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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

- 中国科学院国家科学図書館の担当者Yang Liying(杨立英)にインタビュー
[出典] NEWS Q&A "China has a list of suspect journals and it’s just been updated" Mallapaty S (Senior Reporter). Nature 2024-03-06. https://doi.org/10.1038/d41586-024-00629-0

 中国は、信頼に値しない (untrustworthy)、ハゲタカ、あるいは、中国の研究コミュニティーに貢献しないジャーナルのリストを毎年更新している。2024年2月に発表された最新版は「Early Warning Journal List」と称され、約12の出版社からの24種類のジャーナルがリストされている。今回初めて、「引用を盛る操作」を行うジャーナルに、フラグが立てられた。杨立英は、約20人の研究者からなるチームを率いて、世界の研究コミュニティからの見識と書誌データの分析に基づき、2020年に開始された年次リストを更新してきた。このリストは徐々に影響力を強め、当局が参照し、中国全土の研究機関のWebサイトを介して広く共有され、このリストに掲載されたジャーナルでは、中国人著者からの投稿が減少してきている。今年、杨立英チームはリストの作成方法を改訂し、今回、そのプロセスと変更点についてNature に語った。

 中国の研究コミュニティーから情報を収集し、ClarivateのWeb of Scienceの引用データベースを解析し、ジャーナルを選別し、該当する出版社の聞き取りも行って、リストを更新する。今回は、これまでの三段階のリスクレベルの表示はリスク回避に実効性がないことから、そのジャーナルがリストに含まれている理由の表示に変更した。また、オープンアクセスが広がってきたことから、一年で刊行論文数が急増したジャーナルを自動的にリストに含めるロジックを採用しないことにした。一方で、グループ内の相互引用や、ペーパー・ミルが製造するフェイク論文などに起因する異常な引用のパターンに注目した。

 一部の出版社は中国からの指摘を受けとめて、対策をとりつつある。例えば、「引用が盛られている」という理由で4種類のジャーナルがリストに入ると知らされたMDPIは、それが直接の原因とは限らないが、2024年2月13日に23のジャーナルについて、「研究倫理に反する引用行為を含む査読者の不正行為について調査する」と発表した。
 
 ペーパーミルについては、ソーシャルメディアに投稿された情報や、出版された論文について議論されるPubPeerや、For Better ScienceなどのWebサイトに投稿された情報を参照している。また、研究チーム独自に、研究者がアクセスできる「Amen」という疑わしい論文のオンラインデータベースを作成し、論文の撤回、懸念通知、訂正、ソーシャルメディアでフラグが立てられた論文などの情報を収集している。

[注] 記事では、中国人研究者の論文の割合が高いジャーナルにフラグを立てている理由についても、説明されている;画像解析など独自の解析ツールを自ら開発することを検討している。
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