワンステップのDNA検出法を実現した [
グラフィカルアブストラクト 参照]
。研究チームはこの、"PAM-free one-step asymmetric recombinase polymerase amplification (RPA) coupled with a CRISPR/Cas12b assay" をOAR-CRISPRと称した。
OAR-CRISPRでは、非対称RPAがCRISPR/Cas12bのアクチベーターとして機能する一本鎖DNA (ssDNA) を生成する。その結果、PAMを含まないcrRNAによるssDNA切断がRPAの増幅プロセスを妨害しないことから、全体的な検出時間が大幅に短縮された。OAR-CRISPRはqPCRに匹敵する感度を示しつつ、検出時間はqPCRの4分の1までに短縮された (8分以内に60コピー/μLのDNAを裸眼で検出可能)。
2024-04-01
アガロース・ハイドロゲルを介したワンチューブRPA-CRISPR/Cas12aアッセイによるアニサキスのPOCT
[出典] "Agarose Hydrogel-Boosted One-Tube RPA-CRISPR/Cas12a Assay for Robust Point-of-Care Detection of Zoonotic Nematode Anisakis" Zhao L [..] Wang C, Bai X. J Agric Food Chem. 2024-03-26. https://doi.org/10.1021/acs.jafc.4c00204 [所属] Jilin U, Jiashi County Hospitalof Uygur Medicine, Yunnan Institute of Parasitic Diseases
人獣共通感染症の線虫であるアニサキスを迅速かつ正確に検出することで、その流行を制御することが可能になる。CRISPR/Cas12aをベースとする核酸の高感度検出法が数多く開発され、RPAとCRISPR/Cas12aシステムをワンチューブ反応系に統合することで、エアロゾル汚染のリスクを回避するツールも開発された。しかし、これまでのワンチューブ反応系では、2つのシステムの非互換性と追加の手作業による感度の低さが課題になっている。
中国の研究チームは今回、CRISPR・Cas12aシステムをアガロース・ハイドロゲルに付加することにより、Cas12aの切断に起因するRPAの初期増幅効率の低さを回避し、反応の連続性を実現した。このアッセイ法により、検体採取から結果まで80分以内で、感度が従来のワンチューブRPA-CRISPR/Cas12aシステムの10倍まで向上し、また、スマートフォンや携帯端末を用いたPOCTが実現した。
2024-03-31
Cas12バイオセンサーに単一粒子衝突による電気化学的測定を組み合わせて, 臨床応用可能な心筋トロポニンIアッセイ法
[出典] "Clinically applicable assay of cardiac troponin I by CRISPR/Cas12a-amplified single-particle collision electrochemistry" Liu J [..] Wu Z, Wang S. Sens Actuators B Chem. 2024-03-27. https://doi.org/10.1016/j.snb.2024.135708 [所属] Hubei U, Hainan Medical U;
グラフィカルアブストラクト 単粒子衝突による電気化学的測定 (SPCE) は、その高速応答と単体レベルでの超高感度により、生体分子の高感度検出に大きな応用の可能性を示している。しかし、実際のサンプルでは、シグナル変換効率の低さや、複雑なサンプルからの干渉の大きさから普及してこなかった。
中国の研究チームが、CRISPR/Cas12aの優れたシグナル増幅と、磁性ナノ粒子 (magnetic nanobeads: MB) の優れた分離・濃縮能力に基づいて、心筋トロポニンI(cTnI)の臨床分析用の新しいSPCEバイオセンサーを開発した。標的cTnIの存在によってCRISPR/Cas12aのトランス切断活性が発揮され、30分以内にAu@Ptナノ粒子 (Au@Pt NP) 表面のssDNA2を効果的に切断される。この過程で、各cTnI分子が、4.68×104 個のAu@Pt NPの放出を引き起こし、シグナルを著しく増幅し、感度向上に寄与する。
cTnI用SPCEバイオセンサーは、検出限界 0.35fg/mLを達成し、既存のcTnI検出技術より2~6桁高感度である。さらに、MBは複雑なマトリックスから標的を直接サンプリング可能であり、患者サンプル中のcTnIを優れた感度と特異性で検出可能なことが、確認された。
2024-03-30
2024-03-29CRISPR-Cas13aのトランス切断活性をウリジル酸リッチな5′オーバーハングを帯びた人工crRNAを用いて向上させる
[出典] "Improving trans-cleavage activity of CRISPR-Cas13a using engineered crRNA with a uridinylate-rich 5′-overhang" Yang Y [..] Zhou X. Biosens Bioelectron 2024-03-25. https://doi.org/10.1016/j.bios.2024.116239 [所属] Tsinghua U, Beijing Chaoyang Center for Disease Control and Prevention;
グラフィカルアブストラクト CRISPR-Cas13aのトランス切断活性 (コラテラル活性) をベースとする核酸アッセイ法において、Cas13aのcrRNAを操作してCas酵素やターゲットとの結合親和性を高めることが、核酸検出の感度を増幅させる有望な方法である。中国の研究チームは今回、Cas13aのcrRNAを様々な拡張や化学修飾によって操作し、最も高性能なcrRNAと最適化条件を特定した。
最高性能のcrRNAは、元々のcrRNAの5′末端を7-merのウリジル酸を用いて伸長したバージョン (24 nt 5'7U LbuCas13a crRNA) であり、これを利用することで、LbuCas13aのコラテラル活性が、元々のcrRNAの最大7倍にまで向上した。このcrRNAの7-mer U延長の効果は、スペーサーに非依存的であり、またLwaCas13a系でも見られた。
分子動力学シミュレーションとミカエリス・メンテン動力学法から、このコラテラル活性の向上は、crRNAとLbuCas13aの分子レベルでの相互作用の強化によることが、明らかにされた。すなわち、5′-オーバーハングがHelical-1ドメインとHEPN2ドメインの間に形成されるクレフトに固定され、より安定な複合体が形成される。
この人工crRNAをベースとするCRISPR-Cas13aシステムは、サーズウイルス2 RNAの検出感度 2.36fM を達成した。さらに、前処理としてRT-RPAによる等温増幅を加えることで、アトモルレベルの感度でのサーズウイルス2検出を実現し、40分以内に臨床サンプルからのオミクロン変異体の同定にも成功した (一致度 20/21)。
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2024-03-28
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