crisp_bio

論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[注] ストップコドン・リードスルー (Stop Codon Readthrough: SCR) は、mRNA上のストップコドンを超えて翻訳が継続するプロセスを言う
[出典] "Transcript-specific induction of stop codon readthrough using a CRISPR-dCas13 system" Manjunath LE [..] Eswarappa SM. EMBO Rep 2024-03-18. https://doi.org/10.1038/s44319-024-00115-8 [所属] Indian Institute of Science, Northwestern U Feinberg School of Medicine, U Texas Medical Branch

 インドの研究チーム (一部米国大学と兼任) が今回、CRISPR-dCas13システムを用いて、転写産物選択的にSCRを増強あるいは誘導するアプローチを報告した。

 研究チームは、特異的なガイドRNAを用いて、天然のSCRを示すことが知られている哺乳類のAGO1 VEGFA のmRNAにおける正規の停止コドンの下流領域にdCas13をターゲティングしたところ、リードスルー・アッセイにより、dCas13-gRNA複合体によって、これらのmRNA(外来性および内因性の両方)のSCRが促進されることが明らかになった [グラフィカルアブストラクト 参照]。この効果は、いくつかのSCR事象で報告されているリボソームの休止と関連している。

 今回得られたデータは、CRISPR-dCas13が、緑色蛍光タンパク質とTP53のmRNAの未成熟終止コドン (premature termination codons: PTCs) を越えてSCRを誘導することもできることを示している。

 研究チームは、HBB mRNAのサラセミアの原因となるPTCおよびSPTA1 mRNAの遺伝性球状赤血球症の原因となるPTCをリードスルーを誘導することで、このアプローチの有用性を実証した。

 本研究は、CRISPR-dCas13は、転写産物選択的かつ停止コドン特異的な方法でSCRを強化または誘導するようにプログラムすることが可能なことを示した。

このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット